教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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主権者学として憲法をまなぶ
2010年4月26日
田中健太郎さん(弁護士)
 

 2003年11月、札幌弁護士会は憲法委員会を設置し、弁護士1年目の私も委員になりました。その後現在にいたるまで、憲法委員会は国際平和と自衛隊の海外派遣の問題、憲法改正をめぐる問題をテーマにくりかえしシンポジウムや市民集会を開催しました。
  これらの活動と並び、憲法委員会は未来の主権者─中高生に憲法を発信してゆくことを模索しました。「憲法は、いま選挙権・憲法改正投票権をもつ大人だけのものでない。日本の将来を考えるとき、子どもたちが憲法をどのように身につけてゆくかが非常に重要だ」という意識からでした。
  2007年春、憲法委員会は初めて「中高生のための憲法ゼミナール」を開催しました。北海道教育委員会と札幌市教育委員会の後援を得て、事前に札幌市内の高校等にポスターを送り掲示してもらい、ダグラス・ラミスさん(津田塾大学・当時)の進行で中高生が憲法の基本を学びました。
  2008年春の第2回ゼミは表現の自由を題材に奥野恒久先生(室蘭工業大学)に講師をお願いしました。
  2009年春の「中高生のための憲法ゼミナール」第3回には、伊藤真先生(伊藤塾・塾長)においでいただき、憲法の根本についてわかりやすくお話をいただきました。
  直近の2010年3月の第4回「中高生のための憲法ゼミナール」では、憲法委員会の若手弁護士が出演して、葛飾ビラ配布弾圧事件をベースにした事例ビデオを作成し上映しました。参加してくれた札幌近郊の高校生(新高1生を含む)30名には、6つのグループに分かれて事例の有罪・無罪について自由に議論し何度も発表してもらい、表現の自由の意義を体感してもらいました。補佐役の弁護士のサポートがほとんど要らないくらい、それぞれが鋭い意見を出しました。
  時間をオーバーする白熱した議論の末、結論はほぼ二分されました。
  参加者や傍聴された先生方からは、「難しい事例について同年代の人達と討論できたことはとても刺激になった」、「想像以上に内容が濃くてとてもおもしろく楽しめました」、「参加した生徒は学外で学ぶことが今後の学習の大きなモチベーションになるということを実感できたと思います」等、積極的な感想を多くいただくことができました。
  「中高生のための憲法ゼミナール」と並んで、憲法委員会は「子どもたちに憲法のことを考えてもらうには集会的なものでは足りず、札幌弁護士会・憲法委員会の方から積極的に外に出て憲法のことを語ってゆく必要がある」と議論を発展させました。憲法「出前授業」が企画され、プロジェクトチームが設置されました。
  この憲法「出前授業」は2007年12月から実践されています。憲法「出前授業」プロジェクトチーム所属委員が札幌近郊の高校等に出向き、自身や弁護士の仕事などを紹介しながら、憲法をさまざまな切り口で語り、生徒と交流し、憲法の考え方を伝えます。既に、複数の学校、学級で回数を重ね、授業内容も当初から大変な進歩を見せています。
  各学校の行事や授業進行、教員の先生のご担当科目など諸条件を踏まえつつ、憲法を中高生に伝えてゆく機会として最大限に活かすべく、本年度も行われる予定になっています。
  このたび、法学館憲法研究所が中学校や高等学校での憲法についての映像教材を製作されたことは、ご紹介した諸活動に強力な応援を得る思いで、一弁護士として大きな期待を持っています。映像の力は絶大です。この教材は、憲法を学ぶのに大きく役立つでしょう。
  かつて私は、杉原泰雄先生から「昔ヨーロッパでは君主が『帝王学』を学んだが、現代の国民・市民も主権者としてそれにふさわしい素養や見識など身につけるため憲法を学ぶ必要がある」と教わりました。
  今後とも、一人でも多くの主権者と「未来の主権者」に対し、積極的に憲法の考え方を伝え、この社会に日本国憲法が定着するように努めたいと思います。

 
【田中健太郎さんのプロフィール】

1974年(昭和49年) 埼玉県東松山市に生れる。
子どもの頃: 毎年夏、市立図書館では丸木位里さん・俊さんの「原爆の図」が展示される。
中学時代: 昭和天皇危篤・死去に際し自粛が強要される。
川越高時代: 卒業式のたびに「新学習指導要領の先取り実施」として「日の丸」・「君が代」が持ち込まれようとする。毎年、生徒全体で議論する。
中大時代: 当時住んでいた日野市主催の「日野市民憲法連続講座」に参加し、杉原泰雄先生に学ぶ。大きく影響を受ける。
現在: 縁あって札幌の街で弁護士として働くようになり早8年目。