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消費者教育について考えること
2010年4月19日
比留間 貢さん(司法書士)
 

 最近のニュースを見ていると、相変わらず「振り込め詐欺」の被害に遭ったとの報道が後を絶ちません。かれこれ数年前からの問題であることを指して、中には「これだけニュースで報道されているのだから、騙される側も悪い」との意見も聞かれます。しかし、本当に騙される側が悪いのでしょうか。
  確かに、これらの被害に遭う人は皆、振り込め詐欺のニュースを聞いたことのある人ばかりでしょう。しかし、それでも被害に遭ってしまうということは、騙す側が騙される側よりも上を行っている、つまり、情報量や騙しのテクニックにおいて、騙す側が騙される側よりも優位な立場で詐欺をおこなっていることに他ならないのではないでしょうか。そのような騙しの「プロ」に、最新の方法で、様々な登場人物を介して「リアル」に騙してこられては、運悪く騙され易い立場にあった高齢者などは、いとも簡単にその罠にはまってしまうことでしょう。
  もっとも、これは詐欺の話しであり、そもそも違法な行為ですから、騙す側が100%悪いことには違いありません。
  ところが、お互いに悪いところが無くても、私人間の契約ではこれと良く似た構造が取られる場合があります。
  近年、世間では「契約自由の原則」「自己責任の社会」という言葉がよく使われます。確かに、個人対個人の契約においては、約束したことは守らなければなりませんし、その結果不利益を受けたとしても、それは自己の責任ということになるでしょう。それが「私的自治」というものです。
  しかし、これが消費者(個人)対事業者の契約となると話は違います。先の振り込め詐欺の話と同様、事業者というのはその道の「プロ」であり、その契約に関する情報量も、交渉術も、全てにおいて消費者よりも優位に立っている場合がほとんどです。そのように最初からハンディがある状態で「契約自由」「自己責任」というのは、むしろ不公平ともいえます。
  そのため、各種の法律によってその不公平を是正する方法が取られ、契約の後でも、消費者側に一定の条件の下でのキャンセル(契約解除)を認めた「クーリングオフ」の規定(特定商取引法)等、様々な消費者法があるわけです。
  しかし、このような消費者を保護する法律があっても、それを知らなければ何の役にも立ちません。まさか事業者側から消費者に対して、事業者に不利になるようなアドバイスが積極的におこなわれるとは思えません。
  そこで、社会に出る前に、学校でこういった消費者を保護する法律を教えることが必要であり、それが消費者教育や法教育というものであると考えます。
  特に携帯電話やインターネットを使った悪質商法の類は、学生のうちからその被害に遭う可能性の高いものであり、社会経験の全く無い学生にとっては、ほんの少しの情報が伝わっているだけでも、被害を未然に防ぐ効果は大きいものと思われます。
  そのためには、各学校の先生のスキルアップとともに、有効な教材や、消費生活相談センターや司法書士会でおこなっている消費者講座(出張授業)など外部の力の活用により、より具体的で実態に即した消費者教育、法教育というものを進めていくことが肝要であり、あらかじめ年間の授業計画の中に落とし込んでいく等の計画的な対応が必要であると考えます。
  最近の雇用情勢の悪化にともない、借金の返済に行き詰まる「多重債務者」の数は一向に減りません。多重債務に陥るきっかけには、悪質商法や無理なクレジット払いによるものが少なからずあります。早い時点での消費者教育、法教育への取り組みが、多重債務問題を未然に防ぐことにもつながると考えますので、関係各位の積極的な取り組みに期待したいと思います。

 
【比留間 貢(ひるま みつぐ)さんのプロフィール】

1965年埼玉県日高市生れ。大学卒業後メーカー勤務を経て1999年司法書士試験合格。2001年埼玉県入間郡毛呂山町にて司法書士登録。
その後現在まで埼玉司法書士会消費者問題委員会に所属し埼玉県内の高校生向け出張講座「高校生のための消費者講座」の企画を担当。その間、のべ200校以上の出張講座の実施に係わる。