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5.3憲法記念講演会(東京・三田)開催さる

2017年5月15日

 2017年5月3日(水)、慶應義塾大学三田キャンパスにて「全国憲法研究会」主催の憲法記念講演会が開催されました。会場の大教室は立ち見も含めて900名の超満員となり、学生から年配者まで多くの市民が熱心に聴講しました。

 講演会の冒頭、全国憲法研究会代表の長谷部恭男早稲田大学教授の挨拶があり、講演者の紹介がなされました。

 最初の講演者は、政治学者の中野晃一上智大学教授でした。「グローバルな寡頭支配の拡散と立憲デモクラシーの危機」と銘打ったタイトルで、今年の4月22日の「アースデイ(地球の日)」にワシントンD.C.で行われた「科学のための行進」がパワーポイントの写真で会場に大きく紹介されました。トランプ政権の登場後、「ポスト真実」に代表されるように、真実や事実が軽んじられる風潮に危機感を持った科学者たちのプラカードが目に付きました。例えば「I can't believe I'm marching for facts.(事実のために行進しているなんて信じられない)」や「So bad, even introverts are here.(内向的なんだけど、あまりにひどいのでここにいる)」などファクト、真実、エビデンスが脅かされていることがズバリわかるものばかりです。本来、学者は書斎の人で、街頭に出ることはないのに出て来ざるを得ないのは、アメリカばかりではありません。会場の写真は一転、2015年9月16日の参議院議員会館前に変わります。マイクを持ち写っているのは長谷部恭男教授です。その他、石川健治教授や山口二郎教授の姿も見えます。講演者の中野教授に言わせると、本音はこんなところに来たくはなかったが、立憲デモクラシーの危機で止むを得ず参加しているとのことです。
 安倍首相とトランプ大統領の握手している写真も写し出されます。ポピュリズムと言われるのは二人の手法がポピュリズムに近似しているからで、安倍首相は、トランプ大統領と違いポピュリストとは言えないと指摘します。日本でポピュリストと言えば橋下徹元大阪市長や小池百合子都知事のような存在を言うとのことです。安倍首相とトランプ大統領に共通なのは、反自由主義、アンチリベラル、非立憲という情念が渦巻いている点だと中野氏は指摘します。更に今、代表民主制が空洞化しつつあり、安倍一強体制ではなく独裁者になっているのは、メディアへの圧迫などから明らかである。戦後レジームからの脱却は、歴史修正主義であり、復古主義であり、いわば啓蒙思想の前の時代に戻ってしまっている。そこに見られるのは統治の私物化や世襲、復古的伝統支配であると中野教授は、警鐘を鳴らしました。
 改憲についても何一つもいいことはない。政権交代も出来ず、死票の多い小選挙区制を止められないのに、改憲で何かよくなることはあり得ないと中野教授は断言します。

 次の講演者は、憲法学者の青井美帆学習院大学教授でした。タイトルは「日本国憲法が守ってきたもの」というものしたが、講演内容の多くは日本国憲法によって否定された前時代の話についやされました。まず指摘されたのが「日本独特の精神文化」で、これは古い話ではなく、平成12年の参議院憲法調査会での世耕弘成委員の発言を引き、聖徳太子の十七条憲法や大宝律令、御成敗式目、五箇条の御誓文など日本人が憲法・基本法を自分で作る能力が過去持ってきたという虚構性を指摘します。確かにこれらは「憲法」ではありません。憲法でないものを憲法として語るのは、日本国憲法を骨抜きにするものであると批判は鋭くなります。
 次に青井教授は、明治国家を支えたものの例として、国体、軍人勅諭、教育勅語を挙げます。軍人勅諭「陸海軍軍人ニ賜ハリタル勅諭」は、明治15年に出されたもので、徴兵制で召集された兵士に語りかける内容となっていて、「朕は汝等軍人の大元帥なるそされは朕は汝等を股肱と頼み汝等は朕を頭首と仰きて其親は特に深かるへき」と兵士を力づけていると指摘します。続いて昨今話題の教育勅語です。今でも評価する現役閣僚もいるようですが、青井教授は「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」と一見儒教的だが、実は「常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ」と国権的であり、個人を犠牲とするものだったと語ります。
 青井教授は安倍政権の「改憲の機は熟した」という物言いは誤りであることを、各種世論調査の結果で指摘します。特に目立ったのは改憲に賛成といっても、九条改正に否定的な意見が多かった点です。九条改憲、2020年施行の安倍発言で世論がどうなるのか興味深い点です。

全国憲法研究会


 

 

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