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暴露された「ウソつき・独裁」の実相〜ここまで来た「国政私物化」

2018年3月19日



丸山重威さん(ジャーナリズム研究者)

 批判をするメディアに、「フェイクニュース」と罵声を浴びせ、「印象操作」と逆ギレする政権—。そんな風景も珍しくなくなった政治状況だが、「フェイク」などという必要もない「ウソ」が、メディアによって暴露され、国会の空転と官僚の辞任から政治責任まで問われる事態になっている。マスコミ操作は得意なはずの安倍政権は、もともと無理なお友だちの学校建設をウソで固めて正当化してごり押し、「関わりがない」と言うウソを隠すために、書類を捨てたとウソをつき、できた文書を改竄し、それを知っていたか、いつ知ったかまで、ウソをつかなければならなくなって、問題が広がった。

▼それは「朝日」の特ダネで始まった…
 スタートは、3月2日付朝日新聞。「森友文書書き換えの疑い 財務省、問題発覚後か 交渉経過など複数箇所」—一面トップでこうスクープした朝日に、官邸は首相が北村滋情報官に、一日のうちに二度も会ってニュースソース探しに走り、自民党議員は「証拠を出せ」とブログなどで「合唱」。「誤報」扱いでごまかそうとしたが、他紙も含めた続報が相次ぎ、国会を止めて、6野党揃ってのヒアリングでの追及に、財務省は事実を認めざるを得なくなった。続いて、近畿財務局で本省・理財局の指示を受けた現場の職員が自殺したことが明らかになると、国会答弁を一手に引き受け、国税庁長官に転出した佐川宣寿氏を辞任させなければならなくなった。
 決裁文書の改竄について「由々しきこと」と発言した麻生太郎副総理・財務相は、「改竄は理財局の一部の者が行った。責任者は佐川」と、佐川氏に責任を押しつけたが、自民党内からも批判の声が出て、佐川氏の証人尋問まで拒否できない状況になってきている。
 そもそも、なぜ文書を改竄しなければならなかったのか? その点、オリジナル文書を見ると、改竄してまで隠さなければならなったのは何か、が自ずから明らかになるのだが、それは結局、(1)陳情した政治家や安倍昭恵氏の名前、(2)金額についての交渉内容、(3)この事案が「特例」であったり「特殊性」を持つものであること、—などである。
 この間の事情を、明らかになった事実と、その「解釈」を含めてまとめると、次のようなことになる。

▼自殺者まで出した「改竄という犯罪」
 そもそも昨年、この森友事件が問題になって来る中で、森友学園の籠池泰典理事長が政界にも勢力を広げる日本会議の有力メンバーであることや、幼稚園での教育勅語の暗唱などで知られてきたが、やがて、そこに、安倍首相夫妻がこの学園に深い関わりを持っていることも次第に明らかになっていった。幼稚園の子供たちの「安倍総理大臣をお支えしている昭恵夫人、ありがとうございます」の「合唱」の映像もメディアに流れたし、感激した昭恵夫人の話を聞いたのか、首相は国会でも「素晴らしい教育をしていると聞いている」などと答弁した。「安倍晋三記念小学校」の冠は確かに断ったようだが、昭恵夫人は幼稚園で講演したり、小学校の名誉校長として宣伝された。
 そうした状況は、小学校建設に乗り出すため、国有地の借用、取得に向かった森友学園の案件を、土地を扱う近畿財務局がどうしても把握し、部内で共有し、実現しなければならないと考えたのもまた当然だったのだろう。最初は土地の借用、それを売買に付け替える。金額はできるだけ下げる。ルールを曲げなければ無理な小学校建設のために、ゴミの存在が「創作」され、業者にその旨を証言させた。9億円の土地は、「地下に有害ゴミが溜まっていて、これを撤去する」との名目で、8億円をまけて、入ってくる補助金を合わせて、学園側は実質200万円程度で取得できるように、話をまとめた。もともと無理な土地取得である。それを、ウソで固めて実現させ、そうした事情は、詳しく決裁書にまとめられ、報告されていた。後で、「なぜこんなものを認めたのだ?」と聞かれたときに分かるように、「事情」を詳しく書くのは、お役人としての良心であり、自己防衛だった。
 ところが、昨年2月17日、安倍首相は、衆院予算委員会で福島伸享議員の質問に、「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もし関わっていたのであれば、これはもう私は総理大臣を辞めるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います」とお見えを切って答弁した。「関わっている」とは曖昧な言葉だが、財務省や近畿財務局が狼狽したのは想像に余りある。これまでの決裁書類の中の「政治的関わり」を示す事項は全部削り、言葉も修正して作り直す作業に着手した。
 「百遍繰り返せばウソも本当になる」と言われるが、昭恵夫人と森友学園との関係を隠さなければならないから、その部分を無関係を装うため削除する。すると、他の国会議員の名前だけ書かれているのは不自然なのでこれも削る。それだけではない、他の文書にもでている関連部分はみんな削除…。それだけではない。「関わり」を示す言葉の修正も必要だ。「特例的な内容」「価格提示を行う」「本件の特殊性」などの言葉を消し、金額交渉の事実を隠した文書につくり変えた。作業は膨大だったことが推察できる。
修正文書は明らかになっただけで、少なくとも14文書、修正箇所は数え方によるが280から300箇所である。修正を指示したのは本省の理財局。実際に作業した近畿財務局の担当者は、常識では考えられない「仕事」で、100時間にもなる残業を命じられ、ノイローゼ気味になって、とうとう自殺に追い込まれた。

▼裏目に出た情報操作
 そして今回。朝日の報道を「誤報」と決めつけて逃げようとしたが、逃げられなくなった政府は、その結果、その責任を佐川宣寿前理財局長、国税庁長官に押しつけようとし、国税庁長官になってから逃げ回っていた佐川局長を辞任させ、幕引きを図ろうとしているが、もう世間には、何が本当のことか、見えてしまっている。国会がストップ、佐川喚問の「合意」が伝えられ、野党が国会に復帰しても、首相官邸前では連日抗議が繰り返されている。情報を隠し、ウソを続ければ何とかなる、という「情報操作の哲学」が裏目に出た「混乱」である。
 今回の事態は今後さらに、行政組織の公正な業務遂行を支えてきた部内の記録、公文書の作成や保存、管理の在り方の問題、それを担保してきた犯罪、公文書の偽造、変造、毀棄などの問題としても追及されることになるだろうが、同時に、国会に公然とウソを言いそれをなし崩しに認めさせてしまうという政治のあり方、民主主義や三権分立のはずの憲法原則の問題としても追及されなければならないだろう。
 安倍政権の下で広がる「政治の私物化」「行政の私物化」を押し留めることは、憲法の基本問題である。

◆丸山重威(まるやま しげたけ)さんのプロフィール

静岡県浜松市出身、早稲田大学法学部から共同通信社に入社、30数年間メディアで働き、同社整理部長、編集局次長、情報システム局長など。その後、関東学院大学法学部教授(同法科大学院教授併任)、中央大学兼任講師などを務めた。現在、日本ジャーナリスト会議運営委員、日本民主法律家協会理事「法と民主主義」編集委員など。著書に「新聞は憲法を捨てていいのか」(新日本出版社)、「安倍改憲クーデターとメディア支配」(あけび書房)など。



 



 
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