法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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「弁護士 白神優理子が語る『日本国憲法は希望』」

2017年11月27日



白神優理子さん(弁護士)

1.弁護士としていつも大切にしていること
 弁護士になり2年間で100回ほど憲法に関する講演をした頃、元高校教員の沖村民雄先生から「ぜひ、全国の教員や若い人たちに特にあなたの話を届けたいから本を出版しないか」というお話をいただきました。
 「高校生から読めるように」ということで具体的なエピソードをたくさん盛り込みながら、これまでの講演内容をまとめて文章を作りました。
 いまは弁護士4年目で講演の数は200回以上になりました。
 常に私が心がけていることは、「どんな絶望的状況でも希望がある」ということです。これは講演に限らず、弁護士としての事件活動や若い世代と取り組む平和活動・政治活動など、どんな時でも大切にしています。
 そして「希望がある」ことを体現しているのが憲法だと思います。だから「憲法は希望」です。

2.憲法に出会う前の私
 憲法に出会う前の私は、テストの成績によってクラスや席順が決まる進学塾に小学生の頃から通い、競争の階段から落ちないように、学校では嫌われないように周りの空気を読むことに必死な毎日でした。
 暗記が中心の勉強をしていて、歴史の年表を表面だけ見ていると人間が争い・差別・戦争ばかりしていると思いました。
 また、私の出身は神奈川県海老名市で米軍基地がすぐ近くにあり、米兵に話しかけられて怖い思いをしたり、騒音に悩まされたりしていました。米兵による少女暴行事件を知った時も、とても辛かったですし、基地問題に疑問も持ちましたが、あまりにも広い米軍基地を前にして、自分に何かができるとは思えませんでした。
 「人間は醜く、歴史は過ちを繰り返すもの。」「だから私にできることは何もない。生きている意味もないのではないか。」と諦めて落ち込んでいました。

3.憲法との出会いが私を180度変えた
 私が変わったのは高校生になってからです。高校生平和ゼミナールという全国サークルに入り、高校生の仲間や教員の皆さんと共に戦跡地を巡り、戦争体験者の方々のお話を聞きました。思い出したくない記憶を、「もう二度と過ちを繰り返させたくない」「こんな残酷な体験を次の世代にさせたくない」という思いから、私たちに語りかけてくれ、「あなたたちが次の社会をつくる主人公だよ」と励ましてくれた戦争体験者の方に出会いました。「歴史が変わらないなんて、諦めていてはいけない」「このバトンを受け取って平和な社会をつくりたい」と強く思いました。
 そして多くの戦争体験者の方々が「日本国憲法を大切にしてほしい」と力強く語ってくださいました。
 実は私は憲法にはあまり良いイメージがありませんでした。法律というからには、校則のように私たちを縛るものなのではないかと漠然と考えていました。
 けれどみんなと学ぶ中で、日本国憲法はむしろ「私たち国民の自由・権利を保障することを国家権力側に命令しているもの」「国民を国家よりも何よりも大事にして、主役にするもの」「戦争をしない・戦力も持たないと徹底的に命を大事にしている世界最高水準のもの」ということを知ってとても感動しました。
 このような画期的なシステムが生まれた背景には、侵略戦争で多くのアジアの人々を殺した後悔、天皇のために死ねと子どもたちに教え戦場へ追いやった後悔、奪われた多くの命がある。真実を隠し侵略戦争を進めた国家権力の手足を縛り、国民を主人公にすることを徹底して、二度と過ちをくり返さないようにしようという「決意」があり、日本国憲法の原点であることを学びました。
 しかもこの憲法の中身をさらに本物にしていこうというたくさんの「声を上げる大人」の姿にも出会ってきました。
 「日本国憲法との出会い」は私に希望をくれました。こんな画期的なシステムを、もう二度と過ちを繰り返さないという後悔と決意の上に、しかも「最高法規」として作り上げた人間は決して醜くなんかないんだと知りました。私にとって日本国憲法は、人間の歴史が前に進むことを教えてくれる希望の存在です。
 それなら私も、憲法の中身を本物にする仕事をすれば、人の役に立てる生き方ができるのではないかと思うことができ、弁護士という夢を見つけました。

4.9条改憲の動き
 日本国憲法は世界にとっても希望です。今や軍事同盟は世界の少数で、問題を話し合いで解決していく平和共同体が大きく広がり、核兵器禁止条約も採択されるなど、世界は日本国憲法の方向へ進んでいます。
 ところが安倍首相は、憲法を守る義務に反し、積極的に憲法違反の法律を次々と強行採択し、今年の5月3日には憲法9条に自衛隊を書き込む改憲を、2020年までに実行とすると宣言しました。
 日本国憲法において、憲法を尊重擁護する義務は国家権力者側にあります(99条)。安倍改憲発言は、これ自体が立憲主義に反する憲法違反の発言であり、許されないものです。
 過半数を超える国民が反対した、憲法違反の戦争法(安保法制)が強行採決された今、憲法に書き込むこととなる自衛隊とは、「災害派遣の自衛隊」ではなく、「集団的自衛権の行使など武力行使ができる自衛隊」なのです。決して、災害支援をする自衛隊を憲法に書き込むなどというものではなく、自衛隊を「殺し殺される軍隊」へと180度変えてしまうことになります。
 「集団的自衛権の行使」とは、日本が攻撃されてもいないのに自衛隊の若者を海外に連れて行き、武力行使をすることができるようにするものです。
 これを内容とする戦争法(安保法制)に大多数の人たちが反対し、「憲法を守れ」と声をあげました。その力で、戦争法の第一弾である南スーダンへの自衛隊派遣を撤退させることができました。そこで安倍政権は憲法9条そのものを変えて、集団的自衛権を無制限で行使できるようにしようと狙っているのです。

5.1% 対 99%
 9条改憲によって日本が「戦争する国」にさせられたら…。
 軍事同盟相手国のアメリカが世界で起こす「戦争」に自衛隊の若者が連れて行かれ、前線で弾薬の提供や銃を撃つことができるようになり、殺し殺され血を流すことになります。
 そしてこれは、海外に憎しみをばら撒くこととなり、日本がテロのターゲットに。戦争のために税金が湯水のように使われるようになり社会保障が切り捨てられ、国民が貧困に。貧困家庭の若者は、医療費や学費のために自衛隊に入らざるを得なくなり、アメリカのような経済的徴兵制が出来上がってしまいます。
 9条改憲とセットで狙われている「緊急事態条項」の創設は、言論弾圧や、国の教育への介入、あらゆる職業への強制的な戦争協力を可能とし、私たちの自由と権利を奪っていきます。
 あらゆる憲法上の価値・権利が破壊される日本へと道を開いてしまいます。
 このようなことを求めているのは、1%程度の大企業・財界の人たちです。1%の人たちが安倍政権へ献金を渡し、買収して「戦争する国」づくりを進めさせています。
 1%程度のお金持ちがもっともっとお金持ちになるために、99%の国民が貧困にさせられ、過労死させられ、戦場に追いやられていく。
 「命よりもお金が大事」そんな1%のための道に進むのか、全ての人の命・自由・幸福追求権を徹底的に大切にした99%のための憲法の道に進むのか、これが私たちに今、問われています。

5.希望を届けるリレーランナーに
 高校時代、金八先生のモデルの一人だった三上滿さんの「歴史のリレーランナたちへ」という本を読み感激しました。
 前の世代から受け取ったバトンを、そのままではなく、自分が勝ち取ったことをそのバトンに込めて、次の世代へバトンタッチする。そうすれば、バトン渡しが続く限り、人間の歴史は必ず前に進むんだというものです。
 私は憲法こそ、次の世代への「希望のバトン」だと思います。
 今、多くの若い世代の方々が、競争教育の中で無理矢理に競争させられ、社会に出れば低賃金・不安定な非正規雇用や、ブラックな働き方に苦しめられ、「どうせ自分なんか」と無力感に苦しんでいるのではないかと思います。
 だからこそ、この苦しみの根っこには何があるのか?ということ、私たちは99%の側で、力を合わせれば苦しみの原因を変えることができること、実際に声をあげる人たちによって社会は変わってきたし、歴史は前に進んでいるという「希望」を一緒に伝え合っていくことが大切だと思っています。
 書籍『日本国憲法は希望』は、ブラックな働き方の問題から、沖縄・米軍基地の問題、核兵器などのテーマから、具体的なエピソードを通して、「問題の根っこが同じ」であること、憲法こそが私たちの「幸せを実現する道」であることを伝えたいと思いつくりました。
 手にとっていただけたら嬉しいです。

書籍『日本国憲法は希望』

◆白神優理子(しらが ゆりこ)さんのプロフィール

八王子合同法律事務所弁護士。神奈川県海老名市生まれ。立命館大学卒業。中央大学法科大学院に進む。2012年司法試験合格。修習地は沖縄を選び、2014年より八王子合同法律事務所所属弁護士として活動中。






 
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