法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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憲法がわかるおはなし「檻の中のライオン」 

2017年7月31日



楾 大樹さん(弁護士)

 憲法って、学校で習うはずなのに、よく知らない方が多いのではないでしょうか。
よく知らない人たちが、最低限の前提知識を踏まえないで、憲法の議論をしていないでしょうか。
 そんな現状に危機感を抱き、「ライオンと檻」の例えを使って、そもそも憲法とは何か?を皆さんに知っていただく活動をしています。「ライオン=国家権力」「檻=憲法」、ライオンを檻に入れて縛るのが立憲主義、という例え話です。『檻の中のライオン 憲法がわかる46のおはなし』(かもがわ出版)という本を2016年に出版しました。この本をもとにした講演活動も行っています。講演では、ライオンパペットと相方パペットを両手に、地元広島を中心に、これまで全国10都府県で行いました。

 「檻の中のライオン」とは、大要、以下のようなお話です。

 私たちはみんな、同じ人間。みんな人間らしく、自分の価値観を大切にして、幸せに暮らしていきたい(天賦人権、個人の尊重)。そのために、政府に政治を任せよう(社会契約)。政府は、とても強い力(権力)でみんなを仕切ってくれる、頼りになる存在。つまり、百獣の王ライオンのようなもの。しかし、とても強いだけに、暴れたら誰にも止められない(権力は濫用されがち)。だから、ライオンを檻(=憲法)に入れておこう(立憲主義)。私たちを守るための檻だから、私たちがしっかり作っておこう(国民主権)。ライオンも私たちが選ぼう(民主主義)。
 ライオンは檻の中だから、私たちは、自分の価値観に従って、ライオンに気兼ねせず自由に生活できる(自由権=基本的人権の中核)。私たちは、ライオンの悪口(政権批判)を言ったりしてもライオンに襲われない(表現の自由)。檻にしばられているので、ライオンは勝手に戦争できない(平和主義)。
 このように、ライオンは檻の中にいないといけない(99条、公務員の憲法尊重擁護義務)。檻は、ライオンの力では壊せないくらいに「硬く」作っておこう(96条、硬性憲法)。ライオンが檻を壊さないように、檻に3頭のライオンを入れて、互いに監視させよう(三権分立)。ライオンが檻から出たら、別のライオンが取り押さえるセキュリティシステムもある(81条、裁判所の違憲審査権)。でもそれだけでは心配なので、ライオンが檻から出ないよう、私たちがしっかり見張っておかないといけない(12条、国民の不断の努力)。檻から出たライオンが目の前に迫ってきたら、私たちが打ち倒すしかない(抵抗権)。

 以上が、憲法の全体像です。書籍では、これにイラストをたくさん入れて、絵本のようにイラストを眺めていくだけで大まかに憲法の仕組みがイメージできるよう工夫しました。
 ライオンが檻を破って好き勝手に走り回っていないか?というのが、ここ数年の問題だと思います。

 あちこちで講演をさせていただきましたが、岡山県総社市の学童保育にお招きいただき、子どもたちと親御さんたちにお話をしたのが印象に残っています。幼稚園児と小学生全学年の子どもたちで、こんな小さな子たちにわかってもらえるのか心配でしたが、何となくわかってもらえた気がしましたので、冒頭だけ書き起こしてご紹介します(一部改変しています)。

 みなさんこんにちわ!

 こんにちわー!!(^○^)

 弁護士の楾(はんどう)といいます。弁護士って知ってるかな?

 知らーん!

 法律を使って、困ってるひとを助けるお仕事です。

 えー?法律ってなに??

 え、えーっと、法律っていうのは、きまりです!きまりを守らない人がいたら、困るよね!

 今日は、憲法のおはなしをします。憲法って聞いたことあるかな?

 なーい!

 憲法というのは、日本の国で、いちばん大事な、きまりです。きまりは、守らないといけないね。憲法っていうきまりは、誰が守るきまりかな?国民みんなだと思う人(^^)/

 (^o^)/ハーイ (^o^)/ハーイ

 答えは憲法に書いてあるよ。憲法99条を見てみよう。憲法を守らないといけないのは、公務員って書いてあるね。国民って書いてないね。公務員ってわかるかな?

 わからーん!

 政治家とか、お役所に勤めてる人とかのことです。政治家ってわかるかな?

 ・・・?

 あべ総理大臣とかのことです!

 あー!

憲法っていうのは、政治家の人とかが、お仕事するときに守らないといけない、きまりです。ぼくたちみんなが守るきまりじゃないんだよ?

 へ?

 じゃあまた問題をだすよ。ここにいるみんなの共通点、同じところって何だろう?

 人間・・・?(小学5年生)

 おー、すごい、正解です!

 自分と誰かと、おなじところがあったら、お互い大事にしたいよね。みんな同じ人間なんだから、人間らしく幸せに生きていきたいな、っていう思いは同じだよね。人間らしく生きていけないような人が、誰もいないようにしたいね。
 じゃあ、なんでみんな人間なのかな?そんなことわかんないね。生まれてみたら人間だったよね。
 人間として生まれたんだから、みんな人間らしく生きていけるよ!これを「基本的人権」といいます。
 ぼくたちは、基本的人権を、だれからもらったのかな?
 みんな、人間として生まれたときに、天から授かっているんだよ。

 みんな同じ人間だけど、みんなそれぞれ、個性が違うよね。得意なこと、苦手なこと、好きなこと、嫌いなこと、みんな違うね。誰かと違っていても、いいんだよ。
 動物の世界にも、おさるさん(ぬいぐるみを出す)や、犬さん(ぬいぐるみを出す)や、うさぎさん(ぬいぐるみ出す)や、いろいろいるね。
 人間にも、いろんな人がいます。誰かと違っていても、みんな一人ひとり、こうして生きているね。そのこと自体が、大事なことです。そのことが憲法に書いてあるよ。13条「すべて国民は、個人として尊重される」。

 じゃあ、みんなが個性を生かして、人間らしく幸せに暮らしていけるには、何が必要だろう?
 みんなそれぞれ、好きなこと、やりたいことが違うよね。それは大事にしないといけない。でも、ぼくはこれが好き〜、私はこれがしたい〜、ってみんなが好き放題やったら、どうなるかな?

 (ぬいぐるみを出す)
 おさるさんと犬さん、仲悪そうだよ〜。けんかになっちゃうかもしれないね。
 犬さんがワンワン吠えたら、うさぎさん怖がっちゃうね〜。強い人が弱い人を踏みつけちゃうかもしれないね。

 学校の中のことを考えてみよう。学校で、みんなが自分のしたいことばっかりしたら、どうなるかな?
 けんかになったり、いじめっ子がいじめたり、するかもしれないね。
 そんなとき、どうする?
 先生に言うかな?
  もし、学校で、教室に先生がいなかったら、みんなどうなるかな?みんな好き勝手するんじゃないかな?みんな楽しく学校で勉強したりできなくなっちゃうかもしれないね。先生がいたら、けんかしてる子や、きまりを守らない子がいたら、こらー!って怒ってくれるね。みんな、先生に怒られたら、言うこと聞くかな?

 ウンウン

 先生の言うことなら、みんな聞くよね。先生が、強い力でみんなを仕切ってくれるから、みんな安心して学校で勉強できるね。
 国の中でも、みんな好き勝手をやったら、人間らしく生きていけない人が出てくるかもしれない。みんなが好き勝手をしないようにするには、何が必要かな?
 「ルール」(法律)が必要だね。
 「これがルールだから、みんな守ってよ!」
 「ルール違反をしたら、お仕置きするよ!」
 というふうに、強い力で、みんなを仕切ってくれる人がいないといけないね。
 国の中でそういうことをするのを、「政治」といいます。学校の中の先生みたいに、「この人の言うことなら聞くしかない」っていうような、強い力。これを、「権力」といいます。権力を持った人に、「政治」をやってもらわないといけないね。

【パペットマペット】 〜おさるさんたちとライオンの社会契約?

講演する楾大樹さん
◆おさるさん
 「強くて頼りになりそうな誰かに、政治をやってもらおう。そうだ!百獣の王ライオンさんなら、強い力でみんなを仕切ってくれて、頼りになりそうだ。ぼくたちみんなが人間らしく幸せに暮らしていけるように、ライオンさん、政治をやってください」

◆ライオン「よし、ひきうけた」

 引き受けてもらえたね。これでみんな、幸せに生きていけるかな?
 今、おさるさんの目の前に、ライオンさんがいるよ。どうですか?

 こわーい!

 そうそう!怖いね!ライオンさん、本当にぼくたちのために、政治をやってくれるかな?
 機嫌の悪いときには、噛みついてこないかな?ガブッ
 ライオンさんが暴れ出したらどうなるかな?

◆ライオン
 「俺様がぜいたくしたいから、税金はたっぷり払えよ!」
 「俺様の言うこと聞かないやつは、牢屋に入ってろ!いや、死刑だ!」
 「あそこの国はムカつくから、やっつけてやれ。戦争するぞ!」

 ライオンさん、強いから、頼りにはなるけど、もし暴れだしたら誰にも止められないね。誰だって、自分の思いどおりに、自分が好きなように、いろいろできたらいいなーって思うよね。権力を使って政治をする人も、みんなのためじゃなくて、つい、自分のために権力を使ってしまうことがあります。ライオンが勝手に走り回ったら、怖いね。政治をする人が自分勝手なことをしたら、人間らしく生きていけない人が出てくるよ。人類の歴史の中で、そんな出来事はたくさんあります。

 そんなことにならないようにするには、どうすればいいだろう?
 おさるさんたちは考えました。

【パペットマペット】
◆おさるさん
 「ここに、ライオンさんに守ってもらいたい約束事を書いた紙(憲法)を作ったよ。ライオンさん、この約束(檻)を守ってね。檻の中で政治やってね。ライオンを檻に入れておこう。それなら安心だ」

◆ライオン「わかったよ。約束守るよ。檻の中にいるよ」
 (ライオンに台所用水切りラックをかぶせる)

 こうしてライオンさんは、おさるさんとの約束(=檻)にしばられて、政治をすることになりました。ライオンさんが檻の中にいれば、みんな安心して生活できるね。これを「立憲主義」といいます。

 この檻は誰が作るんだろう?日本の国の中で、いちばん偉い人って誰かな?

 (^o^)/ハーイ あべ総理大臣! (^o^)/ハーイ 天皇!

 日本の国でいちばん偉いのは、ぼくたちみんなだよ!

 ∑(゚Д゚)えーっ?

 「国民主権」って聞いたことあるかな?

 なーい!

 日本の国のことを決める力を持っているのは、私たち国民です。そういう意味で、国民みんながいちばん偉いんだよ。これを、「国民主権」といいます。憲法という檻を作るのも、いちばん偉い、ぼくたち国民です。ぼくたちみんなを守る檻だから、ぼくたちみんなでしっかり作っておかないとね。

 ぼくたちが作った檻の中で(憲法という枠の中で)ライオンさんに政治をやってもらいたいね。だから、檻の中でライオンさんがきまり(法律)を作ったら、ぼくたちは、それを守って生活しよう。それが、ぼくたちと、ライオンさんとの約束だよ。
 ライオンさんが檻から出たら、ライオンさんが約束を破ったことになるよ。だから、檻から出たライオンさんの言うことは、ぼくたちは聞かなくていいよ。憲法98条を見てみよう。憲法は最高法規、憲法に違反する法律には効力がない、って書いてあるね。政治をする人たちが憲法に反する法律を作ったら、そんな法律は、ぼくたちは守らなくていいんだよ。

 ここまでで、ぼくたちが檻を作ったね。ここまでのおはなし、だいたいわかった人(^^)/

 (^o^)/ハーイ (^o^)/ハーイ

 じゃあ、ライオンさんは、どんなライオンさんがいいかな?
 ライオンさんにも、いろんなライオンさんがいます。もし、王様とか将軍様みたいな人が、俺様の言うこと聞け、とか命令してきたら、どうですか?

 (>_<) いやだー!(かなり小さい子)

 そう、そんなの嫌だね!そんなことになったら、どんな命令されるかわからないね。ぼくたち、人間らしく生きていけなくなっちゃうかもしれないね。だから、政治をする議員さんを、選挙でみんなで選ぶ方がいいよね。選挙ってわかるかな?

 わかるー!(^o^)/

 おお、わかるのか。みんなが選挙で選んだ人なら、一応、安心だね。もし議員さんがおかしなことをしたら、次の選挙で落とすこともできるからね。こういうやり方を、「民主主義」といいます。みんなはまだ選挙に行けないけど、18歳になったら行けるから、行こうね。

 じゃあ、選挙で選ばれた議員さんは、次の選挙までは何してもいいのかな?それじゃあ困るね。ちゃんと、檻の中で政治をしてもわらないとね。人間だれでも、間違えることがあるよね。みんなに選ばれた人でも、間違えることがあるかもしれない。みんなから選ばれた人が、誰かの基本的人権を侵すような法律を作ったりしたら、人間らしく生きていけない人が出てくるかもしれない。だから、選挙で選んだ議員さんも、しっかり檻に入れておかないといけないよ。

 ここまで、だいたいわかった人(^^)/
 (^o^)/ハーイ (^o^)/ハーイ         〜後略〜  

 (拙著『檻の中のライオン 憲法がわかる46のおはなし』 第1章参照)

◆楾 大樹(はんどう たいき)さんのプロフィール

ひろしま市民法律事務所所長、日弁連憲法問題対策本部委員。
1975年 広島県生まれ
1998年 中央大学法学部法律学科卒業
2004年 広島弁護士会登録
2016年 『檻の中のライオン 憲法がわかる46のおはなし』(かもがわ出版)を出版
弁護士業務の傍ら、月数回ペースで「檻の中のライオン」の講演活動を行っている。
2017年度から、正進社の中学校公民資料集『公民の資料』に「檻の中のライオン」が掲載される予定。
「檻の中のライオン憲法条文クリアファイル」「檻の中のライオンTシャツ」など関連グッズも販売中。




 



 
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