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今週の一言

 

3月末で、原発事故自主避難者への住宅支援が打ち切られました
実態把握を急ぎ、困窮世帯への緊急対応の実施を

2017年5月29日



山本ひとみさん(キビタキの会 事務局長)

キビタキの会の発足と活動
 キビタキの会は、2014年2月、東京都から住宅に関するアンケートが送られてきたことに不安を持った東京都武蔵野市の都営住宅に住む原発事故避難者が、今後の対応をみんなで考えようと集まったことから、発足しました。キビタキは、福島の県鳥です。安心できる住まい・安心できる生活のために、東京都との話し合いを皮切りに、復興庁や内閣府など政府関係各省庁、福島県と、話し合いを繰り返してきました。
 2015年には、福島県知事と避難者受け入れ都道府県知事にあて「避難先にとどまる原発事故避難者の住まいの安定を求める署名」を呼びかけました。全国各地の避難者・支援者から反響があり、その年12月15日に福島県に署名を提出し要請を行いました。

 署名で要望した主な内容は以下の通りです。
・公的住宅にとどまることを希望する住民が現住所に住み続けられるよう、関係機関と協議すること 
・民間借り上げ住宅に住んでおり、避難先にとどまることを希望する住民に対して、引越しや新たな住宅確保に関する補助を実施し、公的住宅の入居に努めること

 こうした声を受けて、東京都をはじめ各自治体も独自の支援を決定しました。
 東京都は、2016年夏に、都営住宅の300戸の優先入居枠を発表しました。しかし、今年3月末の時点で、717世帯の自主避難者世帯のうち入居決定戸数は154世帯でした。これは、応募要件に母子世帯・高齢者世帯・子どもの多い世帯などの要件があり、応募できなかった方が多数いたことを反映しています。

住宅支援打ち切り以降の避難者の実情
  多くの避難者や市民の反対の声にもかかわらず、2017年3月末で、原発事故区域外避難者(=自主避難者)への住宅支援は打ち切られました。
 「キビタキの会」でご縁のあった自主避難者の方は、都営住宅の優先入居要件に該当し、武蔵野市緑町などの都営住宅に入居ができました。広さなどには課題は残っていますが、小学生以下のお子さんのいる方・高齢の方・病気を抱えている方などが入居でき、ほっとしています。全国各地で避難者が中心となって、東京都をはじめ関係省庁と粘り強く交渉を続けていたことに意味はあったと思います。
 一方で、全国的に見れば、住宅支援打ち切り後の自主避難者が置かれている状況は、大変深刻な事例が続出しており、早急な対応が求められています。
 復興庁は、4月28日に、引越し先未定の自主避難者は119世帯と発表しました。しかし、その内訳は明らかにされず、住宅に困窮する方からの相談も、支援団体に相次いでいます。
 4月中旬、キビタキの会には、都営住宅に住む30代男性から住まいを見つけられていないとの相談がありました。入居要件に該当せず3月末退去を求められている方ですが、民間住宅を借りたくてもなかなか契約できないというものでした。他にも、障害のあるお子さんがいるため自動車が必要だが、それを理由に生活保護が受けられない事例などもあります。家族関係にも影響を及ぼし、離婚する世帯も珍しくありません。住宅支援打ち切りは、シングルマザーや非正規の労働者などの貧困を促進しています。
 
今後の取り組みの方向と皆さまへのお願い
  4月4日、今村復興大臣は、記者会見で住宅支援打ち切りへの国の対応を問われた際、「自主避難者が福島に帰れないのは本人の責任である。基本は自己責任。裁判でもなんでもやれば良いではないか。」という趣旨の発言をし、大きな批判が寄せられました。その後さらに心無い発言があり、今村大臣は辞任する事態になり、新しい大臣が就任しました。復興庁は、避難者の声を真摯に受け止め、今後の施策に生かしていただきたいと思います。
 
 キビタキの会としては、当面、住まいが確保できていない避難者や家賃支払い等に困っている避難者の実態の把握。それを踏まえた緊急の対策の実施を求め、避難指示が解除された区域内避難者に対して、今後住宅無償提供が打ち切られる可能性もあることを視野に入れた取り組みにも力を入れていきます。
 長期的には、避難者の生活再建、放射性物質による健康被害を防ぐ防護策を含む原発事故被害者救済のための法整備を求めていきたいと思います。

 キビタキの会は原発事故避難者の住まいの確保を中心に訴えを続けてきましたが、まだまだ、避難区域外の住民がなぜ避難しなければならなかったのかをもっと伝えなければと考えています。子どもを放射能から守りたい一心で避難してきたことを、もっと知っていただきたいと切に願います。自主避難者へは住宅支援のほか公的な支援がほとんどなかったにもかかわらず、「福島の避難者は賠償金をもらっているだろう」などの誤解や無理解があることを変えなければと思います。そのためには実情をしっかりと伝えることを続けていかなければなりません。社会の中で格差が拡大し、生きづらさを抱える方も増えていますが、誰かを不満のはけ口にするようなことは終わらせたいと思っています。
 今後とも皆さまのご理解とご支援をお願いいたします。

キビタキの会

<ご参考>

以下は東京都武蔵野市の避難者の現状です。
全国避難者情報システムによって把握した結果です。  

福島県からの避難者数とその内訳の推移(自主避難・強制避難双方を含みます)

2011年4月30日現在 
    福島県からの避難者 :42世帯 92人
     (内訳)緑町都営住宅 :22世帯 54人
          民間賃貸住宅: 7世帯 14人
          一般家庭  :13世帯 24人

2017年1月31日現在
    福島県からの避難者 :54世帯116人
     (内訳)緑町都営住宅 :30世帯 64人
         民間賃貸住宅 :20世帯 38人
         一般家庭   : 4世帯 14人

2017年4月25日現在
    福島からの避難者 :49世帯 94人
     (内訳)緑町都営住宅 :22世帯 48人
         民間賃貸住宅 :26世帯 42人
         親戚・友人宅 :1世帯 4人

◆山本ひとみ(やまもと ひとみ)さんのプロフィール

岡山県倉敷市生まれ。
京都大学文学部(現代史専攻)卒業。
会社勤めをしながら市民運動に参加。
子どもが生まれ、保育園や学童クラブの父母会活動に取り組む。
パート労働講座を呼びかけ、不安定雇用の改善に尽力。
1995年武蔵野市議会議員に当選。
2007年市議会議員選挙で落選。市民の力で政治を変えるための行動を継続するとともに、知的障がい者外出介助のガイドヘルパーとしても働く。
2011年4期目の当選。現在5期目。政党には属さず、市民の立場に立って活動。
原発事故避難者の団体「キビタキの会」事務局長。原発事故避難者へのサポート団体「避難の協同センター」正会員。





 



 
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