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医療事故防止は事故情報開示が第一歩と確信して

2017年4月24日



岡本隆吉さん(医療情報の公開・開示を求める市民の会 副代表)

 医療情報とりわけカルテと称される診療記録や看護記録、各種検査記録、画像記録など診療報酬請求記録(レセプト)の開示は、全ての患者や家族にとって医療行為の事実を知るうえで最も必要とされていましたが、日本では長年医療者側に独占され続けていました。これらの情報を入手するためには、裁判に訴えて証拠保全するしかなかったのです。
 ところが1990年代に入ると地方自治体が情報公開に積極的に取り組むようになり、政府も遅まきながら1990年代の半ばから情報公開法制定へと動き始めました。そこで私たちは1996年4月、会設立総会を開催して、情報公開法や後からできる個人情報保護法で医療情報(カルテ・レセプト)の開示実現の活動を始めました。勿論、会設立前からもレセプト開示やカルテ開示の活動は、5年以上前から全国各地で個別に取り組まれていました。
 こうした活動の延長から、今では病院外来での会計で、その日受けた医療の診療明細書(レセプトの一部)が領収書として無料で発行されるまでになりました。しかし、最も大事な医療事故防止へとは直結しないままでしたが、やっと厚労省は制度確立へ向けて医療安全制度を進め、2015年10月には医療事故調査制度が医療法の一部改正で動き始めました。この制度は医療事故で死亡した場合のみが事故調査の対象で、しかも医療機関側が事前に予測していた医療事故は全て対象外となっています。その結果、大部分が予測された事故として調査もされないし、事故防止の安全対策にも結び付かない運用となっています。
 私たちはこうした制度の欠陥を具体的に示し、改善を求めていくことの重要性を考え、今回「医療事故調査制度」を活かすサポートホットラインを開設(2017年2月11日〜12日)いたしました。地味な活動ですが患者の人権を守り、犠牲となった患者や家族の人には言えない悲しみ、恨みや思いが医療界で事故再発防止に活かされることを願って取り組んでいることをご理解いただけると幸いです。

1、医療の個人情報本人開示を妨害し続けている現状
 個人情報保護法が制定(2005年4月)されてから既に12年も経過しています。多くの国民には医療情報の本人開示は進んでいるものと思われていますが、当会にはいまだに本人開示や家族による開示ができないという相談が寄せられています。昨年受けた相談22件のうち13件ありました。1件1件個別にサポートして開示にこぎつけています。1年以上かかって開示までに至った事例もあります。病院が拒否する場合や個人情報保護法や制度を知らない場合もあります。順天堂大学病院などは開示請求だけで1万円を徴収したり、医師の立ち合いを条件として認めないと開示請求の受け付けすら認められません。この件では厚労省とすでに5年も交渉していますが、いまだに間違った運用が改められていません。
 最近では大阪でコピー1枚につき270円を徴収する病院の被害に遭った相談があります。多くは医師の立ち合いなど不当な条件を承諾しないと開示請求を受け付けないケース、高額の手数料・コピー代を請求されるケース、使用目的を記載しないと開示請求を受け付けないケース、親族や家族全員の同意書提出を強要するケース等です。医療界での 加えて法の番人と言われている弁護士(医療界側)ですら亡くなった患者の遺族に対して「遺賊」と差別的呼称をつけて解説したり、患者や遺族を「モンスターペイシェント」略称モンペと呼称して差別しています。しかもこうした呼称は、医療界が「医療安全」をテーマにした講演で差別呼称を使い、医療界と患者の不信感を助長させています。又カルテ開示についても一部の弁護士が使用目的を条件にして事実上の開示を阻害しています。

2、サポートホットラインに寄せられた医療事故
 2017年3月27日に「日本医療機能評価機構」は2016年1年間で報告された医療事故件数が過去最高の3882件であったことを公表しました。これは全国1031の医療機関から報告されたものです。これに対して、2017年2月末時点での医療事故調査制度の現況報告(2017年3月9日付公表)では、2015年10月に医療事故調査制度が施行されて以降で、相談件数が累計2639件ありましたが、実質の事故報告は累計546件、事故調査報告は累計289件のみです。
 制度ができるとき厚労省が予定していた件数より、はるかに少ない事故調査報告件数では医療事故防止や医療安全に役立たない制度としか言えない状態でしょう。前述のサポートホットラインの内容は別紙※で詳しく報告していますが、相談総数63件で、医療事故調査制度施行後に亡くなった事例が18件ありました。ほとんどの遺族は医療事故調査制度の存在すら知りませんでした。私たちは相談内容を弁護士とも相談しながら今後の対応を更に検討し、一例でも多く事故調査をさせるようにしたいと考えています。それにより、尊い患者さんの命を医療安全のために活かすことが出来ると考えるからです。

サポートホットライン開設結果詳細(PDF)

医療情報の公開・開示を求める市民の会

 

◆岡本隆吉(おかもと りゅうきち)さんのプロフィール

広島県出身1944年生まれ
大阪市在住
1971年 大阪市内で発覚したニセ医者事件での犠牲で息子を亡くして、救急医療制度確立、医療改革の運動を始める。
1982年「薬害・医療被害をなくするための厚生省交渉」を開始、現在も年3回の交渉継続。
1984年「脳死 臓器移植の立法化に反対する関西市民の会」を立ち上げ代表として活動。
1996年「医療情報の公開・開示を求める市民の会」発足。現在は副代表。
1988年「知る権利ネットワーク関西」を立ち上げ事務局長として活動。




 



 
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