法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

集団的自衛権の行使に関わる憲法上の問題点

2014年4月21日



高良鉄美さん(琉球大学法科大学院・『戦争をさせない1000人委員会』発起人)



 これまで認めてこなかった集団的自衛権の行使について、これを認める方向に政府解釈を変更するという。憲法上の問題はいくつも浮上してくる。まず、立憲主義との関係である。そもそも、憲法の役割は、国家権力が独善的な判断によってその権力を拡大しないように制限することにある。拡大解釈をはるかに超えた恣意的解釈は、立憲主義の本分に基づくはずのないものである。憲法が明確には与えていないものを、勝手に国家権力が持つことは許されるものではない。

 次に、憲法の基本原理である平和主義との関係である。平和主義は憲法9条に代表されるが、憲法全体をカバーする基本原理である。平和は基本的人権享有の基盤であることはもちろんのこと、統治機構である国会、内閣、裁判所、そして地方自治体も、平和主義に基づいた判断を行い、人権保障に努めなければならない。個別的自衛権の行使を認めるかどうかでさえ、憲法の平和主義が示す針は、振れるのであって(砂川事件伊達判決参照)、ましてや日本が攻撃を受けていない状態で武力攻撃を行うことは、明確なレッドゾーンへ針が振れることになる。

 平和主義と人権という側面では、平和的生存権も本質的な関係がある。平和的生存権は司法的には、長沼事件の福島判決で言及されたが、(旧)安保条約が問題となった砂川事件の伊達判決の論理とも底流でつながっている。同判決では、米軍は、日本への攻撃に対する防衛援助のみに使用されるだけでなく、米国の軍事戦略上、日本の区域外にも出動するのであって、自国と関係のない武力紛争に巻き込まれ、戦争の惨禍が及ぶおそれがあることを指摘している。そこでは受動的に武力紛争に巻き込まれるという状態であったものが、現在政府の目指している集団的自衛権の行使ということになれば、まさに自国と関係のない国への攻撃を日本が行い、積極的に武力紛争の渦中に入っていくことを意味する。それこそ集団的自衛権の行使を認める「政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こること」にほかならない。

 先ごろ、集団的自衛権行使の容認に向けて躍起となっている政府や与党自民党は、砂川事件最高裁判決を引き合いに出して、集団的自衛権を認めたものとする見解を発表した。砂川事件は旧安保条約および駐留米軍が違憲であると争ったものであって、時代背景をきちんと捉えれば、最高裁判決にあっても日本側の集団的自衛権行使などの問題に言及した判決でないことは明白である。むしろ、個別的自衛権のみを認めつつも、9条により戦力は持たないけれども、防衛力不足を補うものは、国連の軍事的安全措置に限定されず、他国に安全保障を求めることを禁じていない、というものであった。そもそも、砂川事件で問題となった旧安保条約は、日本の防衛力でもって、他国による米軍への攻撃に武力攻撃で対抗することなどは平和憲法の建前上、微塵も想定されていない(交渉裏ではあったとしても)。現安保条約を直接の対象としたものではない砂川事件を引き合いに出したことは政府与党のあせりの表われともいえる。

 現安保条約には、共同防衛や防衛力の維持発展などが盛り込まれ、日米軍事同盟強化方針の政策の下で、日本の軍事力は世界有数となって、砂川事件の状況と異なる。日米安保の現況には、米国が日本に集団的自衛権の行使を求める構図があるのと同時に、日本政府の側も集団的自衛権行使を認めることで、憲法の平和主義の歯止めを機能不全にして、更なる軍事強化を計る意図も見える。皇太子暗殺でオーストリアとセルビアの2国間の局地戦のうちに終わるはずだった第一次大戦が、ヨーロッパ全土を巻き込み戦火拡大したのは、今でいう集団的自衛権を行使した同盟関係から来たことを想起せよ。

◆高良鉄美(たから てつみ)さんのプロフィール 

1954年那覇市生まれ 
1972年3月 琉球政府立那覇高校卒業
1978年3月 九州大学法学部卒業
1984年3月 九州大学大学院法学研究科博士課程(単位取得満期)
1984年4月 琉球大学法文学部赴任 助手、講師、助教授、教授を経て
現在 琉球大学法科大学院 教授 
1989年〜1991年8月まで 米国バージニア大学客員教授
2004年〜現在  琉球大学法科大学院教授
2007年〜2011年 琉球大学法科大学院院長
県内外の大学等の非常勤講師を歴任
県内の国・県・市町村等の職員研修講師を歴任
県内の各種審議会委員長、委員などを歴任
沖縄県内各市町村、日本国内、国外で講演
九州法学会理事(現在に至る)
沖縄県憲法普及協議会会長
戦争をさせない1000人委員会』発起人
 
受賞など 2002年度沖縄研究奨励賞受賞 

著書
(1)『僕が帽子をかぶった理由−みんなの日本国憲法』クリエイティブ21 全187ページ(2009・10)
(2)『沖縄から見た平和憲法』未来社 全221ページ(1997・8)
(3)『群読日本国憲法』監修 CDブック 高文研 全65ページ 2007・5
(4)発行者 『わたしの憲法手帳』第4版2006 沖縄県憲法普及協議会 
(5)共同執筆 『戦後沖縄の人権史』2012 高文研

その他論文等60本以上





 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]