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日清戦争・東学農民戦争の120年 

2014年4月7日



中塚明さん(奈良女子大学名誉教授)

 

 日本の内外で日本人の歴史認識が問われている今日、今年は日清戦争120年の年であることを私たちが自覚的に思い起こすことがことのほか大切ではないかと思います。
 日清戦争は日本がアジアの圧迫国に転じる画期になりました。その反面で、日本がはじめてアジアで大規模な抗日闘争に直面することになった戦争でもありました。すなわち今年は朝鮮で起こった東学農民戦争120年の年でもあります。

 「朝鮮の独立のために戦う」というのが日本が内外に宣言した日清戦争の目的でした。しかしこの戦争での日本軍の第一撃は、朝鮮の都、ソウルの王宮=景福宮を占領して国王を事実上日本の擒にすることから始まりました。私は日清戦争開戦から100年目の1994年、福島県立図書館「佐藤文庫」 にある参謀本部で編纂された日清戦史の草案から、朝鮮王宮占領についての詳細な記録を見つけました。

 他方、その翌年、1995年、「韓国東学党首魁ノ首級」と墨書されたドクロが、北海道大学の歴史的建造物、古川記念講堂のある研究室で見つかりました。遺骨は韓国に奉還されましたが、この「東学指導者のドクロ」が日本の国立大学の研究室に粗末に放置されていたことは、日本の学問・学知に深刻な反省を迫り、その後の歴史研究にも大きな影響をもたらしました。
 このドクロの由来を調査するために韓国の東学研究者である朴孟洙さん(円光大学校教授)が1997年来日、北海道大学に留学、同大学文学部教授の井上勝生さんたちと共に、東学農民に対して日本政府・日本軍はなにをしたのか、その究明を本格的に始めました。
 おりから私が朝鮮王宮占領事件について『歴史の偽造をただす』(高文研、1997年)を出版し、朴孟洙さん・井上勝生さんとの親交も始まりました。小著は朴孟洙さんが翻訳し韓国の人たちにもよくわかる『景福宮を占領せよ』との書名でソウルで出版されました(プルンヨクサ社、2002年)。

 その後、日韓両国で、日清戦争時の朝鮮人の抗日闘争、東学農民戦争とその日本政府・日本軍による弾圧作戦についての研究がめざましく進みました。日本では井上勝生さんが調査・研究を先導されました。東学農民軍を主力とする朝鮮の抗日闘争を皆殺しにするため日本から急派された後備歩兵第十九大隊の大隊長、南小四郎少佐の子孫を探し出し、南家に伝えられていた小四郎の軍用行李に出会われました。その行李には朝鮮地方官の文書や討伐日本軍の士官や南少佐自身の報告書などが保存されていました。百年の時空を超えたその文書群は南家当主の公正な判断で山口県公文書館に寄贈され公表されました。

 また、後備歩兵第十九大隊を構成していた兵士たちの出身地、四国四県の調査も進められました。特にこの作戦でただ唯一人、戦死した徳島県出身の「杉野虎吉」という兵士がいましたが、井上さんはその墓などを丹念に調査され、そして郷土史家の協力で作戦の実態を詳細に記録したある兵士の「陣中日誌」にめぐり会われたのです。東学農民軍殲滅作戦の戦慄すべき様相が克明に書かれていました。

 抗日に立ち上がった捕虜を銃剣で、号令一下、突き殺すというのは、昭和の戦争、日中全面戦争で多発しましたが、それが明治の戦争・日清戦争のとき、この東学農民軍の殲滅作戦ですでに実行されていたこともこの記録から明らかになりました。
 この事実を、私たち、日本人は忘れてはなりません。

 朴孟洙さんと井上勝生さんと私の三人による『東学農民戦争と日本??もう一つの日清戦争』(高文研、2013年)と、井上勝生さんの力作、『明治日本の植民地支配』(岩波書店、2013年)は、そのもっとも新しい研究成果です。前者は韓国でも翻訳され、まもなく出版されます。
日本人の歴史認識をどう立て直すのか、一つのよすがとして読んでいただければ幸です。

◆中塚 明(なかつか あきら)さんのプロフィール

【略歴】1929年大阪府生。京都大学文学部史学科卒。1958〜93年奈良女子大学教員。
【専門】日本近代史.【著書】『日清戦争の研究』(青木書店、1968年)、『「蹇蹇録」の世界』(みすず書房、1992年)、『歴史の偽造をただす』(高文研、1997年)、井上勝生・朴孟洙と共著『東学農民戦争と日本 −もう一つの日清戦争』(高文研、2013年)ほか。





 
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