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国旗とこの国の姿

2013年12月23日



曽我逸郎さん(長野県中川村長)


 「村長は卒業式や入学式で国旗に一礼をしていないようだが、なぜか」 村の定例議会でこんな一般質問を頂いた。
 「国を誇りに思う気持ちは、誇れる国を創れれば自然に生まれる。そのためには一人ひとりがあるべき国の姿を考え、その実現に向けて行動せねばならない。国旗への一礼を押し付ける空気は、思考や行動を型に嵌め委縮させる。誇れる国にすることを妨げる。かえって日本の足を引っ張る。強制の空気がある内は一礼を控えたい。」 そんな答弁をした。
 村のホームページにも掲載したところ、新聞などで取り上げられ、反響もあった。なかでも興味深かったのは、こんな電話だ。
 「みんなで議論し批判し合い考えを深めるなど、直接民主主義であり幼稚で愚かだ。大衆は国や社会の事など興味はなく、興味があっても知識がない。選挙で多数を取った政治のプロが上意下達で統治する。それが民主主義だ。」
 非常な違和感を覚えた。しかし、この人物が、大衆が主体的に考え意見を言うようになることを恐れていることは分かった。
 東京電力による放射能災害を契機に、政府および統治側のメディア(テレビ、全国紙)に対する不信感は急拡大した。コントロールされていない情報がネットなどで拡散し、先の人物の言う「直接民主主義」的な状況が実質的に生まれている。旧来とは違う新しいタイプのデモも拡大している。問題意識は深まり、この国を真に支配しているのは何者なのか、そんな疑問を抱く国民も増えてきた。国民は目覚めつつあり、「戦前ばかりか敗戦後も、国民が真に主権を手にしたことは一度もなかったのではないか。形はともあれ、日本は実態において国民主権国家と言えるのか。」そんな疑念が生じている。
 特定秘密保護法が先般あわてて可決されたのは、この動きに怯えた反応だと思う。目覚めかけた国民をなんとかこれまでどおり上意下達で統治し続けようする焦りの現れだ。国民から知識、情報を奪い、考えることを奪おうとしている。今後も今までのやり方が通用するのか、それとも心から誇れる下意上達の国民主権国家を生みだすことができるのか、日本は今大きな岐路にある。例えしばらく上意下達の統治が続いたとしても、目覚めかけた国民を力ずくで寝かしつけることはできない。何度も波は押し寄せ、潮は引いてもまた満ちる。フランスにおいては、国民が主権を安定して手にするまで、バスティーユ襲撃からジャコバン派の独裁、ナポレオンの帝政、王政復古などなど第三共和政に辿り着くまでに90年近い年月がかかった。日本は仮に敗戦から数えれば約70年だ。流血沙汰はご免蒙るが、今後も様々な紆余曲折があろう。そもそも主権とは、手に入れても盗まれないようずっとしっかり身につけていなければならないものだ。腰を据えて、統治側に対抗し続けていくしかない。つまり、学び、意見を表明し、批判し合い、行動することだ。でっちあげられた空気に委縮せず、壁を壊しフレッシュな空気に入れ替えるのだ。
 最後に基礎自治体の長として提案がある。市町村では非核平和都市宣言、平和市長会議、脱原発をめざす首長会議などさまざまな取り組みがある。原発再稼働反対やTPP反対、特定秘密保護法反対の決議をした市町村議会も多い。オセロゲームの盤面が真っ黒にみえても、白い駒をひとつひとつ増やしていけば、パタパタと黒駒は裏返る。都会のデモだけでなく、身近な地方自治においても主権を取り返していけば、国全体の色を変えられる。
 特定秘密保護法の後には、憲法違反の国家安全保障基本法案が用意されている。そこには「基礎自治体の責務」が多数記されている。これにどう対処するか、自治体もまた岐路に立たされようとしている。住民の力が必要だ。

◆曽我逸郎(そが いつろう)さんのプロフィール

1955年九州生まれ、関西育ち。京都大学文学部卒。(株)電通入社。香港勤務などを経て2002年中途退職し、中川村にIターン。2005年5月より中川村長。現在3期目。ライフワークは釈尊の教えの考察





 
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