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今週の一言

 

風営法からダンス規制の撤廃を!

2013年3月25日



中村和雄さん(Let's DANCE法律家の会代表・弁護士)

■ 風営法によるダンス規制
 皆さんは風営法(正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)という法律をご存じでしょうか。1948年に風俗営業取締法として制定されたのがはじまりです。風俗営業に関する営業時間、営業区域などを制限する法律で、@善良の風俗の維持、A清浄な風俗環境の保持、B少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止が規制の目的とされています。
 何が「風俗営業」に該当するかについては、第2条に定義規定があり、「風俗営業」とは、以下のいずれかに該当する営業とされています。
 1 キャバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業
 2 待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
 3 ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業
 4 ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業
 上記のとおり、「 設備を設けて客にダンスをさせる営業」は風俗営業に該当します。ここでは「ダンス」について法律上何らの限定はなく、社交ダンスだけでなく、サルサやヒップホップなど幅広く規制の対象とされているのです。
 風俗営業に該当する営業を営むためには、公安委員会の営業許可が必要となります。許可を取るためには、客室の床面積が66u以上あり、かつダンスをさせる部分がその面積の5分の1以上あることが必要であり、許可を得ても深夜のダンスは禁止です。違反すると、許可の取消、営業停止などの行政処分の他、刑事処分として、200万円以下の罰金、2年以下の懲役などが科されます。

■ 最近の警察による過剰な取締り
 近年、「ダンスをさせる営業許可(風営法2条1、3、4号)がない」などとして、警察当局の摘発が相次ぎました。DJブースやミラーボールを設置した店舗が、「ダンスをさせる意図をもっている」などと警察当局から警告をうけた事例も少なくありません。2012年4月には大阪市北区のクラブ「NOON」が摘発されました。午後9時半過ぎに約20人の客が踊っている最中に、突然客の数を上回る捜査員がなだれ込んできて経営者らを逮捕したのです。長年にわたって無許可営業を黙認していながら突然逮捕というのです。同様の事態は全国各地に広がっています。

■ 憲法違反の人権侵害
 風営法は、営業形態の差はあれいずれも「ダンスをさせ」る営業を風俗営業とし、これを規制対象として規定しています。そこにいう「ダンス」とは警察庁によれば「男女の享楽的雰囲気を過度に醸成させるダンス」とされていますが、いかなるダンスがかかる「ダンス」に該当するのかについては、通常の判断能力を有する一般人の理解においても判断がつきかねるものであって、上記「ダンス規制」は、憲法第31条が保障する「法定手続きの保障」に反するものです。
 また、芸術的文化的表現手段の一つとして認められているダンスは、少なくとも現代において、一般的に善良な風俗や清浄な風俗環境、少年の健全育成を害するような危険をはらんでいるとは言えません。にもかかわらず上記のように不明確な基準でしかない「ダンス」を基準にして規制を及ぼそうとすることは、表現の自由(憲法第21条)や営業の自由(憲法第22条)、さらには人格権(憲法第13条)を侵害するものです。
 他方、仮にダンスを伴う営業が善良な風俗等を害することがあるのであれば、他の個別法規によって対応することが十分に可能なのですから、「ダンス」を基準にして規制を及ぼす必要性も存しません。

■ 時代遅れのダンス規制
 今日、「ダンス」は、中学校体育の必修科目にされている。「ダンスさせる場所=風俗営業」とするのは、社会通念上も無理があり時代遅れも甚だしいものです。
 クラブカルチャーは、音楽やアート・映像、ダンスなどの身体表現など、総合的な芸術表現の場として、今日、多くのアーティスト・DJらが、オーディエンスと一体になり、つくりあげてきたものです。民衆の形成する文化を守り育てることの重要性をぜひご理解ください。

■ 法律改正を
 問題を解決するには、上記「ダンス規制」である風営法第2条第1項第1号、同第3号、同第4号を削除するべきです。警察庁は、風営法による規制が必要である理由として、近隣の騒音やごみ、青少年への享楽的風紀の紊乱などをあげています。たしかに一部のクラブなどにおいて近隣からの苦情があったことは事実です。しかし、その対処は,ダンスさせること自体を規制することで行うべきではありません。騒音規制条例や青少年保護条例など本来の法律や条令を適切に運用すれば良いのであり、不十分であればそれらの規制を整備すべきなのです。現在警察によって行われている「風営法違反」の規制は明らかに法の目的を逸脱した濫用行為です。こうした濫用を規制していくために、風営法からダンス規制を削除することが不可欠なのです。
 わが国の芸術・文化活動の発展のために、多くの読者の皆さんに風営法改正の必要性をご理解頂ければ幸いです。

◆中村和雄(なかむら かずお)さんのプロフィール

弁護士(京都・市民共同法律事務所) 労働者の側に立って多数の労働事件に関与労働事件のほか、行政事件、公害事件も数多く手懸ける。
京都大学法科大学院客員教授・龍谷大学法科大学院客員教授を歴任
著書として、『「非正規」をなくす方法』(新日本出版社、共著)、『労働と貧困』(あけび書房、共著)、『さらば!同和中毒都市』(かもがわ出版)、『水俣病裁判』(かもがわ出版、共著)など。


<法学館憲法研究所事務局から>
法学館憲法研究所はシリーズ「憲法とともに歩む」製作委員会の構成団体として「戦争をしない国 日本」の続編である「STOP戦争への道」を製作し、普及をすすめることにしました。読者の皆様のご参加をお待ちしております。






 
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