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今週の一言

 

『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を』

2013年1月14日



及川善弘さん(映画監督)

 

東京から飛行機で3時間離れた距離の隔たりがそうさせるのか。
いわゆる平和ぼけがそうさせるのか。
基地の街・沖縄が抱える様々な問題を、他人事のように見過ごす人達に、
基地の現状と、それに立ち向かうウチナーンチュのひたむきな姿を、
映画という表現を通してどのように伝えて行けば良いのか—

 当事者意識を持てない人達—それには監督である私自身も含まれる。この映画に関わるまで私は、1959年米軍ジェット機の墜落事故で、18人もの死者と210名もの重軽傷者を出した宮森小学校の事件そのものを知らなかった。また、2004年沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したことも、曖昧な記憶でしか留めていない。日本の面積の0.6%しかない沖縄の地に、米軍施設の7割以上がひしめく理不尽な現状にも、正面から向き合う事なく過ごしてきた。


(C)2012年 映画「ひまわり」製作委員会

 1月末、製作準備のため初めて沖縄の地を踏む。そして那覇から名護までをロケハンで回った。まるで基地の隙間を這うように道路が敷かれ、基地の間隙を縫って、窮屈そうに街並が存在している—まさに『基地の街』そのものだった。
 『在日米軍基地の7割以上が沖縄県に集中する現状』について、本土の人間はどのように感じているのか—昨年発表された世論調査では「不平等」という回答が全国調査で33%、沖縄では69%という結果だった。遠く離れた沖縄の問題であり、一線を引いて思考停止。そんな本土の姿が浮き彫りにされていた。

 大学生やOB、辺野古テント村、爆音訴訟、元基地労働者などの方々に会い、シナリオの取材を重ねた。米兵の犯罪が地位協定の厚い壁に庇護される事、豊かだった辺野古の海が、キャンプシュワブ設置後は死んだ海になった事、早朝や夜間の軍用機離発着による健康被害など、口々に語ってくれた。繰り返し摘発し、窮状を訴えても、跳ね返され、出口が見えない毎日がそこにあった。
 1970年のコザ騒動について、関係者の話を聞いた。当時の琉球警察には捜査権がなく、加害者の米兵が基地に逃げ込めば、手出し出来ない状況にあった。そんな中、米兵が起こした人身事故が切っ掛けとなり、ずっと耐え忍んで来たウチナーンチュが初めて行動に出て、抗議の意志を示した。それがコザ騒動だ。通り掛かった米兵の車両を次々に停めて放火。しかしながら殺戮だけは避けようと米兵を降ろし、安全な方向に逃がしたのだという。私は幼い頃、その事件を報じたニュースを記憶している。車が何台も炎上する様子や、快哉を叫ぶ沖縄の群衆の姿に恐怖すら覚えた。しかしそのコザ騒動も、一歩踏み込んでその背景を知ると、全く異なった出来事であった。

 闘いを続けて来た中高年層は口を揃えるように、次の若い世代にどうバトンを繋いで行くのかが問題だと語っていた。片や若者側は基地の問題をどのように捉えているのか—生まれた時から存在する基地に対しては別に抵抗はない、という声があった。その一方、自分の根っことしての平和問題を突き詰めようと、平和学のゼミで学ぶ者もいた。そしてヘリ墜落事故があった沖国大では、事件を風化させない為に、学生達がコンサートを開催。平和問題を大勢にアピールした取り組みが過去にあったという。型通りのシュプレヒコールや抗議集会ではなく、コンサートで平和を訴える−そこが非常に興味深かった。「若い世代にどう繋いで行くか」−その糸口が見えたような気がした。
 沖縄の闘いの歴史は、三線やカチャーシーなどの音楽に支えられて来た。ならば、この作品のヤマ場は、平和を訴える為にコンサートを立ち上げ、その実現に向け、奮闘する若者たちの姿だ。そうイメージが固まった。

 災害や事故は他人には起こっても、自分には降りかからないと考える人が多い。そんな傾向を『楽観バイアス』と言う。ならばこそ、だからこそ映画の力を訴えたい。映画は特定の人間の営みや葛藤をドラマとして描く。その動き、表情、台詞から観客は次の展開を読み取り、登場人物に感情移入していく。『ひまわり』は、沖縄の悲劇に心を閉ざした良太が主人公である。彼が、若者なりのアプローチで基地問題に取り組む孫・琉一と、その仲間達と関わる中で、心の封印を解き、自分の言葉で平和への想いを語り始めるまでを描く。そんな良太の姿に自分を重ね、もしも自分がその場に居たら、という想像力が働けば−沖縄の基地問題を本土に置き換え、もしも我が事であったら、という想像力が働けば−。一人でも多くの方々に、平和についての想像力を深めて頂ければ幸いだ。
 沖縄の闘いはこれからも続く。見守るだけではなく、共感してほしい。問題意識を共有してほしい。いつの日からか闘うことを止めてしまった私達が、気高い沖縄の人々の闘いから学ぶものは、決して少なくないはずだから。

【映画情報】
監督:及川善弘
脚本:大城貞俊/山田耕大
キャスト:長塚京三/須賀健太/能年玲奈/福田沙紀
上映:1月26日(土)より新宿武蔵野館他全国順次上映
公式HP

◆及川善弘(おいかわ よしひろ)さんのプロフィール

1958年青森県生まれ。1982年に早稲田大学教育学部を卒業後にっかつ撮影所演出部に入り、加藤彰に師事。助監督として「ラブ・ゲームは終わらない」や「砂の上のロビンソン」に携わる。主な監督作品には「夏のページ」(90年)「「紅の拳銃」よ永遠に」(2000年)がある。日本映画監督協会会員、城西国際大学教員。


<法学館憲法研究所事務局から>
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