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今週の一言

 

シングルマザーは今

2012年12月17日



赤石千衣子さん(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長) 

 私たちしんぐるまざあず・ふぉーらむの事務所は週に1回電話相談を行っているが、そこには、さまざまな相談が寄せられる。離婚したいが調停や手続きはどうしたらいいのか、仕事がみつからない、仲間がほしい、といった相談から、子育ての悩みまでさまざまな相談が寄せられる。
 私自身も非婚のシングルマザーだ(った)が、今シングルマザーが置かれている状況は20年前よりも悪化しているのではないか。

2世帯に1世帯が貧困

 2012年9月に発表された全国母子世帯等調査結果によると、日本の母子世帯数は123.8万世帯、父子世帯は22.3万世帯、ひとり親になった理由は離婚によるものが8割と大半である。離婚理由は、司法統計を見ると、性格が合わない、身体的暴力、借金、暴言、異性関係、生活費を渡さない、酒を飲みすぎる、親族との不和などがあげられ(複数回答)、決して安易な離婚をしているとは思えない。
 そして、日本の母子世帯の平均年収は223万円(世帯は293万円)、就労率は世界でも非常に高いほうで80.8%を超えている。しかし半分以上は非正規で働いており、その収入は少ない。日本のひとり親の貧困率は50.4%と、OECDの中でも最悪のレベルで高い。
 日本のシングルマザーが多重的な困難を抱えていることがわかる。
 だとしたら、養育費をもらえばいいではないかと思われるかもしれないが、養育費を取り決めたという人が4割、受け取っていると答えた人が19.7%に過ぎない。しかも額の平均も約4万円に過ぎない。
 シングルマザーの生活費の中で大きな部分を占めるのは、住宅費である。持ち家に住む人はわずかで、賃貸で暮らしているので、月の給料の4割近くが家賃となってしまっている。
 最近気になっているのは、大都市で保育園の待機児童が増えているため、保育園にも預けられず、昼間の仕事もみつからず、夜に働くシングルマザーが増えている印象があることだ。
 また昼間働いたとしても、子どもが大きくなるとダブルワークで働いて、子どもと過ごす時間もわずかしかない。
 貧困とひとくちに言うが、お金がないだけではない。時間もない。健康状態・心の状態も悪化する、そして孤立しているのだ。
 それでもなんとか子どもを育てたいと、約4割が大学進学を希望しているのだ。しかし、教育費を母子世帯の就労収入ではまかないきれないので、貸付金などを利用する。このため母子でかなりの借金を負うことになってしまう。
 雇用状況は年々悪化しているので、さらに追い詰められることになってしまう。
 私たちは、こうしたシングルマザーの孤立を防ぐために、各地でシングルマザーグループ相談会、ほっとサロン等と銘打って、つながり助け合える場つくりを行っている。そこで涙を流しながら自分のつらいことを話し、自分はひとりではない、こんなこともできるかも、とエンパワーされて帰っていく。

児童扶養手当の削減

 では社会はどう対応してきたのだろうか。
 母子世帯に対する援助としては、これまで児童扶養手当という手当がメインだった(死別母子には遺族年金がある)。満額支給で月額約4万円の児童扶養手当と、パートや契約社員などの低賃金をもらって、なんとか家賃を負担して働いてきた。
 ところが、この10数年、政府はこの児童扶養手当すら、切り下げようとしてきた。就労支援に力を入れるから手当を削る、という政策だったが、就労支援はほんのわずかなものばかりで全体のシングルマザーの収入を底上げするようなものではなかったのだ。
 私たちは、5年間受給後の半額を限度に削減という政府の方針をストップさせたが、また、児童扶養手当の削減が迫っているのではないかと危機感をもっている。
 また子育てや教育費は日本ではほとんどが親が負担するのが当たり前の社会である。それがシングルマザーには重くのしかかってきている。
 日本のシングルマザーには、薄いセーフティネットしかなく、ひとりひとりの必死のがんばりと、あるいは家族による援助で、かろうじて子どもを育てるというものなのだったのである。

なぜ放置されてきたのか

 2人に1人が貧困という非常に深刻な状況を、なぜ日本社会は放置してきたのだろうか。@当事者の声が社会に届いていないこと、Aシングルマザーは自分で離婚したのだから自己責任だという考えがあること、B「劣等処遇」を容認する社会の意識があることなどがあると思われる。
 私たちがこの活動を始めていつも歯がゆい思いをするのは、@当事者の声を反映していない団体が当事者団体のように扱われていること、A自己責任論とともにシングルマザーは手当を不正受給しているというようなバッシングや、Bどうせまずしい人たちなのだから、その支援者の待遇も悪くていいだから支援の質も問わないというような考えがまかり通っていることだ。
 また、父子家庭の困難も実は深刻になりつつある(子育てとの両立が困難で低賃金になり、母子にある支援もないか不十分で孤立しやすい)。日本のひとり親の貧困率50.4%は放置していいような数字ではない。
 シングルマザーへの支援が十分で生き生きと暮らせる社会であるならば、社会のみんなも生き生きと暮らせる社会なのである。そのことを多くの人と共有したい。

◆赤石千衣子(あかいし ちえこ)さんのプロフィール

 非婚のシングルマザー。1980年代児童扶養手当が削減されるときに母子家庭のグループに出会う。現在しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。当事者としてシングルマザーの状況を変えようと活動してきた。反貧困ネットワーク副代表。社会的包摂サポートセンター運営委員。東日本大震災女性支援ネットワーク世話人。
 編著に『母子家庭にカンパイ!』『シングルマザーのあなたに 暮らしを乗り切る53の方法』(いずれも現代書館)、『災害支援に女性の視点を!』(岩波ブックレット)ほかがある。2012年10月〜12月に放送された、NHKテレビドラマ「シングルマザーズ」で取材協力を行った。





 
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