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ウイーン国際シンポで沖縄「復帰」40年を問う

2012年11月26日



安里英子さん(沖縄大学非常勤講師) 

 ウイーン大学日本学科主催による「復帰40年沖縄国際学会」が11月1日から3日間ウイーン大学で開催された。沖縄からは琉球大学の我部政明(国際政治)、写真家の石川真生、私を含めて5人が参加した。他に日本からは多田治(社会学)、塩月亮子(文化人類学)氏等が参加し、ヨーロッパからはポーランドやドイツの学者も参加した。

 今年は、沖縄の中で、「復帰」を検証するシンポジュウムや、学術会議などが多く開催された。では、ヨーロッパの人々にとって、沖縄の「復帰」への関心とは何であったのか。彼らにとって沖縄とは何なのか。

 実は今、ヨーロッパでは沖縄研究が盛んに行われている。2006年にはヴェネツイア大学で第5回国際沖縄研究大会が開催され、2010年にヨーゼフ・クラィナー氏や住谷一彦氏の発案で、「国際琉球・沖縄研究学会」が設立されている。

 さて、ウイーンの街といえば、ステファン大教会の広場を中心に、オペラハウス、旧王宮や国立民族博物館、美術館などがあるが、そのステファン広場から徒歩で20分ほどの所にウイーン大学のキャンパスがある。

 沖縄からの報告は、まずはじめに私が、復帰後の沖縄の現状(基地被害や環境破壊、女性と子どもの人権問題など)について行った。我部氏は、日米地位協定のことや広い意味での政治課題など。民俗学の赤嶺政信氏は「祖霊信仰の発生」と題して報告した。

 最も報告の多かったのは言語についてで、ウイーン大学院生で、同大学で日本語を教えている吉村さやか氏は、言語は政治的に変化すると言い、明治政府が「ウチナーグチ(沖縄語)」を禁じたことに対する、言語への政治的暴力を論じた。

 私が最も親しくなったのはポーランドの研究者たちで、そのうちの3人は沖縄に来たことがあり、とりわけスタニスラフ・マイヤー准教授(クラコフのヤギロニア大学)は琉球大学で4年間、琉球の歴史を学んだ。ベアタ・ボホロディチ准教授は、沖縄の市民運動に関心をもち、私にいろいろと質問してきた。またアダム・ミツキュピッチ大学日本研究学科に所属するアルフレドF・マイエビッチ教授は、ロシアの言語学者ニコライ・ネフスキーの研究者であり、琉球弧の島々をすべて回ったという。同教授は琉球の絶滅の危機に瀕している言語について言及するとともに、「ニコライ・ネフスキーの宮古語研究が将来明るい展望をもたらすであろう」と述べ、ネフスキーに関する資料を映像で紹介した。ネフスキーはロシアの言語学者で大正期に宮古島で宮古言語や民謡、物語を聞き取った。帰国後、ソ連下で銃殺されたが、幸いに膨大な資料が残された。ネフスキーの死後100年以上を経過して『宮古のフォークロ』は狩俣繁久ほか主に沖縄の研究者によって翻訳され、刊行された。ポーランドはロシアに占領されたり、歴史的に屈折した感情がある。その点沖縄とよく似ていると思った。

 もとウイーン大学日本研究所の所長で、現在は法政大学の国際戦略機構特別教授であるヨーゼフ・クライナー氏は「戦後沖縄の文化人類学の展開」と題して話された。クライナー氏は数多くの本を出されているが、とりわけ『南西諸島の神観念』(1977年)では、柳田国男らの[沖縄には日本の古層が残されている]という把え方を捨てて、「沖縄には日本本土とは別個の文化層が存在している」と述べている。また「大航海時代に入ってヨーロッパが世界に覇権を広げる16世紀から、ヨーロッパ列強は次々に沖縄(琉球〉に目を向けています。彼らは琉球に影響を及ぼし、琉球もまたヨーロッパの歴史に影響を及ぼしてきているのです」と述べ、歴史のダイナミズムを語っている。

 沖縄が日本に「復帰」して、40年。しかし、米軍基地は居すわったままで、ますます「基地被害」をまき散らしている。ウイーンの旅から戻ってみると異常に我が家の上空をヘリが旋回している。オスプレイかと思いきや、自衛隊のヘリが早朝から訓練している。日米共同統合演習をしているのだ。今、自民党や維新の会は憲法を改悪し、自衛隊の軍隊化を目指している。そうならないことを祈りたい。

◆安里英子(あさと えいこ)さんのプロフィール

1948年、那覇市生まれ。沖縄大学非常勤講師。主な著書に『揺れる聖域』(1990年)、『琉球弧の精神世界』(1999年)、『凌辱されるいのち』(2008年)などがある。CTS阻止闘争や新石垣空港問題にかかわり、90年代には島々の聖地を回り、開発状況をルポした。現在は朝鮮人軍夫を追悼する「NPO法人・沖縄恨之碑の会」の代表もつとめる。





 
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