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沖縄で安保を考える ―― オスプレイ配備を控えて

2012年8月13日



小林武さん(沖縄大学客員教授)

 オスプレイ。それは、米軍の垂直離着陸輸送機MV22の名である。低空を飛翔し、急降下して獲物を捕らえるタカの一種「みさご」を意味する。敵陣営への先制急襲の役割を担う軍用機にふさわしい呼称ではある。しかし、これは、過去6度の墜落事故で36人の兵士の命を奪い、「寡婦製造機」とあだ名される欠陥機である。6月にもフロリダで墜落、7月にはノースカロライナで故障緊急着陸し、そのため米国本土では運用が一時中止されている。
 このような危険満載の「空飛ぶ恥」を、日本では飛ばそうというのである。沖縄、しかも世界一危険な基地とアメリカ自身が認める普天間飛行場に配備する。野田首相は、「オスプレイ配備は、日本がどうしろこうしろと言う問題ではない」と、米国に追従している。どうしてこうなるのか。配備の法的根拠はどこにあるのか。
 問題の根源は、日米安保条約に行き着く。米軍の基地使用を日本全土について認める第6条は、米国が望むだけの軍隊を、望む所に、望む期間だけ駐留させることのできる特権であると解されており、現に、そのように運用されている。安保条約は国内法に優越するものとされ、わが国の航空法上は飛行を許されないオスプレイのような欠陥機も持ち込まれるのである。また、装備の重要な変更や戦闘作戦行動のための基地使用の場合は日本側と事前協議をする、というしくみが交換公文で取り決められた。しかし、その後、それは一度もおこなわれていない。重要な装備変更の典型であるオスプレイ配備についてもなされる気配はない。すなわち、安保条約は、本来、米軍の駐留を許すと同時にそれを規範の制約の下に置くしくみであるが、対米従属姿勢の強い日本政府は、このしくみを動かそうとしないのである。こうして、安保条約は、米側の必要に応じて機能を強化し、今日、米軍の世界規模の軍事的展開に対応できる「日米同盟」と呼ばれるものにまで肥大している。
 沖縄は、1945年3月26日に始まった米軍の上陸と占領で明治憲法の適用が停止され、戦後、1947年5月3日に施行された日本国憲法も沖縄には適用されることなく、沖縄県民が憲法を取り戻したのは、ようやく1972年5月15日の本土復帰によってである。同時に、
安保条約も適用されることとなったが、その実態は政府の呼号した「本土並み返還」とはかけ離れて、基地の重圧は変わることがない。憲法のもとで生きようという沖縄県民の願いは、いつも安保によって阻まれてきた。

 「平和」を語るとき、とくに最近では、それを安全保障と言い換え、そしてその名を自らに冠せた日米「安全保障」条約を、不可欠のものとして持ち出すことがしばしばである。しかし、日米の不対等の軍事同盟によって日本の安全保障をはかる方策を、はたしてこれからも採り続けてよいのであろうか、考えたいものである。
 上に述べた沖縄の歴史と現実から見ても、日米安保は「日本を守る」ためではなく、米軍の世界展開のための機構であることが判明する。オスプレイ配備に代表されるような、米軍のもたらす苦痛を日本国民全体から取り除く、その根本的解決は、安保条約をなくすことによってこそ実現する。日本国憲法は、米国との軍事同盟ではなく、米国を含むすべての国との対等な平和友好の条約を結ぶ途を指し示している。
 安保条約自身が、日米いずれかが終了の意思を相手国に通告すれば1年後に終了するとの規定(10条)を置いていることに、改めて注目したい。日米安保は、けっして、永久不変の「公共財」などではないのである。むしろ、軍事同盟は地球上から姿を消しつつあるのが歴史の趨勢である。今、世界と日本の真の平和のために、安保を考え直す時であると思う。

◆小林 武(こばやし たけし)さんのプロフィール 

1941年京都市生まれ。2011年、南山大学・愛知大学教授を定年退職して後、沖縄に移住。
現在、沖縄大学客員教授。憲法学専攻。法学博士。
主著に、『現代スイス憲法』(法律文化社)、『憲法判例論』(三省堂)、『平和的生存権の弁証』(日本評論社)など。
沖縄で課題としているものは、平和的生存権研究、沖縄憲法史研究、そして基地と人権の訴訟に取り組むこと。





 
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