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今週の一言

 

国家公務員の総人件費2割削減、「小さな政府」は大きな国民負担 

2012年5月14日


岡部勘市さん(日本国家公務員労働組合連合会書記長)

伝わらない国家公務員の生の声

 最近、国家公務員に対しては人事院勧告を無視した大幅な賃下げや新規採用抑制など、国家公務員の労働条件に関わるだけでなく、行政サービスにも深刻な影響を及ぼす政策が次々と実行に移されつつあります。
 メディアの取材もたくさん来ています。著名なワイドショー番組では、1時間も2時間もインタビューを受けたりしますが、実際に使われるのは断片的で10秒程度です。結局、国家公務員や労働組合は既得権益にしがみついていると切り捨てられます。そのため、新聞の投書などを見ても、国家公務員は優遇されているとか、まだまだ削り足りないとかが多いですね。
 私たち国公労連の運動のスローガンは、「国民の中へ、国民とともに」、「憲法をくらしと行政に生かそう」というものですが、力不足で私たちの生の声は国民の皆さんに、まだまだ伝えきれていません。

国家公務員の使命は全体の奉仕者

 私たちの国家公務員の仕事は、憲法の理念を実現することです。憲法というのは、浦部先生もおっしゃっているように、国家に対する国民の指令書のようなものだと思います。憲法は、生存権を保障し福祉国家の建設を命じています。国の役割は、高知の田舎に住んでいても、東京の新宿に住んでいても、同じ水準の行政サービスを受けられるよう、国民の生活や権利を保障することです。それを担うのが、憲法15条2項で謳っている全体の奉仕者としての私たちの仕事です。
 国家公務員の労働組合は、戦後すぐに各省庁で結成された時以来、労働条件の改善とともに行政の民主化を大きな目的としています。
 しかし、90年代後半位からの急進的な構造改革による悪影響がここにきて一挙に吹き出していると思います。「小さな政府」、「官から民へ」、「中央から地方へ」などと国の役割を外交、防衛、徴税などに限定して、福祉、教育など直接国民にサービスを提供する部門を民間に開放したり、自治体に移せばいいという流れが顕著になっています。
 また、大阪の橋下市長に代表されるように、公務員を国民全体の奉仕者から時の権力者いいなりの行政ロボットに変えようとする動きも見過ごせません。
 多くの国民の皆さんが抱いている政治に対する不満や不信をうまく取り込んで、公務員対国民、公務員労働者対民間労働者というふうに対立をあおり、身近な公務員に攻撃の矛先を集中させて、自らの思い通りの施策を実行しようとしているのではないでしょうか。

憲法違反の公務員賃下げ特例法

 国家公務員の総人件費を2割削減するとして、いろいろな施策が総動員されています。この2割という数字には何の根拠もありません。
 その一つに、先月の給与支給日から2年間、特例法に基づいて平均7.8%の賃下げが強行されました。当初は震災復興財源などと説明されていましたが、要は消費税増税に対する国民の批判をかわすための露払いに過ぎないと思います。
 そもそも賃金は本来、労使の交渉で決めるべきですが、公務員は労働基本権を制約した代償措置として人事院勧告というルールがあります。しかし、政府はこの現行制度によらずに賃下げを提案し、私たちとの交渉が決裂したにもかかわらず、一方的に法案を国会に提出しました。最終的には、民自公3党の密室談合が繰り返され、議員提案で賃下げ特例法が成立しました。
 これは、すべての労働者に保障されるべき労働基本権を制約し、その代償である人事院勧告に基づかず、私たちとの交渉をも尽くさなかった点で二重三重に憲法を蹂躙するものと言えます。そのため、今月下旬には、憲法違反の特例法によってカットされた賃金の支払いを求める訴訟を提起する準備を進めています。団交権の侵害ということで国公労連も原告になります。
 今回の賃下げは、自治体職員や民間労働者625万人に波及します。長引く景気の低迷やデフレを益々加速させ、最終的には税収も落ち込むという悪循環に陥り、震災の復興にとってもマイナスです。経済政策としても間違っていることを国民の皆さんに訴えたいと思います。逆に、すべての働く人の賃金を上げて消費購買力を高め、内需を拡大して景気回復を図るべきです。

国の出先機関の廃止と新規採用抑制

 「地域主権改革」の名で国の出先機関が廃止されようとしています。当面、ブロック単位で広域連合に丸ごと委譲する動きがあり、近畿と九州などが手を上げています。
 二重行政の解消ということが言われますが、国と地方が役割分担して二重のセーフティネットで国民の生命や財産を守っていると言うべきです。道路や河川の改修や管理は、国が統一的な基準と体制で行ってこそ安全が担保されることは、昨年の東日本大震災や集中豪雨災害の対応でも証明されたのではないでしょうか。
 また、ハローワークを地方に移管し、将来は民間に委託しようという動きもありますが、国の責任で職業紹介するのは国際的にもILO条約で求められています。
 知事会は声高に委譲を求めていますが、住民のための効率的な行政というよりも首長の権限拡大にその目的があるように思います。
 これらは、自民党政権時代に堺屋太一氏らが主導した「この国のかたち」改革で、経済界が主張している道州制に向けた一里塚だと言えます。グローバル化の名のもとに、企業の儲けの自由をどう最大化するかという観点から、統治機構そのものを変えようという大きな狙いがあると思います。
 総人件費削減の一環として、新規採用の大幅抑制も打ち出されています。2013年度は2009年度比56%減で、全省庁で3780人しか採用されません。徴税や海上保安庁など治安・安全部門には重点的に配分されますが、一般行政部門は限りなくゼロに近くなります。
 しかし、社会情勢に対応した新規施策などで業務量は減らないため、劣悪な労働条件の非常勤職員に置き換えたり民間委託という形で対応せざるを得ませんが、あちこちでその弊害が現れています。結局、「小さな政府」は大きな国民負担となるのです。

国民の皆さんと手を携えて

 震災復興を含め、使命感を持って全国の第一線で国家公務員は頑張っているのですが、これだけ働いても賃金は下げる、人は減らす、加えて心ないバッシングが続くと、士気にも影響します。
 私たちの主張には組合未加入の方、管理職などからも正論だとの評価を得ています。そうした人たちのためにも、いい加減な妥協はできません。私たちも生活者ですから、多くの国民の皆さんの要求とも一致するはずです。ともに手を携えて運動を広げたいですね。
 国公労連は、ブログなどネットによる情報発信にも力を入れていますので、是非ご覧になってください。今回の提訴をきっかけに動画も活用する予定です。大いに皆さんの批判もいただきながら、双方向の対話を進めて行きたいと思っています(談)。

◆岡部勘市(おかべ かんいち)さんのプロフィール

1959年9月、高知県生まれ。1978年4月、旧運輸省第三港湾建設局に入職。1986年9月、旧全港建本部に専従休職、88年から書記長。1991年10月、職場復帰。1998年10月、国公労連本部に専従、中央執行委員、書記次長を経て2006年9月から書記長(現職)。




 
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