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「福島で生きる 福島を生かす」

2011年11月28日


煖エ文郎さん(司法書士<福島県司法書士会>)


 平成23年3月11日午後2時46分、福島県民の生き方を大きく揺らがせることになる大災害(東日本大震災)が発生した。地震、津波、原子力発電所の事故による放射能汚染被害、さらにはそれらに起因する風評被害、と福島県全体が多重な被害に遭い、特に原子力発電所の事故による被害は未だ現在進行形である。
 県内での死者は1,800名余り(福島県発表)。そして、多くの県民が未だに県内外で厳しい避難生活をしている。震災発生直後、「とにかく逃げろ!」の声に「どこへ?」とも指示されずに家族で車に乗り込み走り出した原子力発電所近隣住民。家族が心配で家へ戻ろうとしたがために津波に飲み込まれてしまった沿岸住民。これまで、テレビや新聞を通して様々な被害状況が報道されてきた。
 県外への避難者の多くは小さな子どもを育てる家族でもある。放射能という見えない敵から逃れるための親の子どもを守るための選択である。しかし、そこには家族の強い絆を深めながらも仕事のために地元に残る父親と子どもたちとの離れ離れの辛く寂しい生活があるという現実もある。
 子どもたちはこの震災の大きな被害者である。震災後、春、そして夏を迎える中、子どもたちは校庭で走り回ることもできず、大好きなプール泳ぎもできず、春の運動会は秋にようやく時間制限がある中で開催されたところもある。暑い中でも登下校時はマスクに長袖長ズボンという服装で、学校では「3時間ルール」が決められ、屋外での部活動などが制限されてしまったのである。子どもたちのストレス、日々放射線量とにらめっこしながら子どもの行く末を案じる親のストレスはいまだ継続している。
 除染作業ということで、校庭の表土は重機ではがされ、行き場のないその土は校庭の隅っこにブルーシートに覆われて小山のように積まれている光景は異様なものでもある。
 福島県では、8月1日に震災後遅れていた教員の異動が発令された。必死に「生きる」ことに向き合ってきた先生との別れがあったのである。そして、夏休み中に多くの子どもたちが県内外へ転校して行ったのも事実である。
 転校して行った子どもたちは、まさに「風評」により転校先の仲間に「福島県」からというだけで嫌悪され、いじめられているということも聞こえてくる。そして、その意識が教員にもあるということは、事実、私が受けた東日本大震災の避難者向けの電話相談の中でも母親の悲痛な叫びとして聞かされたのである。一時転校し、地元に帰れば、「逃亡者」扱いをする仲間もいるという悩みも聞かされることもある。
そんな子どもたち、そして親の心も落ち着かない中、教育現場では自らも被災し、家族を守らなければならない立場の先生方が疲弊しながらも真摯に子どもたちに向き合っているのである。
 私たち司法書士は、これまで全国各地で「法教育活動」を通じて、これからの我が国を担っていく子どもたちに社会と教室をつなぐ法律実務家として語りかけてきた。今こそ、子どもたちに、そして、疲弊した先生たちにも寄り添い、生きる大切さ、そして相手を思う気持ち、自らの言葉の大切さをともに学ぶ活動をより進めていきたいと思う。人権感覚をまさに現場で学ぶ時なのかもしれない。
 特に、私はここ福島県に生き続け、これからの福島県を再生するための、福島県を生かすためのロードマップを子どもたちとともに、そして教育現場、社会、家庭と様々な場面で描くための議論をし、実践をしていきたいと思っているのである。
 ひとり一人の力は小さくとも、みんなが幸せになれる社会を作り上げるためには、力を合わせる時なのだろう。

◆煖エ文郎(たかはし ぶんろう)さんのプロフィール

福島県司法書士会会長。法務省法教育推進協議会委員。執筆「司法書士の法律教室活動の歩みと今後の課題」(市民と法38−民事法研究会、2006.4)、「法教育の現場から」(法学セミナー−日本評論社、2008.10)ほか




 
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