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日本国憲法公布65年目の朝に

2011年11月7日


丸浜江里子さん(戦後史研究者)


 日本国憲法が公布(1946年11月3日)されてから今日で65年になる。昨日、新聞を読みながら、ふとそのことを考えた。憲法に照らして気になる記事があったからである。昨日(2011年11月2日)の朝夕刊から、3つの記事をひいてみたい。

 @『東京新聞』朝刊に、<九電玄海4号機再稼働>という見出しで、「九州電力が1日、作業手順書の作成ミスによるトラブルで停止した玄海原発(佐賀県玄海町)4号機について午後11時に原子炉を再稼働したと発表した。2日午後に発電を再開する見通し。東京電力福島第一原発の事故後、トラブルで停止した原発の再稼働は初。周辺住民への十分な説明がないまま強行する姿勢に反発が広がりそうだ」(『東京新聞』)とあった。福島第一発電所であれだけの大事故が起こり、未だに数万人が難民状態におかれているのに、定期検査で運転停止中の玄海原発2,3号機の再稼働をめぐり、「やらせメール」が発覚したのに、さらに玄海原発は最も危険な原発であるという指摘があるのにである。

  A『朝日新聞』夕刊に<小規模臨界の可能性 福島2号機 キセノン検出か>として、「東京電力は2日未明、福島第一原発2号機の原子炉内で解けた燃料が核分裂反応を起こしている疑いがあるとして、反応を抑えるためにホウ酸水を注入した。核分裂反応が連鎖的に続く臨界が局所的におこった可能性もある」とあった。「経済産業省原子力安全保安院は『局所的に核分裂の起きている可能性は否定できないが、全体として安定している』と話した」と続いているが、核分裂が起きているのに「安定」していると言えるのか。住民の安全は守れるのか。放射線の被害が数年後、数十年後に出ることを広島・長崎・チェルノブイリは教えているというのに、住民は守られるのか。

 Aを知りながら@の再稼働を許可したとすれば、野田政権は住民の健康・安全、生存権、知る権利、意見を表明する権利について一顧だにしないことを示す。日本国憲法がうたう平和的生存権が奪われ、国民の健康・安全を第一義的に守るべき政府が機能していない=無政府状態ではないのか。命を長らえるためにはこの国を出るしかないのか。

 B『朝日新聞』夕刊に<ベトナム首相と面会>という見出しで、「天皇、皇后両陛下は2日午前、来日中のベトナムのグエン・タン・ズン首相夫妻と皇居・宮殿出会った。宮内庁によると、ズン首相は両陛下をベトナムに正式招待したいとのチュオン・タン・サン国家主席(大統領)の意向を伝えた」とあった。なぜ今、ベトナム首相と天皇が会うのか。原発輸出との関連を思わないわけにはいかない。原発輸出、天皇の国事行為はともに慎重の上にも慎重でなくてはならない問題だろう。

 たった一日の新聞だけからも憲法を軽視する現政権の危うい状況が浮かび上がる。憲法には「権力は国民の代表者がこれを行使し」とあるが、その前提に「そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その福利は国民がこれを享受する」(前文)と定めている。また、「健康で文化的な」生活を営む権利(25条)、天皇は「国政に関する権能を有しない」(1条)と明確に定めている。それらを無視することは決して許されない。

 夕刊には<元広島平和記念資料館長 高橋昭博さん死去> という記事もあった。核・放射線による被害を過小評価する現政権の施策は、爆心地から1.4キロで被爆し大やけどをおい、その後、一貫して被爆者運動に奮闘した高橋さんはじめ、原爆の被害に苦しんできた被爆者の意思を踏みにじるものでもある。

 憲法公布65年目の朝に国民主権・基本的人権の尊重・平和主義という日本国憲法の理念の重要性をかみしめつつ、現政権に対する危惧を深めている。ともに警鐘を鳴らしたい。

◆丸浜江里子(まるはまえりこさん)のプロフィール 

横浜市立大学卒。公立中学校を退職後、杉並区の中学校社会科教科書採択問題に直面し、教科書をめぐる住民運動に参加した。明治大学大学院に進学し、杉並区で1954年に起こった原水爆禁止署名運動の研究を始め、第1回平塚らいてう賞奨励賞を受賞した。これまでの研究をまとめ、今春、『原水禁署名運動の誕生―東京・杉並の住民パワーと水脈』(凱風社、2011年)を上梓した。


<法学館憲法研究所事務局より>
 丸浜江里子さんの近著『原水禁署名運動の誕生―東京・杉並の住民パワーと水脈』については下記をご覧下さい。
 http://www.gaifu.co.jp/books/ISBN978-4-7736-3505-8.html



 
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