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憲法96条改正の動きと映画「『太陽と月と』〜私たちの憲法の人々の情熱〜」

2011年9月5日


福原 進さん(映画監督)


 それは、今年6月7日のことです。
 東日本大震災と福島原発で、日本中がその復興と終息を願い心を痛めている渦中のことです。国会議員によるある集会がもたれたのです。私には、まさに、どさくさにまぎれての出来事としか思えませんでした。大新聞をはじめほとんどのメディアが、小さくしか扱わなかったので、このコラムの読者諸兄でもお気づきにならなかった方も多いのではないかと思います。96条改正議連こと「憲法96条改正を目指す議員連盟」の設立総会が、私たちの映画「太陽と月と」の最初の試写会場と同じ永田町の憲政記念館で開かれたのです。社民党と共産党を除く政党から、100名を超える国会議員が集まったといいます。

 第96条(憲法改正の手続、その公布)
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 日本国憲法は、改正にあたっての手続きをこのように定めています。
 映画の製作時、憲法を何度か読み返すうちに、この条文が安全弁のように置かれていることに気づきました。9条はじめ各種の自由権や社会権など重要な条文を護る役割を持つ96条に、目を行き届けることが大切だと思ったのです。改正議連は、三分の二以上を、両院の二分の一の賛成にしようというのです。戦後60年にわたる自民党政権下において、何度か改正を目指す動きが頓挫したのも、「三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議」がネックの一つになっていたことは疑いありません。この条項は、改正を目指す勢力にとっては、大きな壁。護る側にとっては、大きな砦です。

 映画「太陽と月と」〜私たちの憲法の人々の情熱〜は、民主的な思想の結晶ともいえる日本国憲法とそこに流れる精神の系譜を、グローバルな視野で描いた二部構成の映画です。
 第一部は、明治期の日本で生まれた2つの憲法草案(五日市憲法草案と大日本国国憲案)の起草に傾けた千葉卓三郎や植木枝盛らの情熱と民主的な法律遺産を、第二部は、ポツダム宣言受諾に始まる戦後のGHQ統治下で行われた新憲法の制定が、千葉や植木らの思想を継承し、鈴木安蔵ら憲法研究会案を踏まえたGHQの法律家たちの作業で実現したことを、新資料と新研究を基に描いています。こうして生まれた私たちの憲法は、GHQの一方的な押しつけではなく、人類の永年にわたる流血や思索の果てに得た叡智と深い精神性を持つ三大原理(基本的人権の尊重、国民主権、平和主義)に結晶しています。

 映画の企画、製作に踏み切った4年前、当時の安倍晋三首相は「戦後レジームからの脱却」を宣言。唐突に「日本国憲法の改正手続に関する法律案」を提出。あっという間に成立させました。通称「国民投票法」は、こうして昨年4月に施行されました。151にものぼる条文に書かれている細部の問題はとりあえず置いておいて、その後、当のご本人は健康を理由に辞任。これにリンクするのが96条の改正です。憲法改正は、手続法という搦め手からではなく、正面から正々堂々と論議しなければならない問題です。私には、改正議連の国会議員の方々の行動が、どこまで現憲法の本質を理解した上でのことなのか…不安でなりません。「太陽と月と」は、こういう事態を予測し、日本国憲法の正しい成立過程を、より多くの方々に知っていただきたいという思いで製作しました。日本国憲法の立憲精神に立ち返ることなしに、国の復興も原発問題解決の明日もありえないと思うのです。

<映画「太陽と月と」〜私たちの憲法の人々の情熱〜 上映予定>
10月22日(土)小金井市民交流センター(13時30分開場、14時10分開映、前売券1000円、当日券1200円)
10月29日(土)佐倉市美術館ホール(14時開映、文書費500円)
12月10日(土)千葉市生涯学習センターホール(13時30分開場、13時45分開映、入場料1000円、大学生500円、高校生以下は無料)
(詳細は、映画プロデューサー峯岸(090-7902-1955)までお問い合わせください)

◆福原進(ふくはらすすむ)さんのプロフィール

中央大学法学部法律学科卒業後、製作プロダクションの監督助手を経て独立。フリーの映画監督として、多角的に映像演出の活動を続ける。監督活動のかたわら、帝京平成大学で映像関係の講師を務めている。日本映画監督協会員。
主な作品歴
劇映画:「いのちの海」「少年と星と自転車」
大型映像:「大地の詩」「ライン不思議な冒険」「Run for The Sun」
TV番組:「大英博物館・三部作」「ボストン美術館物語」「正倉院・シルクロードの終着駅」
ドキュメンタリー映画:「生命の水」「天佑の大皿・人間国宝近藤悠三の世界」「国際連合のはたらき」「シベリアの大地に」「楽しさいっぱい 郷土の音楽」「世界遺産シリーズ」「歌舞伎俳優・中村勘九郎の世界」「太陽と月と」




 
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