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浜岡原発をついに止めた!!

2011年5月30日


河合弘之さん(浜岡原発差止訴訟弁護団長)


 日本は地震大国です。地球上の地震動の約10%がこの狭い日本の国土に集中しています。世界平均の150倍の率で地震が発生しているのです。それに伴って巨大津波が発生します。だから、日本だけは原子力発電所を作ってはいけない国なのです。日本の原発は世界に冠たる危険性を持っているのです。

その中でも特に危険なのが浜岡原発です。静岡県御前崎市にある浜岡原発附近では「30年以内に87%の確率でマグニチュード8前後の巨大地震と巨大津波が発生する」と公式に発表されているのです。私達はこの危険が切迫している浜岡原発を差し止める訴訟を2002年4月に提起しました。この訴訟の主な争点は、@予想される地震の大きさ、A老朽化、B安全審査指針の是非でした。私達は@マグニチュード9が来るおそれがある、A老朽化が進んでおり地震で破壊するおそれがある、B非常用ディーゼル発電機2台が同時に故障するなど、全電源が長時間喪失して重大事故になるおそれがある、C浜岡原発が重大事故をおこせば北東わずか180qにある首都圏が壊滅し、国の機能が喪失すると主張しました。

 それに対し、中部電力は@マグニチュード8.5以上は考えなくてよい、A老朽化は進んでいないし、仮に有ってもいつも修理しているから大丈夫、B非常用ディーゼル発電機が2台同時に故障することは考えない。そのようなことを考えたらきりがないので割り切らないと凡そモノ造りはできない、C首都機能壊滅などという仮想の主張には答弁不要と答えました。そして静岡地方裁判所は中部電力の主張を全面的に認めて私達の請求を棄却する判決をしました(2007年10月26日)。

 しかし、今年3月11日に発生した東日本大震災のマグニチュードは想定を遙かに超えた9でした。そして、福島第一原発の非常用ディーゼル発電機は2台(原子炉各1機に各2台)とも津波で故障し、長時間、全電源喪失が続き重大事故になりました。中部電力と裁判所の主張・認定が完全に否定され、私達が警告していたとおりのことになってしまったのです。

 この福島第一原発の重大事故を鎮圧する総指揮者は菅首相です。今回の福島第一原発の苛酷事故は大変に複雑かつ深刻で、これの鎮圧方法が分かっている人は世界中のどこにもいません。収束へのロードマップが描ける人は世界中のどこにもいないのです。そのことが今回の事故の本当の意味での恐ろしさなのです。分からないことの指揮を執らされる菅首相の恐怖は察して余りあります。

 原発苛酷事故の底知れぬ恐ろしさを体感した菅首相は浜岡原発の全機停止を断行しました。歴史的な英断です。この英断は私達が訴訟で訴え続けた浜岡原発の危険性が官邸に直接・間接に伝わって圧力をかけたことの成果でもあります。訴訟にはそういう効果があります。訴訟外の闘争(例えばデモや集会)は行政やマスメディアに黙殺され応答されないことが多いのですが、訴訟はそうはいきません。裁判所は必ず判決という答えを出さなければならず、メディアはそれを報道し、政府や行政もそれを注目するのです。勿論、大衆運動は最も重要ですが、それと協働する裁判の威力も馬鹿にならないのです。社会変革における訴訟、それを担う弁護士の役割は重要です。

 浜岡原発差止訴訟の控訴審は東京高等裁判所第11民事部に係属中です。福島第一原発の苛酷事故によって裁判官の考え方もがらっと変わったように見えます。目の色が変わってきたと言っても過言ではありません。中部電力は完全には諦めていなくて、津波対策工事が終わったら運転再開する姿勢を崩していません。私達は浜岡原発を廃炉に追い込んで「将来の禍根」を断たなければなりません。そのために福島第一原発の事故の全容とそこから学ぶべき教訓を立証することが控訴審でのこれからの主要課題となります。

 私は浜岡原発を突破口として日本の全原発を廃炉に追い込みたいと思っています。そのためには「全国脱原発弁護団」のような組織を立ち上げたいと考えています。日本を原発のない、安心して暮らせる幸せな国にしたい弁護士、修習生、受験生の方々は是非参加して下さい。

 なお、浜岡原発差止訴訟のもっと詳しい報告は「脱原発」(青志社刊)に載っていますので関心のある方はご覧下さい。

◆河合弘之(かわいひろゆき)さんのプロフィール

昭和19年4月18日生。昭和45年4月第二東京弁護士会登録。昭和47年4月さくら共同法律事務所開設。中国残留孤児の国籍取得を支援する会会長(1250人の国籍を取得)。NPO法人フィリピン日系人リーガルサポートセンター代表理事(比国残留日本人800人の国籍取得に尽力中)。NPO法人環境エネルギー政策研究所監事(自然エネルギー推進)。認定NPO法人高木仁三郎市民科学基金代表理事。浜岡原発差止訴訟弁護団長。





 
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