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福島原発事故の現状とこれからの課題

2011年5月2日


舘野淳さん(核・エネルギー問題情報センター事務局長)


福島原発事故は危機的な状況が続いている

 新聞・テレビは福島原発事故は小康状態だと説明しています。しかし、油断していると更に危機的な状態になると思います。
 まず、炉心から崩壊熱が発生しています。冷却を少しでも怠ると炉心溶融が進み、融解物で炉の底が抜ける可能性があります。炉に水を入れただけではダメで、恒常的に冷すには水を循環させなければなりません。しかし、水が圧力容器の底から漏れていると考えられ、循環システムを作れません。格納容器を全部水漬けにするという案も聞こえてきますが、そうすると強い余震で格納容器が壊れるおそれがあります。また、高濃度の放射性物質を含む廃液の処理方法にめどが立たずあたふたしていますが、地下汚染が懸念されます。さらに、水の分解で発生する水素が危険です。
 このように、今は熱、放射能、水素の三つの敵との戦いの様相を呈しています。このいずれか一つでも取り扱いを間違えると、破局的な結果が訪れます。また破局的結果を避けられたとしても、水の循環システムを確立するまで数ヶ月はかかり、その間にも放射能汚染は拡大します。収束した暁にも巨大な負の遺産が残ります。三つの敵にどう対応するか、きちんとした戦略が見えません。

原発利用について新しい国民的合意の形成を

 事故が収束していない段階において事故から何を学ぶべきかを論じるのは時期尚早の感がありますが、中間報告的に述べます。
 事故が一段落した段階で、原発利用の可否について、国論を二分する論争が起きるでしょう。その中で「原発絶対反対」、逆に「原発をやめればエネルギーをめぐる戦争が起きる。推進すべきだ」という対立では結局は現状を維持し改善されない結果に終わるでしょう。私たちがなすべきは、具体的に問題点を把握し、実現可能性のある政策を提起することです。これまで、エネルギー問題に対する国民の理解、関心は低かったと言えるでしょう。今回の事故は国民的合意を形成するための好機です。

当面実施すべきこと

 この観点に立って、当面実施すべきことは以下の3点です。
 @大地震、津波の予想される立地点の危険な原発を廃止すること。
 A老朽化した、また古い設計の原発を廃止すること。
 B今の原発行政は最終責任を誰が取るかはっきりしません。規制当局は研究能力も持っていません。これら原発行政を抜本的に改革して原発を規制する当局と推進する当局を分離することが不可欠です。そのためには、産官学癒着体制を解体する必要があります。
 これら3点を実施することは実は非常に難しいと思います。強い世論の後押しが必要です。

長中期的措置

 以上の措置を採る中で原子力利用の可否が討論されることになりますが、もし今後も利用を継続するとするならば、以下の措置が必要になります。
 @現在の原子炉技術システムの抜本的改良と固有安全炉の研究開発。
 A国際的安全規制機関の設立。
 B東京電力をはじめとする電力会社の組織的再編。今回の事故の中で、東電の危機管理能力・事故対応能力のなさが目立ちました。能力のない者に危険なものを扱わせることは許されません。原則として、一般電力生産会社、原子力発電会社、配電会社に3分割して後2者は全国的に統合すべきです。
 C今回の事故からも分かるように、安全確保のためのコストをかけることは絶対に必要ですが、かけ過ぎると株主から反発を受けます。しかし、コストをかけなければ却って莫大な経済的損失を招くことを理解させ、安全確保を図るべきです。事故の責任ついてもナァナァ主義でなく、東電の経済的責任をきちんと追及することが必要です。そうでないと、また同じことが起きる可能性があります。原子力損害賠償法・補償法による国の安易な支援は止めるべきです。但し、被災した方々の救済は急を要しますので、国がまず直接補償し、その分を東電に求償すべきでしょう。
 D自然エネルギーの開発。

産官学癒着体制の打破を

 原子力開発は「自主・民主・公開」の平和利用三原則にしたがって進めることが原子力基本法にも明記されています。ところがこれまで、日本原子力研究所の研究者への言論抑圧事件などに見られるように、この三原則が踏みにじられてきました。その結果、批判的意見を排除した産官学の癒着体制が出来上がりました。この体制が根本から打ち破られない限り、同じような事故は繰り返すと思います。
 (2011年4月26日作成)

◆舘野淳(たてのじゅん)さんのプロフィール

核・エネルギー問題情報センター事務局長。工学博士。核燃料化学。元中央大学教授。元日本原子力研究所研究員。著書に「廃炉時代が始まった」(朝日新聞出版)、「原子力のことがわかる本」(数研出版)、「どうするプルトニウム」(リベルタ出版)(共著)、「徹底解明東海村臨界事故」(新日本出版社)(共著)など。





 
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