法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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「1人1票」は憲法上の原則 −最高裁判決の意義と今後の課題

2011年4月11日


伊藤真(法学館憲法研究所所長・伊藤塾塾長)


 2009年8月に行われた衆議院選挙の効力の無効が争われていた1人1票訴訟で、最高裁判所は、選挙の効力を有効としつつ、違憲状態と判断しました(最高裁大法廷判決2011年3月23日(PDF))。違憲状態判決とは、違憲違法判決と違って国会の不作為を違憲とはしないけれども、裁判の争点になっている1票の不平等については憲法違反を認める判決です。
 すなわち、1票の不平等について、現在の衆議院選挙でとられている「1人別枠方式」は合理性が失われていること、にもかかわらず、1人別枠方式が原因で選挙区間の投票価値の格差が最大で2.304倍に達し、較差2倍以上の選挙区の数も増えている点で憲法の投票価値の平等の要求に違反すると判断しました。
 このように、「1人別枠方式」が不合理な制度であって廃止すべきだという判断を示したことが、この判決の最大のポイントです。
 「1人別枠方式」とは、小選挙区300議席を各都道府県に1議席ずつ配分したうえで、残りを人口比例で割り振る選挙区割りです。どんなに人口が少ない県でも「県の代表」を国会に送り込める反面、人口に比例して議席を配分する際の大きな障害になってきました。そのため、高知3区で1人1票が保障されているのに、北海道では1人0.45票、東京渋谷では1人0.48票、秋田県では1人0.58票しか認められていません。
 憲法は、国会議員を「全国民の代表」と定めています(43条)。国会議員は、国をどうやって守るか、どの国とどう付き合っていくか、誰にどういう税金を払ってもらうかなど、日本全体に関わる問題を決めていくのが仕事だという意味です。地元で選ばれても、国会議員は選ばれた地元の「県の代表」ではなく、全国民の代表だと定めているのです。この判決では、憲法が定めるこのあたりまえのことを認め、その結果、1人別枠方式を憲法違反とした点で画期的な判決です。
 ただ、残念なこともあります。「1人1票」を憲法上の原則と明示したのは、弁護士出身の須藤裁判官をはじめ、15人中3人だけでした。1人1票が守られない選挙で行われた政治は、民主主義政治とは言えません。議員1人の背後にいる有権者の数が違うのですから、その議員が多数決で決めた政治的な決めごとは、国民の多数を反映しているとはいえないからです。民主主義を掲げる日本国憲法が、1人1票の選挙制度を求めていることは明らかなのです。それなのに、1人1票原則に消極的な裁判官がほとんどだったのです。
 幸い憲法は、最高裁判所の裁判官に対する国民審査権を国民に認めています。衆議院選挙の際に、やめさせた方がよい裁判官に×をつける制度です。民主主義が働いていないときに、それを正すのは裁判官の役目ですが、さらにそういう役目を果たさない裁判官を国民が辞めさせる参政権です。ちなみに、次の衆議院選挙の際に国民審査の対象になる裁判官は7人いらっしゃいます。そのなかで、1人1票原則に積極的だったのは須藤裁判官お1人で、残りの6人の方は消極的でした。私なら須藤判事以外の6人に×をつけます。
 選挙権や国民審査権は参政権です。これらの権利をどのように主体的に使いこなすかということ次第で国は変わります。日本は今、東日本大震災とそれに次ぐ原発事故対応のまっただ中にあります。被災地にどういう復興支援をするか、原子力政策を推進するか縮小・廃止するか、リーダーシップを発揮できる内閣を作ることができるかは、他人事ではありません。まさに私たちの生活そのものです。生活そのものを決める権利をいい加減に使ってよいはずはありません。国民審査という参政権を行使するときにも、私たちは主体的に国のあり方を決める態度が求められているのです。

◆伊藤真(いとうまこと)のプロフィール

1958年生まれ。
1995年、憲法を実現する法曹養成のため「伊藤真の司法試験塾」(現在の伊藤塾)を開塾。
2002年、法学館憲法研究所を設立。所長に就任。
2007年、あらためて弁護士登録。法学館法律事務所所長。
2010年、「一人一票実現国民会議」事務局長。
日々発信している情報はこちら。動画メッセージもぜひご覧ください。
【市民向けの憲法関連著書】
『憲法のことが面白いほどわかる本』(中経出版、2000年)
『憲法のしくみがよくわかる本』(中経出版、2001年)  
『伊藤真の明快!日本国憲法』(ナツメ社、2004年)
『高校生からわかる 日本国憲法の論点』(トランスビュー社、2005年)
『憲法の力』(集英社、2008年)
『伊藤真・長倉洋海の日本国憲法』(金曜日、2008年)
『「見てわかる」日本国憲法』(講談社、2008円)
『中高生のための憲法教室』(岩波書店、2009年)
『伊藤真の日本一わかりやすい憲法入門』(中経出版、2009年)
『憲法の知恵ブクロ』(新日本出版、2010年)
『伊藤真の憲法入門』(第4版)(日本評論社、2010年) 





 
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