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「街頭宣伝の自由を守る和歌山の会」の設立と今後の方向

2010年12月27日

小野原聡史さん(「街頭宣伝の自由を守る和歌山の会」代表・弁護士)


1 設立のきっかけ

 和歌山では、2010年10月20日に、「街頭宣伝の自由を守る和歌山の会」を立ち上げました。
 これは、2009年夏頃から、JR和歌山駅前における宣伝カーを使っての街頭宣伝が警察の妨害を受けるようになったからです。
 警察官は、宣伝カーを停車させて宣伝することは、道路使用許可の条件に違反するという理由で、街頭宣伝の妨害をしてきています。
 そこで、許可条件を調べてみたところ、JR和歌山駅前を管轄する和歌山東警察署の場合は、「4 停止しての街頭宣伝を行う場合は、個別に許可をとること。」となっており、警察官はこれを根拠に妨害をしてきているのです。
 ちなみに、以前の許可条件を調べてみると、同じ和歌山東警察署の2006年6月の許可条件では「2 交通の頻繁な道路上で駐車又は停車して放送宣伝をしないこと」となっており、駐停車を全面的に禁止している現在の条件とは明らかに異なっています。
 この条件からいえば、どんなに閑散としたところであろうと停車しての街頭宣伝ができなくなることになり、憲法21条で保障された表現の自由が大きく制限されることになります。
 また、このような条件変更が、警察署長の判断ひとつでどんどんできることになれば、市民の権利保障は根底からぐらつくことになります。
 そこで、この問題を解決するために、宣伝カーを持っている労働組合などの団体、他団体の宣伝カーを借りて街頭宣伝をしている団体や弁護士などが集まって、歩調を合わせて行動をしようということで「街頭宣伝の自由を守る和歌山の会」が誕生したのです。
 結成総会では、日本国民救援会副会長の伊賀カズミさんをお招きして記念講演をしていただき、1987年に大阪で「街頭宣伝の自由確立をめざす各界懇談会」を立ち上げて、それまで宣伝カーの運行にあたって道路使用許可をとっていたのを、許可なしでの運行を勝ち取った経験を学びました。

2 法律的な検討
 和歌山でも弁護士が中心となって、街頭宣伝をめぐる法律問題を検討しました。
 そもそも街頭宣伝は憲法で保障された表現の自由の行使の重要な1形態です。
 これが規制されるためには、他の人権との関係でその規制が必要やむを得ない場合でなければならず、かつ、その制約の程度も必要最小限でなければならないとされています。
 ところで、道路使用許可の法律上の根拠は道路交通法77条1項ですが、ここでは第1号が道路上での作業などによる使用、第2号が道路に工作物を設ける形の使用、第3号が道路に露店や屋台を設ける形での使用、第4号がそれ以外の祭礼やロケーションなど一般交通に著しい影響を及ぼす使用行為などをあげ、これらの場合には警察署長の許可をとらなければならないとされており、同条3項では、許可にあたって、警察署長は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができるとされています。
 そして、和歌山県道路交通法施行細則では、16条で、道路交通法77条1項4号により使用許可が必要な行為として9個の行為を規定していますが、そのうち4号では拡声器、ラジオ、テレビ等の放送、7号では拡声器を用い放送しながら通行することをあげており、拡声器を登載した宣伝カーの運行に道路使用許可が必要な根拠はここに求められるようです。
 ところで、道路交通法の規定と、施行細則の規定を見ると、道路交通法77条1項4号では、祭礼、ロケーションなどを例にあげて、一般交通に著しい影響を及ぼすような行為を許可の対象にしているのに対し、施行細則では、その規定を根拠にして拡声器の使用をあげていることになるのですが、拡声器の使用それ自体が一般交通に著しい影響を及ぼすと言えるのかという点に疑問があります。
 自動車に拡声器を乗せて放送をすること自体で直ちに一般交通に著しい影響を与えるものとは言えないでしょう。
 そうすると、下位の法規である施行細則において上位の法規である道路交通法よりも広範な規制をしていることになりますが、これではそもそも法律が規則に授権した範囲を超えるという意味で違法であると共に、それが表現の自由の制限にあたるという意味で憲法違反になると思われます。

3 警察への質問状の提出

 「街頭宣伝の自由を守る和歌山の会」では、まず警察に対し行動を起こそうということで、和歌山東警察署とそれに隣接する和歌山西警察署に対し、質問状を手渡すことにしました。
 役員会で質問状の内容を検討し、2010年12月15日に両警察署を訪れて質問状を渡すことにしました。
 当日は、会の役員をはじめ20名ほどの人が警察署に行き、代表である私と市川純夫和歌山大学名誉教授、そして事務局が警務課の署員に対し、質問の趣旨を告げて質問書を手渡しました。
 質問事項は2点あり、1点目は拡声器をつけた宣伝カーの宣伝自体が道路交通法77条1項4号に定める行為と考えているのか、2点目は停止しての街頭宣伝を一律に規制していることが表現の自由と道路交通法77条1項に抵触しないのかというものです。
 そして、これについての回答を文書で1ヵ月後である2011年1月15日までにされたいと伝えてきました。

4 今後について
 警察の回答がどうなるのかによりますが、会としてはその後の行動を検討していくことになります。
 ただ、宣伝カーを持っている団体のそれぞれの判断がありますので、会がまとまった方針を出す形になるのか、その点も含めて今後会員や構成団体と協議をしていくことになるでしょう。
(2010年12月22日)




 
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