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松川事件とその教訓について

2010年9月20日

伊部正之さん(福島大学地域創造センター松川資料室研究員)

 

 松川事件は、1949(昭和24)年8月17日の未明に、国鉄東北本線金谷川〜松川間(現在の福島市南部)で発生した旅客列車脱線転覆事件であり、何者かによる線路破壊によって、先頭機関車の乗務員3人が死亡した。松川事件に先立つ7月には国鉄の10万人人員整理が断行され、これに反抗するかのように、5日には下山事件(国鉄総裁失踪怪死事件)、15日には三鷹事件(無人電車暴走事件、6人死亡)が発生していた。こうして巷では、「第二、第三の三鷹事件が起きる」と噂されており、果せるかな、松川事件の発生は、国民の間に大きな衝撃を与えた。

 他方では、民間最大手の東芝でも、首切り・合理化を巡る熾烈な東芝争議が展開されており、会社側は下山事件・三鷹事件を巧みに利用して、民間最強の東芝労連を追い込んでいた。8月17日には、東芝労連に結集する東芝松川工場労組が、工場の切り離しと首切りに反対する24時間ストを決定しており、その日の未明に至近距離で松川事件が発生した。国労福島支部は人員整理後も積極的な組合活動を展開し、近接する東芝松川工場労組とも緊密な協力関係をつづけていた。

 松川事件が発生すると、捜査当局は早々に「2本の幹線と10本位の支線」という犯人像を示唆し、その結果、事件の被疑者として、国労福島支部から10人、東芝松川工場労組関係から10人が逮捕・起訴された。第一審の冒頭で検察側が主張した起訴事実は、この2つの組合が首切りなどへの不満から共謀して線路破壊を行ったというものであった。こうして第一審、第二審では死刑・無期懲役を含む判決が下されたが、事件や判決への疑問に基づく公正裁判と被告支援の運動(松川運動)が盛り上がる中で、最高裁は審理を仙台高裁に差し戻した。差戻審判決では被告全員の無罪(被告は事件と無関係)が宣告され、63年9月12日の最高裁判決は検察側の再上告を棄却して、被告の無罪が最終的に確定した。64年8月17日には時効が成立し、真犯人の追及が放棄された。

 世間ではあまり知られていないが、この時効成立を前にして、元の被告・家族が国を相手に損害賠償裁判を起こした。判決は、元の被告はあらゆる証拠に照らして無実であり、事件に関わる捜査・逮捕・起訴・裁判追行の全体が違法であったと認定した。つまり、松川裁判そのものが国家による意図された冤罪事件として断罪されたのである。

 このように、松川事件・松川裁判はとりわけ国家による冤罪の重大性を教えており、その再発を防ぐために、幾つかの刑事司法改革が導入されているが、なお不十分さを免れていない。その証拠には、今日なお冤罪事件が跡を絶たないからである。その意味でも、松川事件・松川裁判の再検証は、今日なお重要な教訓を与える絶好の題材となっている。
 


「松川資料研究基金」募金のお願い

      福島大学地域連携課

○松川事件資料の保存の必要性

 松川事件は、戦後最大の冤罪事件であり、事件から60年余りの歳月が流れました。これらの記憶を形にとどめ、語り継いでいくことの重要性は今もって大きいものがあり、「松川事件」を風化させてはいけません。福島大学は松川事件現場近くに所在しており、「松川事件」、「松川裁判」や「松川運動」に関する多くの資料を収集しています。
 現在も全国で冤罪事件が起きており、ことあるごとに「松川事件に学べ」とまで言われるほどで、毎年、全国から多くの見学者が「松川資料室」を訪問されています。

○募金のお願い

 福島大学地域創造支援センター「松川資料室」では、松川事件に関連する10万点以上の資料を収蔵しており、大学予算により資料の整理作業を進めておりますが、昨今の逼迫した財政環境の下では、これまでどおりの予算措置は大変厳しくなっております。
 これら戦後史の貴重な資料を「広く今に活かす」ため、多くの方々のご厚志をお願いする次第です。なお、基金のご案内及びお申込み方法については、インターネット上の「福島大学松川資料研究基金」又は「福島大学松川資料室」をご覧ください。

【※お問い合わせ先:福島大学地域連携課 TEL 024-548-8012】

◆伊部 正之(いべ まさゆき)さんのプロフィール

1942年 2月15日  北海道に生まれる。
1971年 4月     福島大学経済学部 助教授
1982年10月     福島大学経済学部 教授
2007年 3月     福島大学経済学部 定年退職
2007年 4月     福島大学名誉教授
2007年 4月     福島大学松川資料室研究員



 
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