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「『子どもの貧困』シンポジウムにぜひご参加下さい」

2010年7月19日

竪 十萌子さん(「子どもの貧困」シンポジウム事務局長・弁護士)

 

――7月24日、埼玉弁護士会主催の「子どもの貧困」シンポジウム企画(PDF)が行なわれるとききました。竪さんは、この企画の事務局長とうかがっていますが、とりくみのきっかけは?
(竪さん)
 今回の「子どもの貧困」シンポジウムは、毎年日弁連(日本弁護士連合会)が行なっている人権擁護大会のプレ企画としてとりくまれています。今年の人権擁護大会シンポジウム分科会のテーマの1つが「子どもの貧困」問題です。10月に行なわれる企画に向けて各単位弁護士会でもこの問題にとりくもうという呼びかけにこたえて、埼玉弁護士会も「子どもの貧困」シンポジウムを行なうことになりました。
 貧困問題を日弁連が正面からとりあげるようになったのは、比較的最近のことです。貧困が深刻化し、かつ可視化されてきたことで、人権問題としても無視できない状況にあるとして、貧困の問題が明確に位置づけられるようになったのだと思います。

――埼玉の企画は、弁護士だけではなく、現場の教職員、ジャーナリストなど多彩な顔ぶれで構成されていますね。
(竪さん)
 はい。基調報告を現役の高校教員が行ない、パネルディスカッションには子どもの権利問題に詳しい弁護士の他、子どもの貧困にかかわってこられた元教員やジャーナリストが参加することになっています。それ以外にも子どもの貧困に関する実態報告も予定しています。これは貧困に直面している当事者からの報告です。深刻な実態をきちんと伝えることが企画の最大の目的なので、やはり当事者の声は欠かせないと考えています。
 もちろん、当事者の方が自らの状況を報告するのには抵抗があります。けれど、私自身この間反貧困ネットワークの活動にかかわっていく中で、人々の前で発言してくださる方とつながることができるようになりました。「子どもの貧困」問題を考える上で、とても重要なことだと思っています。

――多様な側面をもつ貧困問題の中で、今とりわけ“子ども”の貧困に焦点をあてることにはどのような意味があるとお考えですか?
(竪さん)
 今、子どもの7人に1人が貧困状態にあるといわれています。親の貧困がそのまま子どもの貧困になっています。子どもの貧困問題の特徴は、当の子ども自ら声を挙げることがとても難しいというところにあります。ですから、無視されれば完全に無視をされてしまう人権なんですね。これを放置してはいけない、光をあてなければいけない分野だというのが1つ。
 それから、今の状態を放置して子どもの貧困問題をないがしろにすると、何年後かには社会全体として相当大きなコストがかかってしまうだろうということがあります。子どもの分野に今社会的投資をしなければ、社会福祉費はかさみ続け、消費も減り、犯罪が増える可能性もあり、非常に暗い未来が予想されるということです。ですから、今自分が貧困状態にないからといって、関係がないとは決していえない。仮に裕福な世帯であったとしても、その子どもの将来にダイレクトにかかわってくる問題なのです。そういう意味でもきちんと社会全体で考えて、貧困状態の子どもたちが再生されない、貧困の連鎖を生まない社会にしなければと思います。
 私自身も、正直なところ学生時代は貧困問題についてあまりピンと来ていませんでした。しかし反貧困のとりくみにかかわるなかで、いろいろな本を読んだり、仲間と知り合ったり、現状を知る中で何とかしなければならないと思うようになりました。その意味でも、当事者からの声は重要であり、また、今の子どもの貧困が社会的な損失につながるのだという見方は、この問題にかかわる人の幅を大きく広げるものになるのではないかと期待しています。

――法律家として、「子どもの貧困」の問題に関わる意義をどのように感じていらっしゃいますか?
(竪さん)
 実は「子どもの貧困」の分野で、弁護士がどのようにかかわっていけるのかというのは、難しい問題を孕んでいます。未成年の子どもの法定代理人は親ということになりますから、親権者からの依頼があって私たち法律家は子どもの問題にかかわることがほとんどであるため、民事的な問題でダイレクトに子どもの問題につながれるケースは限られています。諸外国では、子ども自身の請求権が認められ、法的な主張として争うことを可能にする流れもあるようですが、日本ではまだそこまでいっていませんから、弁護士としてはどのように子どもの人権を守っていくのか、何ができるか、何をすべきかということが議論・模索されているところだろうと思います。
 例えば、親の貧困が原因で、勉強したくても勉強出来る環境で生活出来ない子ども達、ご飯も充分に食べられていない子ども達、相談出来る大人がいない環境の中で生きている子ども達、家族の生活費を稼ぐためにバイトに明け暮れる高校生達のために、子どもの人権侵害の問題としてどのような法的根拠を見出していくか、法律家として何が出来るのかが弁護士につきつけられている課題だと思います。

――そのような状況を踏まえて、憲法は「貧困問題」にとりくむ運動の中でどのような役割を果たしているとお考えですか?
(竪さん)
 憲法は、問題を裁判のまな板にのせる上での最終的な武器になると思います。この状況は憲法に反している、という主張は運動の拠り所、運動を法的な主張にするための拠り所にもなるので、憲法抜きには本当に議論はできないですよね。司法の場で憲法を持ち出すことの壁はやはりまだ厚い。けれどこの運動を大きくしていくためには、私たちとしては忘れてはいけない視点だと思います。裁判にうったえて、問題を可視化して、運動を盛り上げるという役割を法律家は担っている、それが法律家の使命なのだというふうに思っています。
 今回の企画もその一環です。是非多くの人に参加していただいて、自分自身の問題なのだと実感してもらえたらと思います。

――憲法の理念を現実化していく上でも、重要なとりくみだということがよくわかりました。企画の成功をお祈りします。本日は、お忙しい中貴重なお話を有難うございました。

(聞き手=法学館憲法研究所事務局)

※日弁連人権擁護大会プレシンポジウム「子どもの貧困」
 日時  7月24日(土) 午後1時〜4時
 会場  川口駅前「フレンディア」(キュポ・ラ本館4F)
 入場  無料
 内容  
 基調報告:白鳥 勲さん(埼玉県・公立高校教諭 さいたま教育文化研究所事務局長)
 パネルディスカッション:水島宏明さん(日本テレビ解説委員)・青砥恭さん(埼玉県立高校教諭)・一場順子さん(弁護士)・野村武司さん(弁護士)
 子どもの貧困に関する実態報告

◆竪 十萌子(たて ともこ)さんのプロフィール

現職 埼玉中央法律事務所。弁護士。
中央大学法科大学院卒業(法科大学院1期生)
労働事件や貧困問題、女性問題、刑事事件を多く抱えている。
反貧困ネットワーク埼玉の事務局長、偽装請負事件を追及する弁護団の事務局長等を務める。裁判員制度対象事件及び被害者参加制度の代理人事件も抱えている。


※当研究所は公開研究会「現代の諸問題と憲法」で貧困問題をとりあげ、2009年11月には反貧困ネットワーク事務局長・湯浅誠さんにも講演していただきました。この講演録などを収載した「法学館憲法研究所報」第3号が刊行されましたのでご案内します。
(法学館憲法研究所事務局)


 
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