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憲法に定める「平等」の意味は?

2010年4月26日

古谷洋三さん(一人一票実現国民会議運営委員)

 

 私が一人一票実現国民会議(以下、国民会議)に参加するようになったのは、升永氏が同期入行者に対してメールで呼びかけたことがきっかけであった。投票価値の不平等問題については、海外にいたころから問題意識を持っていたので、良い機会と思い参加させていただくことにした。

●一人一票という「原理」

 日本でもこれまで長きにわたって数多くの定数配分訴訟が行われてきたが、いずれも数倍の格差を容認する判決が出され、いまだに国民の投票価値が差別的に取り扱われている。しかしながら世間では、投票率の方が優先的な問題であると考える人も多く、「一人ひとりが皆同じく1票という権利で政治に参加する」ということを、十分に理解できていないように思われる。

 そもそも民主主義とはどういうものであろうか。古代ギリシアにおける民主政では市民による直接投票が行われ、そこにはもちろん投票価値の格差などはなく、市民の権利は平等であった(女性や奴隷など、身分による差別はあったが)。
 これこそが民主主義の原点であり、原理である。
 日本国憲法もまたその原理を採用しており、主権者である国民の権利は平等であるべしと定めている。
 したがって、一票の価値が損なわれている、つまり、一部の人の投票価値が半分しかなかったり、逆に一部の人が二人分の投票価値を持っているというようなことは、民主主義の原理に適っているとは決して言えないのである。やむを得ず認められる(技術的)格差としては、個人的には10万人に100人程度だと思う。

●日本は民主国家か

 私は、仕事の都合で約23年間を欧米で過ごしたが、日本との間に文化の違いを感じた。農耕文化の日本に対し、あちらは遊牧文化ということなのだろう。個人が主体であり、それぞれが自分の考えを主張する。対して日本は、個人よりも集団を重んじる傾向が強く、良くいえば和を尊重するということだが、同時に他力本願的であり、事なかれ主義、お上の決めたことは正しいという意識を持っているとも言える。

 そうした考え方は裁判官にも共通するのかもしれない。過去の判例を踏襲し、思考停止に陥っていると感じられることも多い。さらに投票価値に関しても、憲法の規定や民主主義の原理に外れた大きな差が生じているにもかかわらず、国(立法府)の定める選挙区割りを容認しており、違憲判断を出すことは極めて稀である。

 欧米流が何でも良いとは思わないが、民主主義というルールを定めたからには、本来あるべき姿(憲法)に従って判断を下すべきなのが裁判所の果たす役割なのではないだろうか。
 現状を見るに、大部分の裁判官は「平等」の本義を全く理解していないと判断せざるを得ない。

 現在のように、民主主義の原理がないがしろにされている状態では、もはや民主国家とは言えず、民主「的」国家に過ぎないと思うのである。

●なぜ国民審査なのか

 選挙制度は、国会によって定められるものであるが、それはまさに自分たちの身分に関わることであり、利害の絡む問題である。それゆえに、自発的な改善はなかなか期待することが難しいと思われる。

 また、裁判所の「違憲判断」を期待したいところであるが、上述したように前例踏襲、事なかれ主義的な判断も見込まれ、大きく期待することは難しい。また、最近の訴訟ではほとんどの高等裁判所において「違憲」ないし「違憲状態」という判決が出されているものの、「2倍」を基準に考えているものが多く、「一人一票」という原理からはまだ遠く離れていると言わざるを得ない。

 このように国や裁判所に十分な期待ができないため、国民の意思を直接的に示す手段として選んだのが「国民審査」である。国民審査には、国会議員選挙のような投票価値の不平等はなく、国民の意思がダイレクトに反映される、一種の国民投票のようなシステムだからである。
 多くの国民が、民主主義の原理であり、基礎となっている「一人一票」を望んでいるという意思を示すことで、裁判所の妥当な判断を求めていきたいと思う。

 しかしここで私は、最高裁判所で「違憲」判決が出された場合に、国会がそれに必ず従うかどうか、ということについて疑問を禁じ得ない。「選挙無効」という判断がなされた場合には、そうした心配はないのかもしれないが、国会議員の議員資格を失わせた場合に起こる実社会の混乱を考えると、裁判所としてもなかなかそこまで踏み切ることは難しいだろう。「違憲ではあるが、選挙自体は有効」という判決が出された場合であっても、国会が裁判所の違憲判断に従わざるをえないような仕組みが、本当はあるべきなのだろうと思う。

 国民会議の呼びかけはこれまで、新聞や雑誌への意見広告掲載や、ホームページを通じて行っているが、まだまだ十分に広められているとはいえない。インターネットを使わない高齢者層にむけてどう発信するかなど、課題は様々であるが、今後も運営委員として、一人一票の実現に向けて、微力ながら力を尽くしたいと思う。

◆古谷洋三(ふるやようぞう)さんのプロフィール

一人一票実現国民会議運営委員
1965年国民会議共同代表の升永氏と同期で都市銀行に入行。
米国(ニューヨーク)、アイルランド(ダブリン)(現地法人社長)での海外勤務が長く、2001年の9・11テロは現地で遭遇、目撃した。
2009年8月、升永氏の呼び掛けに応じて国民会議に参加。



 
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