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朝鮮人と共に歩んだ、上甲米太郎の生き方に学ぶ

2010年4月19日

上甲まち子さん(俳優、上甲米太郎の長女)


―――上甲米太郎さんは戦前から朝鮮の独立を支持し、治安維持法違反で投獄されても主張を変えず、朝鮮と日本の友好関係のために尽くされました。日本国憲法は戦前の日本の朝鮮半島への侵略などを反省する中で生まれたのであり、上甲米太郎さんの活動には日本国憲法の精神に通じるところがあると思います。
 上甲米太郎さんの戦前・戦中の仕事と経緯からお聞かせください。
(上甲まち子さん)
 私の父、上甲米太郎は1902年に愛媛県で生まれました。米太郎は日本の植民地になっていた朝鮮に渡り、小学校の教師になりました。教師になった米太郎は実習で1年生を受け持ちました。その生徒たちの可愛いさにうたれて、教師は自分の天職だと思ったようです。

 ただ、当時の朝鮮人は、日本の支配下で、大変苦しい生活を余儀なくされていました。米太郎が授業の時に、生徒たちに「大化の改新」の話しをしたことがありました。『皇族・諸豪族の私有地・私有民を総て廃止』するとの箇条を教えていて、生徒から「今、ここで出来ないことでしょうか」と問いかけられました。当時の農民は地主の支配に苦しんでいたので、生徒たちは土地を国有にして欲しいと訴えたのです。そのことが米太郎の日記に書かれています。米太郎はこの時から、朝鮮人の生活の苦しさをなんとか解消していきたいと考え始めたようです。
 米太郎は次第に、日本による朝鮮の植民地支配に疑問を持つようになりました。米太郎がクリスチャンで、平等観、人道主義の考え方を持っていたからだったようです。やがて米太郎は社会主義的雑誌「空想から科学へ」「戦旗」、プロレタリア教育誌「新興教育」などを読み始め、朝鮮人の教え子らに読書会への参加を呼びかけるようになっていきました。そのような中で、1930年12月に治安維持法違反で逮捕され、京城(ソウル)の西大門刑務所に収監されました。
 刑期を終えた米太郎は教師に復帰できず、土木労働、保険の外交員、記者などをして暮らさざるを得なくなります。朝鮮に愛着を持ち、朝鮮語に精通した米太郎は、特高警察に監視される生活の中で、朝鮮語が堪能なことを理由に、北海道の炭鉱に強制連行された朝鮮人労働者たちの通訳として動員されます。その後、朝鮮人労働者と共に福岡の三池炭鉱に移りますが、米太郎はいつも苦労する朝鮮人労働者たちをサポートしていました。そのような中で敗戦を迎えることになりました。

―――米太郎さんは、なぜ弾圧に屈せずに主張を貫き通すことができたのでしょうか。
(上甲まち子さん)
 若い時期に教師になった米太郎は朝鮮人の生徒たちを愛し、また生徒たちから慕われ、そして朝鮮人の女性と恋もする中で、日本による朝鮮の植民地支配に疑問を感じ、朝鮮の独立を支持するようになっていきました。刑務所の中でも他の朝鮮人受刑者から「あなたは間違っていない」と励まされています。

―――米太郎さんの戦後の生活・仕事はどうだったのでしょうか。
(上甲まち子さん)
 米太郎は敗戦後まもなく三池炭鉱で解雇されます。米太郎が朝鮮人の世話をよくしていて、朝鮮の人たちから慕われていたことから、会社が米太郎の存在を煙たがっていたのではないかと思われます。
 その後米太郎は、朝鮮人たちが集まっている地区に住みながら、子どもが好きだったことから紙芝居などをしながら生活し、「子どもを守る会」の活動などにたずさわりました。

―――日本による朝鮮の植民地化に反対し、信念を貫いた米太郎さんの生き方から学ぶべきことをどのように考えますか。
(上甲まち子さん)
 「運動は一人から始まる」という言葉があります。どんな運動も最初に主張するのは一人の人間から、ということでしょう。欧米の市民には市民一人ひとりが自分の考えを持ち主張する人が多いと思いますが、日本人の場合はなかなかそうなりません。市民一人ひとりが信念を持って生きていこうとする時、米太郎の生き方に学ぶことは多いように思います。やはり、誰かに何かをしてもらうのではなく、自分が何をするか、ということが常に問われるのではないでしょうか。

―――最後に、朝鮮と日本の友好関係を築き、発展させていく課題についてのお考えをお聞かせください。
(上甲まち子さん)
 南北朝鮮は休戦になっているだけで、まだ戦争状態なのです。南北の統一が早く実現して欲しいと願っています。
 日本と朝鮮の友好関係を築いていくためには、国レベルだけではなく、市民サイドの交流が大きな力になります。日本人はアジアよりも欧米の方に目を向けがちですので、朝鮮との文化交流も重要だと思っています。

―――上甲米太郎さんの仕事と生き方を語り継ぐ重要性がよくわかりました。ありがとうございました。

◆上甲まち子(じょうこう まちこ)さんのプロフィール

俳優(青年劇場所属)。「真珠の首飾り」、「族譜」など多くの舞台で演じる。
2010年4月、『上甲米太郎 −植民地・朝鮮の子どもたちと生きた教師』(共著、大月書店)を上梓。



 
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