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今週の一言

 

今こそイラク戦争の検証を―平和憲法を持つ国のケジメとして

2010年3月8日

志葉 玲さん(フリージャーナリスト)



空爆された住宅地。
03年3月、バグダッドにて撮影



イラク隣国ヨルダンで避難生活を送る難民の少女たち。
一見、元気そうだが目の前で父親を失っている

 連日の空爆で、民家が跡形も無く吹きとばされ、住宅地は巨大なクレーターと化していた。市場には犠牲者達の血の水溜り。現場に集まっていた人々は口々に「これが自由か、これが民主主義か!!」と叫ぶ。消毒薬と、血と膿の混じった臭いがたちこめる病院で少年は、激痛に顔を歪める。レントゲン写真に写るのは、夥しい白い点。全身に食い込んだ、クラスター爆弾の破片だ。少年は呪文のように繰り返しつぶやく。「ブッシュはテロリスト、ブッシュはテロリスト……」と。あれは忘れもしない7年前、イラク戦争開戦直後の日々のこと。日本の多くの人々にとって、イラク戦争は、もはや過去のことかもしれないが、イラクの人々にとっては、あの空爆の日々ですら、その後の困難の始まりにすぎなく、悪夢は今も続いている。米軍の攻撃や占領政策の失敗から起きた内戦などの戦乱から逃れ、今なおイラク国内外で避難生活を送る人々の数は、約450万人。イラクの人口の6分の1だ。イラク保険省によれば、パートナーを失った女性達は約100万人に達し、親を奪われた孤児達は450万人で、その内50万人はストリートチルドレンなのだという。
 日本のメディアや、平和運動の間ですらも、イラク戦争へ関心が薄れていく中、忸怩たる思いを抱えていた私が、「これだ!」と飛びついたのが、イギリスでイラク戦争の検証が始まるというAFP通信の記事だった。なぜ、イギリスが大義なき戦争に突き進んでしまったのか、検証する独立の委員会が昨年7月に発足したというのだ。昨年11月から始まった公聴会では、ブレア前首相など政権中枢にいた者達も証人喚問し、その様子はインターネットで公開している。オランダでも、やはり同国政府のイラク戦争支持・支援を問う検証委員会が設立され、今年1月には「イラク戦争は違法」「政府の戦争支持は誤り」と断じる報告書が提出されているのだ。
 日本でも同じようなことができないか、昨年11月、「イラク戦争なんだったの!?―イラク戦争の検証を求めるネットワーク」が発足した。池田香代子さん(作家・翻訳家)や高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)などが一緒に呼びかけてくれ、永田町の議員会館でキックオフ集会を行う。その後、昨年12月に北海道・札幌でシンポジウムを開催、今年1月に北陸で、今年2月に関西でのチームが結成され、名古屋高裁での「航空自衛隊イラク派遣は違憲」との判決を勝ちとったイラク自衛隊派兵差止め訴訟弁護団とも、協力関係を結ぶ。全国から賛同をいただき、賛同人は現在約600人。この中には、元・派遣村村長の湯浅誠さん、ジャーナリストの江川紹子さんなど著名な方々も含まれ、法学館憲法研究所所長の伊藤真さんも賛同してくださっている。賛同は広く一般に呼びかけており、まだまだ募集中だ。
 私達が求めていることは、三つ。一つは、独立の「検証委員会」を政府が設立し、「イラク戦争支持の政府判断の見直し」「自衛隊イラク派遣の判断の是非」「イラク復興支援への日本の関わり」の3点を検証すること。二つ目は、検証がプロセスも含め最大限公開されること。三つ目は検証の最終報告を受け、首相は国内外に談話を発表、今後の政策にも活かされること。民主党は、イラク戦争に反対し、政府のイラク戦争支持判断や自衛隊派遣の検証を行うべきだと主張してきた。政権交代した今こそ、それを「有言実行」してもらいたい。
 幸い、私達の呼びかけに応じ、国会議員達も動き始めている。有志の議員達が日本のイラク戦争支持や自衛隊イラク派遣の検証を行うよう、鳩山首相に求める署名を集め始め、既に民主・社民の他、共産党や、みんなの党、無所属議員からも署名が集まっている。私達はこうした動きを後押しするため、国会議員の事務所を訪れての働きかけ=ロビイング活動を強化するつもりだ。その一環として、今、「ロビイング代行アクション」というものを行っている。これは、全国の有権者に地元の国会議員に「イラク戦争の検証を行って下さい」とメールやFAXを送ってもらい、送り先の議員の事務所を私達が訪問するというもの。自宅が遠いなどの事情で、永田町までは行けない人々の思いを伝える行動だ。本文をお読みになっている方々にも、地元議員に働きかけていただければ幸いだ。その他、今後の予定としては、かつてのイラク最激戦地ファルージャの住民の招聘や、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)の元委員長ハンス・ブリクス氏を招いての議員勉強会/院内集会などを企画している。こうしたイベント情報は随時HPで告知していくので、是非ご参加いただければと思う。
 日本でイラク戦争支持・支援の検証が行われることの意義は、イラクの人々の犠牲を無駄にしないということだけではない。不透明かかつ強引な当時の日本政府の動きに関し、事実を白日の元に引き出し、責任の所在を明らかにすることは、民主主義国家として重要なケジメであろう。憲法に対する政府のあり方や日米同盟のあり方を問い直すことものでもある。それは、日本の市民にとっても、大きな財産となるはずだ。

★「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」と「明治大学軍縮平和研究所」の
共催で、イラク戦争検証シンポジウムを開催します。

日時:3月21日(日)17:00〜19:30
会場:明治大学 駿河台キャンパス リバティタワーB1F 1001教室
(千代田区神田駿河台1-1)
内容予定:イラク現地の最新情報/イギリスでのイラク検証の動き/自衛隊イラク派遣の検証/対イラク復興支援(ODA))について/国際法・国際人道法から観たイラク戦争
問合せ&詳細:「イラク戦争の検証を求めるネットワーク
e-mail
電話連絡先/090-9328-9861(志葉)

◆志葉 玲(しば れい)さんのプロフィール

 1975年生まれ。大学卒業後、番組制作会社を経て、2002年春から、戦争と平和、環境、人権をテーマにフリーのジャーナリストとして活動を開始する。2002年末に初めて訪れたのをきっかけに、2009年4月まで計7回、イラク現地取材を慣行。2009年11月より、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」事務局長。



 
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