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「希望の原理としてのベーシックインカム」

2010年1月25日

白崎一裕さん(ベーシックインカム・実現を探る会 代表)

 ベーシックインカム(Basic Income、以下BIと略す)という言葉がここのところ良く聞かれるようになった。直訳すれば基礎所得保証ということだ。この基本思想は古くからあり、西欧では、16世紀のトマス・モアや18世紀のトマス・ペインなどに原型があるとされる。それらは、自然権としての所得保証とでもいうべきもので、現在の基本的人権の思想をさらに豊かにするものといってよい。

 BIの原理はいたってシンプルなもので、無条件・個人単位(世帯単位ではなく)・資力調査なしの所得保証のことである。たとえば、毎月8〜15万円のお金が個人個人に支給されていくという制度をイメージしていただきたい。このBIが、急速に注目をあびている理由は、もちろんリーマンショック以来の金融恐慌、そして、その対策に効果をあげるはずの福祉国家の行き詰まりというものがあるだろう。従来の福祉国家は、最終的には、失業者などが経済人間として市場社会に再デビューしてもらうことを目的に福祉的支援をおこなう。しかし、ワーキングプアという言葉に象徴的にあらわれているように、どんなに努力して働いても、暮らしていくための十分な所得が得られないという事実が存在するということは、福祉国家そのものの基盤がゆらいでいることを示しているのではないだろうか。現代人は、その意味において「潜在的失業者」であり、時代は、雇用の保証から所得の保証へとパラダイムチェンジしているのだ(過去、失業対策として極めて「優秀」だったのは、ナチスドイツのアウタルキー政策であることの危険性をもっと認識すべきではないだろうか!)。加えて、雇用に支配されることから解放された真に自由な生のあり方を模索するツールとしてもBIは有効だろう。

 このBIの現段階での論点はほぼ三点に絞られる。第一は、BIの倫理論。これは、主に、BIを支給されたら怠けものが増えて働かなくなるのではないか(フリーライダー論)、人間の基本は働かざるもの食うべからずではないか、という倫理的基礎をめぐる議論。第二は、BIの政治論。これは、BI実現の運動を中心的に担っていくのは誰か?貧困層、地方から、障害者から、フェミニズムから、あるいは、それらの連携をどのようにすすめるのか、という議論。第三に、BIの財源論。BIは良い話には違いない、しかし財源をどうするのか、所得税・消費税・公共通貨・環境税などのプランがあるがどれを選択したらよいのか、という議論である。
 私たち、ベーシックインカム・実現を探る会は、これらの論点を整理し、BI実現のための提言をしていこうとして設立された市民のシンクタンクである。BIを考え、広めていくための基本情報や提言をホームページ、毎週発行のメールマガジンおよびBI入門連続講演会を中心に提供していくことを会の基本活動としている。
 これまで、2008年7月に第一回BI入門の集いを開催し、その後2009年3月に第二回、関曠野さん(思想史)「生きるための経済――なぜ、所得保証と信用の社会化が必要か」、7月に第三回、古山明男さん(教育研究家)「ベーシックインカムのある社会――労働と教育の根本的転換」、12月に第四回、小沢修司さん(福祉財政論、BI研究者)「ベーシックインカムのある社会を構想する――実現の可能性は」という連続講座を開催してきた。今年の3月27日には、同志社大学で開催予定のベーシックインカム日本ネットワーク設立大会分科会(「語りつくそうBI財源論――所得税VS消費税VS公共通貨VS環境税、さ〜〜て、あなたはどれを選ぶ」仮題)を担当する。

 BIは、従来の資本主義VS社会主義という議論の枠組みではなく、分配主義の系譜につらなる全ての人々への希望の原理として今後ますますその重要性を増していくことと思われる。私たちベーシックインカム・実現を探る会もBI実現への一助となる活動を続けていきたい。

▼お問い合せ、〒162-0044東京都新宿区喜久井町20 フォーラム・スリー 気付
 tel.03-5287-4770 fax.03-5287-4771
 e-mail info@bijp.net

◆白崎一裕(しらさきかずひろ)さんのプロフィール

1960年生まれ。教育の自治を求めて扶桑社版歴史・公民教科書採択取り消し裁判(とちぎ教科書裁判)本人訴訟原告活動、地域通貨ナスタ設立、反貧困ネットワーク栃木共同代表などの多様な市民活動に取り組む。活動の中から所得保証の重要性を認識し、現在、ベーシックインカム・実現を探る会 代表。



 
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