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日本国憲法を支える裁判官になりたい

2010年1月11日

守屋克彦さん(東北学院大学教授)

※以下は、当研究所主催連続講演会「日本国憲法と裁判官」第1回講演会(2009年5月22日)での講演の冒頭部分(抄録)です。この講演は当サイトのこちらで動画配信していますので、ぜひご覧下さい。(法学館憲法研究所事務局)


 私は裁判官退職後、仙台弁護士会所属の弁護士をするかたわら、東北学院大学法科大学院で刑事法を担当しております。

 初めに、なぜ私が裁判官を目指したかというあたりからお話していきたいと思います。
 昭和20年の終戦当時、私は、国民学校、今でいう小学校の5年生でした。そのときの通信表(写真.pdf)には、墨が塗られているところがあります。自分の名前の前の肩書きが消されていますが、ここには「副小隊長」とありました。当時の国民学校は軍隊編成をとっており、校長は学徒隊長、クラスの級長だった私は5年3組、第5中隊第3小隊の副隊長という辞令(写真.pdf)をもらっていたわけです。
 それから、前年までの通信表(写真.pdf)には、本土決戦に備えた竹やり訓練、軍事教練に励みなさいということや、近所の神社に毎月必ず参拝し、太平洋戦争開戦日の12月8日には必ず参詣せよといったことが、各家庭への奨励事項として書かれていたわけです。それらが、終戦と同時に墨で消されました。ですから、これは戦争の記録なんですね。そういう時代に私は育ちました。
 小学校卒業と同時に、今の憲法が施行されることになりました。
 新制中学の第1回生のときに弁論大会で入賞した賞状(写真.pdf)もまた、当時を物語る一つの資料となっています。これは平和精神を昂揚する少年少女弁論大会というもので、これを主催した憲法普及会宮城県支部長というのは、宮城県知事です。つまり、当時は、政府・地方自治体が平和精神昂揚ということで、現憲法の普及活動をしていたということの証左です。高等学校に進みますと、『民主主義』という教科書(写真.pdf)が使われました。これには民主主義についての詳細な記述がありました。いまみても、大変価値ある内容を含んでいたと思います。戦災、爆撃を経験し、戦後の教育を受けた最初の世代として、平和主義・民主主義がいかに尊いものであるか、現憲法の価値を実感したわけです。
 その後法律を勉強して、裁判官を目指すことになるわけですけれども、違憲立法審査権の担い手としての裁判官の地位が、私にとってとても魅力的に感じられたのは、こういう教育を受けてきたことに大きな要因があるだろうと思います。自分たちがとても貴重なものとうけとめた日本国憲法の価値を、実際に自分の手で、裁判で活かすような裁判官になってみたい、こういう気持ちが裁判官になろうとする動機になっていました。大学時代は裁判官出身の鴨良弼先生から刑事訴訟法を学び、刑事事件における事実認定の重要性に関心を持つようになりました。その後修習生になってからも、刑事裁判担当教官の事実認定に対する考え方に大変共鳴したということもあり、裁判官を目指そうという気持ちがいっそう強くなりました。

 司法試験合格後任官に至る過程でも、当時の先輩裁判官の方々から薫陶を受けています。当時『裁判批判』という本(写真.pdf)が出され、この中で戦前は大日本帝国憲法下で裁判官をやってこられた方たちが、新憲法の下で裁判をやる資格があるかどうかを座談会で真剣に話し合われています。日本では戦後公職につけなかった人々がいましたが、戦前の裁判官は、治安維持法その他で裁判をしてきたけれども、戦争責任は追及されませんでした。戦前の裁判官がそのまま日本国憲法下の裁判官になってきた、こういう事情がありました。この座談会では、その中で意識改革をすすめなければならない、またどれだけ意識改革ができているかといった問題が扱われています。
 また、戦前の裁判所は司法省の下に従属していて、司法の独立というものはなかったわけですが、この中には、戦前の裁判所で司法権独立運動に携わったという人も何人かおられ、私もそういう裁判官になりたいと憧れを感じました。また任官してからも、裁判官の独立というものを説いてくださった先輩方から大いに影響を受けました。戦後日本国憲法の下で、三権分立の立場から新しい司法をつくりあげようとする裁判官、違憲立法審査権を行使する、独立の気概をもった先輩の裁判官がいるのだと、その人たちと一緒に仕事をしたいと感じさせる雰囲気がありました。
 以上が、私が裁判官を目指すに至った動機、そして任官にいたるまでの経過であり、その後の裁判官人生の原点ともいえるかと思います。・・・・・・

(守屋克彦さんのお話の続きは、配信中の講演映像をご覧下さい。)

◆守屋克彦(もりやかつひこ)さんのプロフィール

1934年生まれ。東京家庭裁判所判事、仙台家庭裁判所判事、仙台高等裁判所判事、仙台高等裁判所秋田支部長等を歴任。2000年4月、東京経済大学現代法学部教授。現在、東北学院大学大学院法務研究科教授・仙台弁護士会弁護士。
「裁判官の身分保障」(勁草書房、1972年)、「少年の非行と教育」(勁草書房、1977年)、「自分の分析と評価」(勁草書房、1988年)、「少年法の課題と展望 第1・2巻」(共著、成文堂、2005年)など少年法、刑事司法に関する著作が多い。

※2010年1月18日、連続講演会「日本国憲法と裁判官」第9回が開催されます。講師は石塚章夫さん・須藤繁さんのお二人です。詳しくはこちら
※これまでの講演会の概要は、こちらで紹介していますので、ご案内します。


 
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