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現代の奴隷制度「外国人研修・技能実習制度」との闘い

2009年12月7日

指宿昭一さん(外国人研修生問題弁護士連絡会共同代表・弁護士)

外国人研修生・技能実習生とは
 外国人研修生は「研修」という資格で日本に入国・在留しているが、実際には建設業、農業、漁業、縫製業、食品加工業など人手不足の分野において、労働諸法令の適用を受けない低賃金労働者として働かされている。「研修」期間は1年で、その期間終了後、一定の要件を満たした場合、在留資格を「特定活動」とする技能実習生として、更に2年間、働かせることができる。技能実習生には労働諸法令の適用があるが、実際には労働諸法令は遵守されていない。
 研修・技能実習生に対しては、低賃金での長時間労働、パスポートの取上げ、外出など日常生活における自由の厳しい制限など、著しい人権侵害が常態化している。受入機関に抗議や要求をした者は、母国に強制的に帰国させられ、数年の年収に匹敵する保証金を没収された上、十数年の年収に匹敵する違約金を請求され、担保に入っている自宅を取り上げられることもある。残業代は最低賃金を遙かに下回る時給300円程度のことも多くある。憲法18条は、奴隷的拘束を禁じ苦役からの自由を保障しているが、不当な「保証金」や「違約金」などの下で、研修・技能実習生に対する「奴隷」的ともいえる労働が行われているのである。

岐阜県の縫製業中国人技能実習生事件
 2007年9月、岐阜の縫製工場で働く4人の中国人技能実習生の女性たちが解雇された。会社が以前から、技能実習生に残業時給を300円しか支払わなかったことが入管に発覚し、研修生・技能実習生の受入が停止されたからだ。彼女たちは、中国で借金をして、多額の費用を支払って、日本に来ているため、そのままでは帰るわけにはいかない。そこで、残業代の不払分の支払を求めて労働組合に加入して交渉した。交渉は決裂し、私が受任して労働審判を申し立てた。これが、私と外国人研修生問題との出会いだった。
 この労働審判では、会社が4人に600万円を支払うという調停が成立した。この労働審判が報道されたことがきっかけとなり、私は、多くの外国人研修生・技能実習生からの相談を受けることになった。「会社に強制的に貯金をさせられ、返してもらえない。」「日本で残業代の支払いを受けて帰国したら、母国で保証金を没収されたうえ、違約金を請求する裁判を起こされて負けてしまい、強制執行で家が取られそうだ。」「作業中に機械で指を落としてしまったら、強制的に帰国させられてしまい、労災申請すらしてくれない。」「日本で技能実習生をやっていた夫が心臓の病気で死亡したが、過労死ではないか疑っている。」「会社の社長から、セクハラを受けているが、文句を言うと、母国に帰されてしまうので、何も言えない。」等々。

研修生の労働者性を認めた判決
 「残業代を請求して交渉していたら、社長が逆ギレして、5人の技能実習生に2700万円の損害賠償を請求する訴訟を提起された。」という事件の相談を受け、受任した。会社に対して残業代を請求する反訴を行い、社長と技能実習生2名の尋問を経て、会社の請求を棄却し、技能実習生らの反訴請求を認める判決を得た。この判決では、初めて研修生の労働者性を認め、労働基準法、最低基準法の適用を認める判断を勝ち取った(三和サービス事件・津地裁四日市支部09.3.18・労働判例983号)。

恥ずべき研修・技能実習制度
 研修生制度は、日本の技術を「発展途上国」に移転するという名目で作られているが、実態は、中小企業が低賃金で使える「未熟練」の外国人労働者を日本に入れ、短期間で確実に帰すための制度として使われている。ここでは、憲法も労働法も機能していない。多くの経営者は、労働法にしたがって残業代を請求されると、「法律にしたがって支払ったら、研修生を使う意味がない。」と言う。外国人労働者を差別し、奴隷のように使う、このような恥ずべき制度を国は温存し、制度を生き延びさせるために若干の小手先的な改善だけを行っている。これが、現在の日本の実態である。
 しかし、研修生・技能実習生達はいつまでも奴隷状態に甘んじてはいない。多くの研修生・技能実習生達は声をあげ、もしくは、あげようとしている。

研修生弁連の闘い
 2007年から、東京、名古屋、長野、熊本等で若手弁護士を中心に、外国人研修生・技能実習生関連の訴訟への取り組みが始まり、情報・意見を交換や政策検討などを行う団体の設立の必要性が感じられたことから、2008年6月1日に東京で外国人研修生問題弁護士連絡会(以下、「研修生弁連」)が設立された。現在、全国に弁護士の会員が約90名、司法修習生の準会員若干名がおり、20件以上の訴訟及び労働審判などに取り組んでいる。
 研修生弁連は、心ある労働組合・市民団体などと連携し、研修生・技能実習生達の闘いを支えていく。そして、この恥ずべき制度の抜本的改革、特に最も悪用されている団体監理型の研修・技能実習制度を廃止に追い込む闘いを進めていく。


◆指宿昭一(いぶすき しょういち)さんのプロフィール

1961年神奈川県生まれ。2007年第二東京弁護士会登録。
外国人研修生問題弁護士連絡会共同代表。
日本労働評議会顧問。日中友好雄鷹会顧問。日本労働弁護団会員。青年法律家協会会員。
著作:「外国人研修生 時給300円の労働者2」共著・外国人研修生権利ネットワーク編集・明石書店



 
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