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人生最後の1票を投じたい 〜小規模施設入居者の参政権保障のために

2009年9月28日

国光哲夫さん(特別養護老人ホームなんぶやすらぎホーム施設長)

 特別養護老人ホームなんぶやすらぎホーム(金沢市弥生3−2−1)は、昨年2008年10月にオープンした、定員40名の金沢市ではじめての「まちなかの小規模特養ホーム」です。
 ホーム入居の皆さんにとっては、今夏の衆議院議員選挙が、初めての選挙となりました。

 石川県選挙管理委員会に、不在者投票所の指定申請を行ったところ「石川県では、定員50名以下の施設は、不在者投票所の指定をしていない」と断られました。理由は「ある程度の規模がないと厳正な投票事務が保障できないから」とのことでした。
 
 やむなく、今回は、地域の保健所に期日前投票をしに行きましたが、期日前投票をできる人は、自ずと限られた人数とならざるを得ませんでした。軽度の認知症の方で、いつも生活しているホーム内の落ち着いた環境なら、正常な判断・意思表示はできるのに、不特定多数の人でごった返す期日前投票所では、パニックになり、受付で自分の生年月日を言えなかったため投票用紙をもらえず、投票できないままホームに帰らざるを得なかった人もありました。
 現行制度では、郵便での投票は、要介護度4以下の方は、認められておらず、身体機能の低下している方々は、期日前投票に行くには多くの困難が伴うのが現実です。
 
 このようなことがあったために、選挙後の9月14日に、県の選挙管理委員会に出向き、「50名以上とする指定基準」の緩和・弾力的運用を求め、以下の申し入れを行いました。

  @総務省も、2007年1月に「統一地方選挙の管理執行について」との通知を出し、不在者投票施設の指定基準について「概ね50人以上の人員を収容できる施設としているが、都道府県の判断で指定できる」と示し、都道府県選管で弾力運用ができる旨を指示している。事実、36都道府県では、定員50名以下でも、不在者投票を認めている。
  A特別養護老人ホームは、確かに、定員50名が「標準定員」であったが、3年前より定員29名以下の「地域密着型介護老人福祉施設」が制度化され、事実上、今後は定員29名以下の小規模な特別養護老人ホームのみの整備となっている。従って、定員50名以下の施設は指定しないならば、今後、県内各地に整備される新しい特別養護老人ホームは、すべからく不在者投票所の指定を受けられないことになる。
  B厳正な投票事務の保障という点では、特養ホームである限り、定員は少なくても、施設長、相談員、事務員は必ず配置されており、実務的に困難することはない。

 県側からは
  1)小規模施設では、厳正な投票事務が保障できない
  2)40人で区切れば39人の施設から、30人で区切れば29人の施設から不満が出て、どこで区切っても不満は出る
  3)ぜひ、期日前投票を利用してほしい
など、ひたすら「現状維持」のための説明に終始しましたが、「次回、開催される選挙管理委員会で、要望のあった旨は報告し検討させていただく」とのお返事をいただきました。

 今回、ホームで不在者投票ができないことを、ある入居者のご家族に説明した際、「次の選挙からは何とか不在者投票ができるように、みんなで声を上げてゆきましょう」とお話しすると、「それまで、お父さんの命があるといいですけどね・・」と話され、ずいぶんとつらい思いをしました。
 「たとえ寝たきりでも、ベットの上からでも、社会とつながっていたい、1票を投じたい」そんな普通の願いに応えてくれる、社会であってほしいと思います。
 投票所などの建物の物理的バリアフリーは、確かにずいぶんと進みましたが、制度のバリアはまだまだ高いことを実感しました。
 最近は、介護の中身については、拘束禁止、自己選択など「人間の尊厳の保持」「人権の尊重」などが、強調されて久しいですが、「施設入居者の参政権保障」という点でも、日本国憲法の「人間の尊厳の保持」「人権の尊重」を貫いてほしいと願っています。


◆国光哲夫(くにみつてつお)さんのプロフィール

1960年生まれ(おとめ座)
「金沢市南部のまちなかに特養ホームを!」の運動を7年続け
2008年より 特別養護老人ホームなんぶやすらぎホーム施設長



 
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