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市民に憲法の大切さを理解してほしい―“憲法を読む会”“越谷九条の会”

2009年9月7日

石河秀夫さん(弁護士・越谷九条の会共同代表)

 

 小泉政権の頃、今から10年ほど前、憲法改正問題が急浮上した時期に、埼玉県越谷地域で市民グループの方が、“憲法を読む会”を始められました。このまま国会で憲法改正論議が独り歩きして、市民がとり残されてしまうのはよくない、まず市民のレベルで憲法問題を正確に理解する活動が必要なのではないか。こういう趣旨で“憲法を読む会”を立ち上げた方の呼びかけに応えて、私も加わりました。
 “憲法を読む会”に共鳴したのは、同じ考えの人だけが集まるのではなく、憲法改正に賛成する人も反対する人も、自民党、民主党、公明党、共産党、社民党、いろいろな立場の垣根を超えて可能な限り幅広く、同じテーブルで勉強し議論しようというスタンスであること。それがとても新鮮であり、魅力を感じたわけですね。立場の異なる相手の現実認識や根拠を、まずよく知ろうという私の問題意識に一致するものでした。
 この集まりも既に100回を超えました。月1回くらいのペースで継続しています。“読む会”では、9条だけではなく、憲法103条までの全条全文を一つひとつ読み合わせ、吟味していった。
 例えば、憲法の103条までの中に、刑事手続規定はその1割近く、10条も占めている。弁護士はよく市民から、何故“悪いやつ”を弁護するのか、という質問を受けます。しかし、憲法全文を読むことで、刑事手続規定が10条もある根拠を、その歴史的な流れから丁寧に説明すれば、皆さん理解してくれる。これなども憲法がどれほど市民の生活に影響を及ぼしているかということの一つの証左であって、憲法は自分たちの身近なところで権利を守ってくれるものだということを、市民に理解してもらう大切な機会になっていると思います。

 一方、こういった活動で難しいのは、憲法なんて関係ないと思っている人たち、憲法の話をすると突然身構えてしまうような人たちに、どうしたら関心を持ってもらえるか、という点です。“憲法を読む会”は重要な役割を果たしているけれども、このまま憲法に関心のある人たちだけで活動をすすめることに限界も感じていたわけです。
 そんな折、2004年6月に「九条の会」が立ち上げられ、アピール文が発表された。普段は憲法に関心のない人たちでも、最終的には、やはり今の憲法を護ったほうがいい、という声を挙げやすくするとりくみが必要だと感じていた私は、このアピールを多くの人に知ってもらいたいと思いました。“読む会”で知り合った一人と、この話で大いに意気投合して、そこから2005年1月に「越谷九条の会」が生まれました。“読む会”が一つの足がかりになったと思っています。
 「越谷九条の会」は、“立場や信条の違いを超え『憲法九条を守ろう』の一点で集まりましょう”、をモットーにしています。もちろん、いろいろな意見はあります。もっと政治的にアピールすべきではないか、など。しかし、どんなに正論を唱えても、社会的に孤立してしまったら誰もついてこなくなります。
 戦後60年以上、憲法改正を目標とする政党がほぼ与党を占めて日本の舵取りをしてきたわけです。しかしこの間、少なくとも9条については、国民の過半数が改正したほうがいいという意識を持っていたことはないはずです。これが国民と国会の最大のねじれだと私は思っていますが、民主党政権になっても、9条改正問題についていえば、逆に危機を孕む、予断を許さぬ状況になる可能性も否定できない。9条を改正しようという国民の支持の少ない、けれど国会での占有率の高い意見が、むっくり起き上がらないように蓋をするのは、国民の声しかないわけです。9条を変える必要はないと思っているのは自分一人ではないと自信をもって声を挙げられる、そんな社会にしたいと思いますね。
 そういう観点から、例えば「越谷九条の会」の恒例行事“音楽と灯ろう流しの夕べ”も、“九条の会”という名称は表に出さず、「音楽と灯ろう流しの夕べ実行委員会」の主催としています。しかし、平和橋のたもと、元荒川の川べりで催しをやりますね。すると、通りがかりの人が何の集まりだろうと不思議に思う。そのときに、九条の会がやっているらしいよ、という声があちこちから聞こえてくる。で、しめしめと思うわけです。そこで九条の会、それならやめた、帰ろう、ではなく、九条の会ならば安心だ、自分も参加しよう、となればいいと思っています。この他にも、「越谷九条の会」は、毎年9月9日午前9時9分に、「平和連だこ揚げ」にとりくんだり(3年目の今年もやります)、地元の文教大学の大学祭に「九条の会」として参加し、上映会や講演会を行ったりもしています。誰もが参加しやすいとりくみになるよう工夫しています。

 弁護士として、何故このような活動にかかわっているかといえば、正直なところ、日常的な仕事の上ではほとんど関係がない。しかし、憲法を勉強して、それを市民生活の中で活かしていく役割を担うのは、弁護士の社会的使命ではないかと考えているので、これも一つの弁護士の仕事、という理解で活動しています。
 私が弁護士になりたての頃は、豊田商事問題が社会的にクローズアップされていて、消費者問題に熱心にとりくんでいた。しかし当時は、消費者問題なんて、つまるところお金の損得勘定であって、憲法問題ではないという声も一部にありました。ところが今は、それが“貧困問題”という実に分かりやすい形でとりあげられるようになっています。市民の権利は、直接的には法律を通じて実現されますが、その根っこにあるのは憲法です。
 法律実務家としては、憲法の規定を意識することなく仕事をすることはできないはずですし、多くの市民に憲法は大切なものだと理解してもらうために弁護士は努力すべきでしょう。それをないがしろにしては、社会が成り立たないのではないかと思っているんですよ。

(聞き手=法学館憲法研究所事務局)

◆石河秀夫(いしかわひでお)さんのプロフィール

1951年 東京板橋区生まれ
1983年 埼玉弁護士会登録
1989年から1992年まで埼玉弁護士会消費者被害者救済センター委員長
1993年から2002年まで憲法ミュージカル「I LOVE 憲法」in越谷実行委員長
2005年1月から「越谷九条の会」共同代表を務める。



 
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