法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

普通の暮らしを求めて−非正規労働者がいすゞ自動車に求めること−

2009年7月27日

弁護士 伊須慎一郎さん

 

1 はじめに
昨年末から、大企業による期間労働者、派遣労働者ら非正規労働者の大量解雇、大量派遣切りが続発したことにより、住居さえも奪われ、生きることすらままならない人が多数生み出されました。トヨタ、キャノン、ニッサン、パナソニック、いすゞ自動車など、日本の名だたる大企業が、景気が悪くなった、減産体制に入ったという理由で、いとも簡単に、それまで企業に貢献してきた非正規労働者を路頭に放り出しました。その数は今年の9月までに22万人になると予想されています。しかし、非正規労働者も簡単には引き下がることはできません。自分の家族、自分の将来のために立ち上がった非正規労働者のたたかいを、いすゞ自動車の争議事件を通じて紹介をしたいと思います。

2 いすゞ自動車の解雇事件の概要
(1)期間労働者全員の中途解雇
いすゞ自動車は、昨年11月17日、不況による減産を理由に、期間労働者553人「全員」に、中途解雇通告しました。同時に、派遣労働者812人全員についても、派遣会社との労働者派遣契約を中途解除する、いわゆる「派遣切り」にしています。いすゞ自動車は、2008年9月当時、2074億円の内部留保を貯め込んでおり、仮に、解雇した非正規労働者1365人全員を年収300万円で雇用したとしても、内部留保の1.9%を切り崩すだけですみます。また、問答無用の全員解雇の経緯から、解雇いすゞ自動車が個々の非正規労働者の生活を考え、具体的な減産台数とそれに対応した必要人員をシビアに考慮したうえで中途解雇・派遣切りしたのではないことも明らかでした。いすゞ自動車も、期間労働者553人「全員」に対する中途解雇が、労働契約法17条1項違反の不当解雇であると自認したのか、2008年12月24日に期間労働者に対する中途解雇をすべて撤回しました。
(2)不当な休業命令による差別的賃金カット
しかし、いすゞ自動車は、中途解雇撤回と同時に、いすゞ自動車で働くことを希望している期間労働者に対し、休業を命じたうえで40%の賃金カットを強行しました。いすゞ自動車は、正社員に対しては、休業を命じながらも100%の賃金を払っていることが判明しており、期間労働者が、恣意的で差別的なものであることが明らかになりました。
(3)いすゞ自動車による期間労働者の雇止め
さらに、いすゞ自動車は、期間労働者の賃金を40%カットするだけでなく、一方的に2009年4月上旬の契約期間満了時点で雇止めにすると通告してきました。
(4)この間、宇都宮地方裁判所栃木支部(橋本英史裁判官)は、2009年5月12日、いすゞの差別的な賃金カットに合理性がないとして、1日の食事の回数を3回から2回に減らしたり、生活に必要不可欠の衣服やティッシュペーパーなどの購入を控えたり、風邪をひいても通院を控えるなど、ギリギリの生活をしてきた期間労働者の苛酷な生活実態を踏まえて、カットされた40%の賃金全額の仮払いを認める労働者側の100%勝利決定を下しました。

3 正社員化、直接雇用を求めるたたかいへ
現在、いすゞ自動車による不当な雇止め、派遣切りをはね返すために、期間労働者・派遣労働者12名が東京地方裁判所に地位確認等請求訴訟を提起しています。東京地方裁判所民事第36部合議係に係属しており、第1回弁論期日が7月13日午前10時に開かれました。原告のMさん(47歳)は、法廷での意見陳述で「いすゞ自動車の仕事が大好きで、仕事に対する誇りを持っていること」「贅沢することを望んでいるのではなく、この歳でも人並みに結婚して家庭生活を過ごすことを願っている」と職場復帰を求めました。また、原告のSさん(50歳)は、派遣労働者でしたが、いつかいすゞ自動車に認められて正社員になれる、そうすれば北海道に残してきた家族と一緒に生活できると信じて、6年間出勤時間より1時間も早く出社し、ラインをいつでも稼働できるよう準備していたと訴えました。私は、真面目に働き、慎ましく生きてきた原告のみなさんの普通の願いが、当たり前にかなう社会があるべき姿だと思います。そのためには、@企業の基幹的業務を支えている期間労働者の雇止めを、正社員の解雇と同様に厳格に制限する新たな判例法理、A名目上の契約形式ではなく、雇用実態を踏まえて偽装請負・違法派遣で利益を得てきた派遣先の雇用責任を厳しく追及できる判例法理の確立、B根本的には、全労働者の3分の1を超える非正規労働者が、安心して普通の暮らしができるような社会を構築するために、派遣法の抜本的改正や、有期雇用の規制なども実現させなければなりません。
東京地方裁判所での「対いすゞ自動車裁判闘争」では、原告のみなさんの当たり前の願いを実現を通じて、上記@ABを獲得していきたいと考えています。熱いご支援のほどよろしくお願いします。

◆伊須慎一郎さんのプロフィール

中央大学法学部卒業。2002年弁護士登録 55期
埼玉弁護士会・埼玉総合法律事務所所属
自由法曹団本部事務局次長



 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]