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環境問題と憲法

2009年7月13日

籠橋隆明さん(弁護士・日本環境法律家連盟事務局長)

 

―――籠橋さんは法律家の立場から環境問題について積極的に発言されています。その憲法との関係にも言及されています。籠橋さんの基本的な考え方をお話ください。
(籠橋さん)
 環境の保護が語られる時の価値観として、環境自体に価値があるという考え方と環境は人間にとって価値があるという考え方があります。私は、地球あるいは宇宙といった、どこか超然的なものに価値を見出すという考え方はとりません。地球あるいは宇宙そのものに価値があるとして、その価値を保護することが人間の諸権利を制約するようなことは正しくないと思います。あくまで環境は人間にとって価値・利益があるのだと思います。
 ただし、人間にとっての環境の価値・利益についてもいろいろなとらえ方があります。たとえば経済的な価値を重視する考え方があります。しかし、私は、憲法が謳う「個人の尊厳」を出発点にして環境の価値を考えるべきだと思います。人間が人間として生きていける社会をつくるということです。

―――人間にとっての環境の価値・利益というのは具体的にはどのようなことでしょうか。
(籠橋さん)
 たとえば環境を破壊する公害というのは、人間の生命や健康に悪影響をあたえ、「個人の尊厳」を侵害します。公害被害は経済的な弱者に集中しますので、その意味では不平等で不公正でもあり、この間の被害者のたたかいによって、裁判所で人権救済の判決も出されてきました。
 こうした具体的な被害から人間の利益を守ることのほかに、近年人間の精神的利益ともいうべき価値観から、たとえば街の景観を守るとか生物多様性を守るとか、そのような要求・運動も広がってきました。街の景観や生物多様性というものが破壊されたとしてもその経済的な損失というのは公害被害などと比べると低く評価され、裁判でそのような環境破壊の差止めはなかなか認められなかったのですが、最近は景観保存のために乱開発が差し止められる例も出てきました。これは前進です。

―――環境権を憲法に盛り込むべきだという主張がありますが、どのようにお考えですか。
(籠橋さん)
 憲法の改正は時の政治の動きと無関係に語ることはできません。環境問題だけで憲法を論じてもなりません。平和主義がどうなるのかということも考えなければなりません。環境問題を語る憲法論が本当に真面目な議論なのかどうかを見極める必要があると思っています。
 なお、環境を守る上で、それが憲法の条文に明記されるかどうかは本質的な問題ではありません。公害患者の救済や景観や生物多様性を守るということについての真剣な議論抜きに憲法に環境権というものが明記されたとしても意味はありません。

―――環境を守る課題と展望をどのようにお考えですか。
(籠橋さん)
 たとえば公害患者の救済は、現時点では裁判以外にはほとんどありません。裁判にはお金や時間がかかります。もっと多様な解決へのプロセスがつくられなければなりません。
 また、景観や生物多様性を守ることは決して容易い課題ではありません。
 この点で私はNGOやNPOの役割・位置づけがもっと評価される必要があると考えています。これまで国家というものは「政府−国民」というイメージで捉えられることが多かったと思いますが、民主主義国家においては国民の多様な価値観が政治に反映される必要があります。その際、NGOやNPOは“公共の担い手”“憲法的価値実現の担い手”と位置づけられる必要があると考えます。
 「個人の尊厳」という憲法の価値を実現する課題は環境を守ることの他にも多様に存在します。そのプロセスをどう確立し、「個人の尊厳」をどのように実現していくのかを探求していきたいと思います。
 私はNGO・日本環境法律家連盟の事務局長を務めています。多くの若い法律家が輪に加わっていますが、それをさらに広げていきたいと思っています。

―――本日は有意義なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

<文責:法学館憲法研究所事務局>

◆籠橋隆明(かごはしたかあき)さんのプロフィール

弁護士(名古屋弁護士会)。日本環境法律家連盟(JELF)および「自然の権利」基金の事務局長。
日本弁護士連合会の公害対策・環境保全委員会委員。
名古屋大学大学院法学研究科非常勤講師。
2004年、日本自然保護協会第4回「沼田眞賞」を受賞。


 
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