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今週の一言

 

世界の人々と出会う旅

2009年7月6日

山田和生さん(マイチケット会長)


―――山田さんが会長を務める旅行会社・マイチケットは憲法9条パスポートカバーをつくり、海外に旅行する人たちに提供しています。皆さんが企画するツアーに参加される方々への重要な問題提起をされていると思います。このパスポートカバーをつくった思いとパスポートカバーへの反響をお話していただけますか。
(山田さん)
 日本人のパスポートの表紙には菊の紋章があります。かつて日本が諸外国を侵略した歴史を考えると、これはいかがかと考えますが、消すわけにはいかないでしょう。それならば、せめてカバーの裏に日本国憲法9条の英文などを記そう、ということになりました。とりあえず英語とハングル、中国語のものをつくりましたが、本当はかつて日本が侵略した国それぞれの言語、たとえばインドネシア語やタイ語のものをつくる必要があると思っています。
 私たちが企画するツアーの参加者の皆さんなどはこのパスポートカバーのことを好意的に受け止めてくださっています。また、各地からの注文も受けています。
 エピソードなのですが、私たちが在日韓国人の方々を韓国にお連れした時ですが、その方々から「これ(憲法9条パスポートカバーのこと)は私たちには関係ない」と言われました。在日の方々は“むしろ選挙権など基本的人権について書いて欲しい”ということでした。在日の方々には日本国憲法に明記された人権が保障されていない現実があるので当然ですが、私たちは愕然としました。私たちも、様々な歴史や国際関係のことを念頭に入れておく必要があるのだと学ばされました。

―――マイチケットでは憲法9条パスポートカバーとあわせて国際人道法ポケットリーフレットも普及していますよね。
(山田さん)
 外国を旅行する方々が、万が一紛争に巻き込まれた場合、日本人は旅行先の国においては外国人になるのですから、その国際法上の地位を理解しておくことが大事になります。具体的には、“旅行者というのは非戦闘員である”ということを示すことによって安全が確保される、ということです。紛争状態の国はもちろんのこと、貧困な国で紛争が始まるかもしれない国などに行く場合、戦闘員と疑われるだけで危険な事態になる可能性があります。そこで、万が一そのような国を旅行する場合、旅行者は自分が非戦闘員だということを示すことが大事になる、ということです。
1996年、ペルーで日本大使公邸占拠事件が発生しました。その時、当時のフジモリ大統領は防弾チョッキを着て対応しましたが、ゲリラとの交渉にあたったのは“自分は非戦闘員だ”というゼッケンを着けた神父さんでした。私は、これだ!と思いました。武力的な紛争の場にあっては、むしろ国際法上も非戦闘員の方が安全だ、ということを伝えていきたいと思いました。このような趣旨でリーフレットをつくり、普及しています。

―――マイチケットは、世界の名所旧跡をパックツアーで巡る旅行ではなく、「オルタナティヴ・ツアー」という様々なツアーを企画しています。興味深いので紹介してください。
(山田さん)
 世界の様々な地域の人々の現地に行き、「人々と出会う旅」を企画しています。いま世界中に、貧困に喘ぎ、人権侵害や環境破壊に苦しめられ、紛争の最中にいる人々がいます。その人たちは日本のような先進国の人間から見るとマイノリティかもしれませんが、実は総人口でいうとそのような人々の方がずっと多いのです。私たちはそのような人々の現場に行き、その人々と出会うことが大切だと考えています。そして、そのような人々をつないでいく仕事をしていきたいと思っています。

―――山田さんは中米・ニカラグアに思い入れがあるようですね。
(山田さん)
 1985年からニカラグアへのツアーを企画・実施してきました。当時のニカラグアは内戦状態でしたので、「戦争見物」だと批判されたこともありましたが、私はニカラグアのことに大きな関心を持っていました。
1979年、サンディニスタ民族解放戦線が当時の独裁政権に対して武装蜂起し、市民のゼネラル・ストライキも行われ、その結果民族政府が樹立されました(ニカラグア革命)。ところが、1990年の大統領選挙でサンディニスタの大統領が親米派の大統領候補に敗れ、民族政府は政権を委譲することになりました。選挙の結果とはいえ、民族政府がすんなりと政権を手放したことに、私は驚きを感じました。
ところで、ニカラグアの隣国・コスタリカは常備軍を持たないという憲法を持つ国として知られるようになってきました。実は、1980年代、コスタリカはニカラグアでの内戦に対して和平の実現への積極的な役割を果たしました。その結果、いまコスタリカの首都サンホセにはニカラグア人がたくさん住んでいます。内戦が続くニカラグアにいた時には殺し合っていた者たちが、いま常備軍を持たない国に住んでいるのです。彼ら・彼女らはいま過去にどのように向き合っているのか、大変興味深く思います。
私たちはコスタリカへのツアーも実施していますが(今年のツアーも参加者を募集中です)、コスタリカが常備軍を持たない国であるという事実が語り広げられると同時に、その国をめぐる歴史や背景も語られる必要があると思っています。
私は、こうしたツアーを通して、ニカラグアを知る、コスタリカを知る、ということにとどまらずに、その国と人々を知ることを通して、“日本をどうしていくのか、あなたはどうしていくのか”ということを考えていただきたいと思っています。

―――山田さんが世界の様々な国々へのツアーを企画しておられる問題意識がよくわかりました。そのような諸外国の人々との民間交流の広がりは日本国憲法の平和主義の実現に大きく寄与するものになると思います。本日はありがとうございました。

<文責:法学館憲法研究所事務局>

◆山田和生(やまだかずお)さんのプロフィール

旅行会社「マイチケット」を設立し、現在会長。


 
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