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「平和的生存権と生存権が繋がる日 イラク派兵違憲判決から」

2009年3月16日

毛利正道さん(弁護士)


「平和的生存権と生存権が繋がる日 イラク派兵違憲判決から」を出版して
  3月10日全国一斉発売  合同出版 1575円 


■歴史を動かすもの、「せめて一矢を報いたい」

 2008年4月17日、この日は私にとって生涯忘れることのできない日になりました。弁護士生活30年の私が、生まれて初めて裁判の当事者(原告=控訴人)になり、その法廷で、自衛隊イラク派兵を憲法違反と断ずる名古屋高等裁判所判決を聞いたからです。
 ちょうど4年前の「イラク人質事件」でイラク戦争が「我がこと」となりました。そのあと甲府での同種訴訟の代理人になったものの、裁判所からは言わば、こけにされたような扱いをされました。「このままで引き下がるわけにはいかない」「せめて一矢を報いたい」との思いで名古屋訴訟の原告に応募したのです。勝訴の見通し?、そんなものあるはずありません。
 その法廷で6回の口頭陳述をして裁判官に迫り、名古屋の中心的弁護団・原告団メンバーの次くらいにはかかわってきた私でしたから、読み上げられる違憲判決にこみあげる感激を押さえることができませんでした。まさに、歴史を動かす場面に立ち会えたのです。その直後、「控訴人 毛利正道」の名が本文に入った第6次訴訟の判決文(巻末収録)を手にしたときの思いは、ひとしおでした。
 翌日から、イラクからの撤退を勝ち取ることと、平和的生存権を法的権利とまで認めた画期的判決の意義を広めることをめざし、訴訟の会の一員として長野県内はもちろん、千葉・東京・埼玉・群馬・新潟での判決報告会で十数回の講演をさせていただきました。ほとんどのところでかつてないほどの盛況ぶりで、この判決の力をひしひしと感じました。
 本書は訴訟の会とは別に、私の特別な記録としてまとめ刊行するものですが、最新版の判決報告会講演録をメインに構成してありますので、名古屋高裁違憲判決の学習資料として活用していただけるものと思います。
 更に、本書には、イラク訴訟とは一見関係がないようにみえるいくつかの講演録・論説も入っています。昨年9月の視察で得たものをまとめた「おどろきのフィンランド」など、その際たるものでしょう。それらは、イラクから帰還した自衛隊員の自殺者が著しく多いことを問うたイラク法廷での私の陳述から「発展」し、自殺という平時=日常における犠牲までも問う平和論でなければ力がないのではとの思いから、戦時・平時を問わず、人びとにとって毎日が平和であることこそ求められるべきものとの思いで論じているものです。そして、本書の題名にも用いている「つながる」ということに、私が特別な思いを抱いていることをご理解いただければ本望です。

■池田香代子さんの「本書に寄せて」より

 同じ名古屋訴訟の原告であった翻訳家の池田香代子さんにお願いしてみたところ、こころよく応じてくださり、すてきな論稿をいただけましたので、本書末尾に収録しました。その一部をご紹介させていただきます。

 弁護士として関わった訴訟で負けたからといって、ほかでやっている同じテーマの訴訟に、こんどは原告として「横入り」(よこはいり)する弁護士さんなんて、そういないでしょう。
 その希有な例外が毛利正道さんです。(中略)さまざまな知らないことがありました。なかでもはっとしたのは、憲法によって戦争を放棄したこの国の人びとは、人を殺すことに耐えられない、人が殺し殺される戦場を経験することにすら激しい拒絶反応を起こし、PTSDを引き起す、それがイラクに派遣された自衛官の異常に高い自殺率に表れている、とする論考です。論証は具体的な数字を踏まえ、精緻で、しかも自殺に追い込まれた自衛官たちへの悲痛な思いに満ちています。       (中略)
 憲法による平和は、ほかの権利と同じように、私たちがなにもしなくてもそこにあるものではありません。それが損なわれたと思ったら文句をいう、それで埒があかなかったら裁判に訴える。それが私たちの義務として、ほかでもない、憲法に定められています。第12条の「自由と権利は……人びとがつねに努力して維持していきます」は、そういう意味です(拙著『やさしいことばで日本国憲法』マガジンハウス)。
 このたび、全国で5000人を超える人びとがこの義務を果たしました。私もその一人です。イラクに自衛隊が行くのは、私たちの平和的生存権を侵すとして、集団訴訟を起こしたのです。そしてそのうちの名古屋グループが、違憲の判決を勝ち取りました。平和的生存権はれっきとした権利だ、ということも認められました。そこに至るには、一人一人の深い思いと長い努力がありました。その一端を、原告・毛利弁護士の記録にたどってください。私たちがなすべきことのヒントがたくさん見つかるでしょう。

■「もくじ」よりピックアップ

第1部 どう生かす 画期的なイラク派兵違憲判決と平和的生存権
(昨年11月の講演に大幅加筆)
第2部 「イラク法廷」での私の陳述
 第1回陳述 裁判官として「根深い侵略主義」からどう決別すべきか 
 第2回陳述 米兵によるイラク少女強姦殺人焼却事件を問う 
 第3回陳述 イラク帰還自衛官6名自殺から、戦時と日常における「人殺し」の相克を見る 
 第4回陳述 自衛官の生命を海外で奪うことは決してあってはならない
第3部 「毎日が平和」の世を築く(ユースへの講演)
第4部 おどろきのフィンランド − ルールあるつながりあい社会をここ日本でも
第5部 今こそ、市場原理・戦争政策への国民からの対案を
[巻末資料]自衛隊のイラク派兵差止等請求控訴事件判決文全文

◆毛利正道(もうり まさみち)さんのプロフィール

1978年、弁護士登録。
現在、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会常任理事・日本民主法律家協会理事・長野県税金オンブズマン代表委員などを務める。
著書として、『若者たちへ 過去、そして未来 − 沖縄・韓国・アメリカの旅から戦争と暴力、そしていのちについて 考える』(1999年、日本図書刊行会)、『弁護士が語る子育てキーワード 加害被害少年犯罪を担当して』(2000年、かもがわ出版)、『娘の誕生日に悲劇は生まれた テロ・戦争のない、いのちの世紀を若者とともに』(2002年、かもがわ出版)、『平和創造・人間回復つなげよういのち!』(2006年、合同出版)がある。
2009年3月、合同出版から『平和的生存権と生存権が繋がる日 イラク派兵違憲判決から』を刊行。

毛利正道さんのホームページはこちら

 


 
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