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「労働法はぼくらの味方!」

2009年3月9日

笹山尚人さん(弁護士)


 2009年2月20日付けで、岩波ジュニア新書から、「労働法はぼくらの味方!」という本を出版しました(税込819円)。

1,労働法無視の職場の横行

 私は、とりわけ、20代、30代の青年労働者、非正規雇用で働く労働者の権利に関心をもって、労働者側に立って労働事件を数多く取り扱っています。今まで手掛けた(今も手掛けている)事件の中には、例えば次のような事件があります。派遣労働者が二重派遣されて、派遣先や派遣会社から殴る蹴るの暴行を受けた「ヨドバシカメラ事件」。コンビニの店長として働く正社員が、長いときで4日間で84時間も就労して、37日間も連続して休日なしで働くなどした結果、うつ病に罹患してしまったことに対し、会社が「店長は管理職だから」として残業代の支払いも、病気に対する責任も果たそうとしない「SHOP99事件」。派遣労働者の派遣のため、支店の支店長として店舗に泊まり込みで働いた正社員に対し、会社がやはり管理職だからとして残業代を支払おうとせず、事業廃止をして責任逃れしようとしている「グッドウィル事件」。時給800円のフルタイムのアルバイトが、労働条件の改善などを求めて労働組合を結成したのに会社が話し合いにすら応じず、「あなたたちは、うちの従業員ではない」とまで主張する「すき家事件」。実態は労働者派遣である偽装請負を派遣法の定める期間制限を超えて続けたのに、それを告発した請負労働者たちを正社員として認めようとはせず、逆に仕事がなくなったとしてクビを宣告した「キャノン偽装請負事件」(このうち、「SHOP99」と「すき家」は、NPJというメディアのホームページで事件の紹介と次回の法廷の情報を掲載しています。)。
 これらの事件に共通する特徴は、会社が労働者に働いて貰うにあたり、当然に遵守すべき労働法を遵守せず、法律違反を指摘されてもそれを是正しようとしない態度です。このように、現代の労働社会は、労働法を無視する実態が広く横行し、多くの労働者が認められるべき権利の実現を阻まれ、苦しい生活を余儀なくされています。

2,労働法教育の必要性

 私はこうした事例を多数見るうち、労働法が無視される背景には、使用者の法令遵守の姿勢の欠如と共に、労働者の側の労働法に対する無知が広く存在することに気づきました。このページをご覧の方には、伊藤塾の塾生や、法科大学院生がいて、その中には試験科目である労働法を勉強している人もいるかもしれません。そのような方でも、試験科目として勉強する以前に、労働法の内容について勉強した機会があったでしょうか? 経験がないという方が多いのではないかと思います。この国では、高校や大学を卒業して就職する労働者が、自分の身を守る武器としての労働法を教育されていないのです。だから、労働法が無視され、自分の権利が踏みにじられていても、そのことに気づかず、労働法違反を放置してしまう結果になるのです。
 「派遣切り」「非正規切り」や、正社員のリストラ計画が声高に叫ばれ、世の中はどんどん労働者に冷たくなっています。このような社会だからこそ、これから労働社会に出て行く中学生、高校生といった子供たちに、労働法を教育することが必要なのではないか。
 私が本書を書く思いは、このようなものでした。

3,生きた労働法を

 私がこの本を書くときに注意したのは、「生きた労働法を届けたい」ということでした。
 労働法の内容について解説する書籍は巷にあふれています。だから、弁護士である私が新たに書く以上、現場で労働法は実際にどのように使われていて、具体的にどのように役に立つのかということを、わかりやすく伝えるのでなければ意味がないと思いました。
 このような見地で、私は、できるだけ中高生に身近な設定で、実際に遭遇することが多いであろう事例を中心的に想定して、その中で労働法が具体的にどのように生きているか、使うときはどのように使うのかを説明することを心がけました。

4,労働法教育の役に立って欲しい

 私は、この本をまず、中高生、中高生を育てている親の方、中高生を教育している学校や塾の先生たちに読んで貰いたいと考えています。そして、労働法教育の必要性を感じる全ての労働者、労働組合の方にも読んで貰いたいと思います。それを通じて、労働法教育の必要性が広く認識され、実践されていく一つのきっかけになってくれたら、これほど嬉しいことはありません。この文を読んでくれた方が、私のこの思いに共感して読んで頂けることを願っています。
 もちろん、労働法を選択科目で選んでいる新司法試験の受験生が、「生きた労働法」を学んで頂いて、試験に合格するのに役立ってくれることがあれば、そのような成果も大歓迎です。「本を読んだことが役立ちました」と将来言ってくれる後輩が生まれることを期待しています。

◆笹山尚人さんのプロフィール

 1970年生まれ。1994年、中央大学法学部卒業。2000年、弁護士登録。第二東京弁護士会会員。
弁護士登録以来、「ヨドバシカメラ事件」など、青年労働者、非正規雇用労働者の権利問題を中心に事件を担当している。
著書に『人が壊れてゆく職場』(光文社新書)、共著に『仕事の悩み解決しよう!』(新日本出版社)、『フリーターの法律相談室』(平凡社新書)、『中学・高校「働くルール」の学習』(きょういくネット)、監修に『しごとダイアリー』(合同出版)などがある。

 


 
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