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『いま なぜ メディアを読み解く目』

2008年12月29日

仲築間卓蔵さん(元テレビプロデューサー)


2008年12月5日に出版した拙著『いま なぜ メディアを読み解く目』(かもがわ出版)に、小森陽一さん(東京大学教授、九条の会事務局長)といっしょにみのもんたさんが推薦文を書いてくれたからというわけではないが、みのもんたの憲法感覚はすぐれている。
古い話になるが、06年5月6目の『朝ズバッ』(TBS系列)。この日は「外交大激論 在日米軍再編でどうなる」「日本の負担3兆円」「靖国問題」「ポスト小泉は」…などを、特別番組スタイルで取り上げていたのだが、各党代表の激論の合間に、彼はつぶやいた。「年金、医療、税金など自分の生活が大変なとき、安保なんかいらないよ」と。そして、憲法九条が書かれたフリップをかざして読んだ。“武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する”“前項の目的を達するため、陸海空その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない”と。ここでまた彼はつぶやいた。「九条 いいじゃない。一人一人が真剣に考えなきゃ」と。彼は飲む時間を減らしているのだろう。新聞を読んでいるのだろう。市民感情を理解しているからだろう。
『朝ズバッ』が拘っているのは憲法だけではない。後期高齢者医療制度については「これでもか」といえるほどの追及の仕方である。とり上げた回数は40回を超えている。孤軍奮闘といっていい。
だが、みのもんたの孤軍奮闘ぶりを喜んでばかりもいられない。テレビ局で働く人たちの中に「憲法」が生きているかというと、必ずしもそうとは言えない。かつて、ぼくも一員でもあった民放労連(日本民間放送労働組合連合会)の08年定期大会の様子を聞いて隔世の感をおぼえたのだ。今回の大会スローガンは「労働組合を変える! 放送が、社会が変わる!」である。いいスローガンだと思う。労働組合がしっかりしなければという決意が込められている。
その席上で、「政治課題」(年金、医療、憲法など)削除の動議が出されたという。「憲法改悪などについては番組を通じてやればいい。偏ったスタンスで主張すべきことなのか」「やることは別にあるのではないか」という意見である。
拙著でも書かせてもらっているが、とかく「政治課題」を避けて通る傾向について一言言わざるを得ない。日本国憲法を守ることを「政治課題」という向きがある。そうだろうか。憲法は、そんなものの上に存在していると思う。憲法は、生きていくために必要な「清浄な空気」だと思う。労簿組合の大会だって「勤労者の団結権・団体交渉権その他団体行動権」(第28条)で保障されている。労働組合の大会で自由にものが言えるのも、「憲法」という空気があってこそである。
番組づくりについてはどうか。「集会・結社・表現の自由、通信の秘密」(第21条)がある。放送局にとって大事な「空気」である。もしも、みのもんたの発言に圧力がかかったとしたらどうするのか。「あれは番組がやったこと。番組で処理すればいい』とでも言うのだろうか。言論表現の自由のために立ち上がらなければならないのは、まず、労働組合であろう。そこから、きっと視聴者との共同のたたかいが広がるはずである。だから、憲法という「空気」を拒否するなんてあり得ない。
テレビ制作に関わっている人たちは、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(第25条)という空気を吸うことができているのだろうか。社員労働者と非正規雇用労働者の賃金・労働条件の格差はひどいものである。「九条」が改悪されれば、この「空気」は吹き飛ばされてしまう。そのことは、歴史が説明してくれている。
幸いにして、この動議は否決されたという。民放労連本部は、「政治課題を取り組まない単産にはしない。労働組合としてどんどん意見や要求を持つべきだと考える」とまとめの発言をしたという。番組づくりで苦労している現場には頼もしく映っているだろう。このことは広くは知られていないが、視聴者にも頼もしく映るにちがいない。大会スローガンは輝きを増した。声高に、「頑張れ 民放労連!」である。
ぼくは、年賀状に「激春」と書いた。「なにか変化を感じる年になりそうです」と書いた。09年は、「change」であり「chance」でもある。その中心に「憲法九条」がある。テレビ報道がどのような「視点」で09年に臨むか、関心をもってほしいものである。

◆仲築間卓蔵(なかつくま たくぞう)さんのプロフィール

1932年 大分県生まれ。
1950年 中央大学第二法学部入学。中途退学、映画の道を志す。
1954年 日本テレビ入社 編成局広報部(番組宣伝)
1976年 日本テレビ労組委員長に。
    千代田区労協副議長を兼任(79年まで)。
1985年 労組委員長を退任。制作局に復帰。
1986年 朝のワイドショー『ルックルックこんにちは』、午後の『ザ・ワイド』のプロデューサーに。
1992年 「定年」後も(97年まで)プロデューサーを続ける。その後、テレビ朝日のワイドショー(土曜日)をバックアップ。
1998年 プロデューサーから身を引く。

・現在、日本ジャーナリスト会議(放送部会)会員/マスコミ文化集団「自由メディア」代表/民放関東シニアの会々長。
・「マスコミ九条の会」呼びかけ人。(「九条の会」「九条かながわの会」「九条の会東京連絡会」「大船九条の会」「民放九条の会」を手伝う。
・JCJ機関紙「ジャーナリスト」に『テレビの本音』を、「しんぶん赤旗・日曜版」に『メディアをよむ』を連載。



 
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