法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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憲法は時の権力者たちの専制支配に対抗するもの

2008年12月1日

鳥山孟郎さん(元高校教諭、首都大学東京非常勤講師)

―――当研究所は近く『世界史の中の憲法』を出版します。憲法の存在意義・役割をその誕生と発展の歴史を通して学び広げたいと考えています。鳥山さんは高校での世界史教育の実践を積み重ねてこられましたので、その経験をお聞きしたいと思います。
 まず、高校での世界史の授業で憲法はどのように教えられているのでしょうか。
(鳥山さん)
 憲法は、時の権力者たちの専制支配に対抗するものとして、各国での民衆のたたかいと議会制度の成立とあわせて教えることになります。教師によっていろいろな工夫がされますが、フランス革命のところでは必ず教えられています。

―――憲法はみんなが守らなければならないものだと理解されがちですが、高校生たちにも、憲法は権力者たちを縛るものという理解を広げる必要があると思います。高校生たちの理解はどのようになっているのでしょうか。
(鳥山さん)
 世界史の授業で取り扱う内容はさまざまな分野にわたるので、憲法のそもそもの存在意義を世界史の授業の中で伝えることは難しいところがあります。時の権力者たちの専制支配に対抗するものとして憲法がつくられたということを18世紀後半から19世紀までの歴史の動きの中で具体的に示すくらいです。20世紀以降は憲法のそもそもの存在意義ではなく、ワイマール憲法に社会権が盛り込まれたことや、普通選挙制度ができたこと、女性の参政権が認められるようになったこと、などが出てくる程度になっていきます。
 憲法のそもそもの存在意義は中学校の公民や高校の現代社会・公民などで教えられますが、生徒たちには十分に伝わっていないと思われます。高校の授業で、ドイツ・ナチスの全権委任法を読んでその問題点を述べさせたことがありますが、生徒たちは戸惑った感じでした。憲法や立法機関の権限を行政機関が踏みにじることが民主政治の原則に反するということに気がつかないのです。
 最近の生徒や学生たちには、議会制や憲法というものは当たり前に存在しているものという感覚はあっても、その内容や意義を突っ込んで考えることがあまりありません。戦後、1970年くらいまでの間は明治憲法から日本国憲法に転換したことの意味を実感することができましたが、いまの時代には憲法について考える切実さのようなものがないのです。したがって、生徒や学生たちが自らの問題として考えるよう、教員には工夫が求められます。

―――今日の憲法は市民の権利を守るために生まれました。ただ、それは基本的には市民階級の利益を守るものといえます。しかし、20世紀に入り労働者のたたかいによって労働者の権利も一定程度保障させるものになりました。このように歴史の大きな流れを理解すると、日本国憲法が世界の歴史の中でつくりあげられたこと、そしてその理念をさらに発展させるべき課題を考えることになっていくと思うのですが、いかがでしょうか。
(鳥山さん)
 そういう点で法学館憲法研究所が今度出版する本は意義深いと思います。
憲法とその基本原理を突っ込んで考えるという点では、いまの高校教育をめぐる状況から重要です。たとえば、フランス革命については、かつての学習指導要領では「市民革命」として教えることになっていましたが、今日では「国民国家の形成」として教えることに変わり、専制権力との民衆の対立という視点が後景に退いています。

―――憲法を生徒や学生たちに教える課題についてのお考えをお聞かせください。
(鳥山さん)
 今日の日本国憲法が大日本帝国憲法と異なり民主的なものになったということは日本史の授業で教えられており、このことは重要です。
 しかし、歴史の授業は思想や理念・理想を語るよりは現実を正しく理解することが重要になります。そのため、憲法9条については日米安保や自衛隊の存在と補完関係にあるという現実をまず踏まえる必要があります。
 憲法のそもそもの存在意義については、「憲法は時の権力者たちの専制支配に対抗するもの」といっても、いまの生徒・学生たちは「専制支配」をイメージしにくい状況です。遠い昔のことという感じで、日々の身近な問題と結びつけて考えることができないのです。この点をどう工夫するかが大事です。身近な諸問題を提起しながら、生徒・学生たちが自らの頭で考える訓練を積み重ねていく教育が必要だと思います。私が最近『授業が変わる 世界史教育法』を出版したのも、そのような思いからでした。

―――高校教育の現場の状況を教えていただきました。憲法とその考え方を広めていく上で踏まえておくべきことだと思いました。どうもありがとうございました。


◆鳥山孟郎(とりやまたけお)さんのプロフィール

1941年生まれ。2001年に東京都立高校を退職。その後、青山学院大学、首都大学東京、東京学芸大学大学院で非常勤講師。比較史・比較歴史教育研究会、歴史教育者協議会、日韓教育実践研究会に参加。著書に『考える力を伸ばす世界史の授業』(青木書店、2003年)、共著に『金現代史の授業づくり 世界史編』(青木書店、1994年)、『子供が主役になる“歴史の討論授業”の進め方』(国土社、2002年)、『帝国主義と現在 東アジアの対話』(未来社、2002年)がある。

<法学館憲法研究所事務局からのご案内>

 法学館憲法研究所は下記の講演会を開催します。
 この日から新刊『世界史の中の憲法』(浦部法穂著)の普及をはじめる予定です。

 「世界史の中での日本国憲法の意義」
 日 時:12月6日(土)15時−17時
 講 師:浦部法穂氏(名古屋大学教授)
 会 場:伊藤塾高田馬場校
 参加費:1000円(法学館憲法研究所賛助会員・学生・伊藤塾塾生は500円)
 主 催:法学館憲法研究所
 協 賛:歴史教育者協議会


 
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