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今週の一言

 

マスメディアを市民の手に取り戻そう

2008年12月1日

日隅一雄さん(弁護士・NPJ編集長)

普通の会社でいいのか

 朝日新聞の元社長箱島氏は、「朝日新聞を普通の会社にしたい」と言った。それ以降、朝日新聞がおかしくなってしまったと感じている読者は多いと思う。普通の会社といえば、利益追求型の企業ということになるのだろうが、マスメディアは、普通の会社であってはならない。なぜって?それは簡単、マスメディアは利権を追及してはならないからだ。普通の企業であれば、政府に働きかけて自分に有利な政策をとってもらうことも贈収賄にならなければ、問題はない。しかし、マスメディアは政府を監視するのがもっとも重要な役割であり、政府と利権でつながるようなことをしてはならない。ゆえに、そもそも、普通の会社になんてなれないし、それを目指したとたんに、マスメディアは、その機能を失ってしまう。

がんじがらめの日本のマスメディア

 ところが、日本のマスメディアは実際には、利権まみれというのが、実態だ。新聞は独禁法違反ともいえる宅配制度で守られ、テレビは安く電波を利用する。本社は、いずれも一等地にある。
 なぜ、そのようなことになったのか?
 これも答えは簡単だ。日本のマスメディアは、政府によって支配され、相互にチェックすることができず、財布を自分で管理できていないからだ。
 つまり、日本のメディアは、テレビと新聞が完全に系列化しているため、互いの利権を批判しあうことがなくなり、政府との利権が強くなっているというクロスオーナーシップの問題(他の先進国は規制している)、それを可能にした原因とも言える政府直轄型の放送行政の問題(他の先進国は独立行政委員会を設置して、政府の直接支配を防いでいる)、一業種に一社しかクライアントと取引しないという世界の常識に反して、一業種でも複数のクライアントと取引をするために代理店が巨大化してしまったという問題を抱えている。
 戦後まもなく、日本のマスメディアを民主化させるために、占領軍は、放送行政に独立行政委員会を設置した。ところが、吉田首相は、日本が独立を回復したとたんに、独立行政委員会を廃止した。それ以降、日本のマスメディアは、政府のコントロール下におかれるようになったといっても過言ではない。それこそが、自民党一党支配の根源だった。自民党以外の政党は「頼りない」というイメージを常に発信し続け、いまも民主党で大丈夫かというイメージを発信し続けている日本のマスメディアの罪は大きいが、それも以上のような足かせによるものだ。

情報通信法制定を前にして

 放送がデジタル化され、いよいよ、インターネットと放送の境目が失われつつあるいま、2010年の通常国会への上程を向けて、情報通信法(仮称)の検討が総務省で行われている。この法案は、放送と通信の融合を図り、マスメディア産業の発展を促そうという狙いだ。
 しかし、同時に、この法によって、インターネットを総務省が主管することになる。つまり、これまでは、インターネット上の言論について、管轄する官庁はなかったが、総務省が口を挟めるようになるのだ。そうすると、ホームページやブログという市民の情報発信にまで制約が掛けられるおそれがある。また、監督官庁のない新聞についても、インターネット版を通じてさらなる規制をかけてくるおそれがある。
 これまで政府や大企業に独占されてきた情報が、インターネットの発展によって広く流通する可能性が増えてきた。政府や大企業が抱える問題についても、インターネットなどを通じて、広く、市民に知らせることができるようにもなってきた。
 典型的なのは、麻生邸を見に行こうとして逮捕された3人が早期釈放されたことだ。この件では、いわゆる転び公妨(警察が自分で芝居をうってターゲットを公務執行妨害で逮捕すること)の場面がyoutubeによって、広く市民に伝えられたため、警察に批判が殺到し、身柄を拘束し続けることができなくなった。これまでも転び公妨の問題点は繰り返し指摘されてきたが、大メディアが取り上げず、市民はその実態を知らなかった。
 インターネットは、このように、政府側の問題点を鋭くえぐることができる手段でもある。
 情報通信法によって、総務省が直接、インターネットを管轄するようになると、批判的な情報が流通できないようになる可能性が大きい。フィルタリング、検索マシンなどを利用すれば、そんなに難しいことではないからだ。
 インターネットで獲得しようとしている自由な言論を政府によってつぶされないように、情報通信法の行方には注目してほしい。この法律のあり方で、今後50年、100年の日本のあり方が決まると言っても過言ではないからだ。


◆日隅一雄(ひずみかずお)さんのプロフィール

1963年、広島県に生まれる。京都大学を卒業後、産経新聞社に入社し、阪神支局、
大阪社会部勤務。退社後、海外に遊学。帰国後、司法試験に合格し、1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)。日弁連人権擁護委員会第5部会(精神的自由に関する部会)などに所属。一般民事事件、刑事事件を受任する一方、報道被害弁護士救済ネットワークなどの報道被害、NHK番組改編事件などの報道問題に取り組む。NPJ編集長。著書『マスコミはなぜマスゴミと呼ばれるのか』(08年4月 現代人文社)。


「法学館憲法研究所事務局からのご案内」

下記のイベントに日隅さんもパネリストとして参加されますので、ご案内します。

NPJ Lecture 「マスメディアと市民メディア 何が伝えられるの? 〜伝わることと伝わらないこと 」
12月9日(火)17:30〜20:00
立教大学池袋キャンパス4号館4階4402教室
資料代:500円
詳しくはこちら


 
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