法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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『えほん日本国憲法』を作って

2008年9月22日

野村まり子さん(『えほん日本国憲法』作者)
先月8月末に、明石書店より『えほん日本国憲法』を刊行いたしました。
日本国憲法を絵本にできないかと最初に思ったのは、もう20年以上も前のことです。きっかけは子どもの宿題でした。当時六年生の子が「憲法前文を親と読む」という宿題を持って帰ってきました。読んだことがあっただろうかと記憶を手繰りながら一緒に目を通して、驚きました。子育てをし、仕事をし、日々を送る中で「こうだといいのに」と思い描いている世界が、簡潔な文章ですべて表現されていると感じたのです。「人類普遍の原理」、「平和のうちに生存する権利」・・・。解放感と希望をおぼえながら、いつか憲法の絵本を作ってみたい、と漠然と思いました。でも、それは単に「夢」としてのことでした。
ところが、1991年の湾岸戦争後、自衛隊の海外派兵が現実となってからのことだったでしょうか、改憲を視野に入れた憲法論議が声高に語られるようになりました。理由はいくつか挙げられてはいましたが、自分も含め、国民がみな憲法について語れるほどに、憲法のことを知っているのか。本質に触れることなく、変えれば何かが刷新されるかのようにあおる雰囲気に、危機感をおぼえました。「何かできないか・・・」そうやって考えたときに、絵本作りの夢を実現することが、私にとっては、一番現実的な選択ではないかと思えたのです。とはいえ、憲法に精通しているわけでもない私が憲法について語る、前文で得た解放感を伝える、といってもどのように伝えられるのか。考えた挙句、知らない私が知りたいこと、憲法ってなに?を伝えることではないかと思いいたります。
絵本としての視覚的なヒントは、著名な絵本作家、ピーター・スピアーの描く「アメリカ合衆国憲法」の絵本から得ました。そして、構成については、小熊英二さんが新聞(『毎日新聞』1999年5月3日付)に書かれた「憲法は、祀り上げるものではない、使いこなすもの」という内容の文章から着想を得ました。「憲法を使う」という言葉は、私には新鮮で、かつ憲法が何なのかを伝えるときの最適な表現と思われました。それまでに、私が9条以外で憲法を意識したのは、26条でした。子どもの不登校を経験し、地域で「親の会」に関わっていましたが、学校や先生によって対応に差があり、中には「義務教育だから子どもは学校に来る義務がある」法律でそうなっているのだと、登校させるように親に対して圧力をかけるところもありました。義務教育とは何か。その時はじめて、大人には教育を受けさせる義務があり、子どもには教育を受ける権利があり、その権利を26条で保障していると知りました。憲法の存在の意義を肌身で感じた経験です。ですから、小熊さんの「憲法を使う」という視点を全体の構成に生かしたいと思ったのです。
そして監修を、静岡大学 憲法学教授の笹沼さんにお願いしました。地元で、直接当事者の方たちと関わりながら、野宿者が生きぬくことを支える活動をされている方です。笹沼さんの、「改憲論の特徴である『人権論の欠如と自由嫌い』の傾向に対し、護憲論を『人権論を中心に、イメージ豊かなものとして築く』」ということばにふれ、まさに考えていた絵本の世界そのものだと思ったのです。内容の詰めは、笹沼さんのことばを読み解きながら、さまざまな状況を抱えて生きている方たちの声に学びつつの作業でした。笹沼さんのお話をうかがう中で、前文を読んだ時に得られた解放感と希望は、絶対的価値を一人ひとりの自由と権利においているところからくるものだったのだと気付かされました。
この本では、日常の情景をこまかく描きました。人はみなそれぞれに違い、違うもの同士が集まって社会を作っていること。違っているけれど、人間としての尊厳は同等で、すべての人が生まれながらに平等であること。でも、そういいながら、平等ではない現実がいたるところにあること。憲法は、人権を保障するために作られた国が、目的である人権を奪うことのないように、国家権力にはどめをかけるルールとして作られたこと。そして、すべての人がさまざまな部分で、互いに他者に依存し、補い合って社会が成り立っていることなど。ちまちまと情景を重ねたのは、そういった社会の成り立ちを視覚的に伝え、見る人がどれかに共感をおぼえて、憲法を身近に感じてもらえないかと思ったことからです。
不十分ではありますが、憲法の本質の一端と、憲法が日々の暮らしに直結していることを、少しは描けたかなと思っています。それによって、私たちが、この憲法で初めて手にした「生まれながらの自由と権利」を決して手放さないことの役に立てたらなによりです。
10月4日(土)に、出版を記念するつどいを開催いたします。どうぞご参加ください。

日 時:2008年10月4日(土) 1:30開場
 2:00〜4:00 第一部 笹沼弘志さん講演『 幸福を夢見る権利と憲法 』参加費:500円
 4:30〜6:30 第二部 交流パーティー(参加費3.000円 記念品・サイン本共 事前申し込み)
場 所:C −cafe ( 三鷹市野崎1-1-1 三鷹市役所となり 三鷹公会堂裏 )0422-45-1230
問い合わせ先:つどい世話人会 0422-46-5240 不在の場合は、ご用件、お名前、ご連絡先をお願いします

◆野村まり子さんのプロフィール

1949年、高知県高知市生まれ。
アニメーションの作画から、おもに科学物の児童書、雑誌などの挿し絵の仕事にたずさわる。



 
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