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憲法の考え方の根源を学ぶ
―――講座「憲法の考え方」を受講して

2008年8月11日

秋田直恵さん
桜井邦彦さん
―――秋田直恵さんと桜井邦彦さんは、当研究所が開催した連続講座「憲法の考え方」(現在インターネットで配信中。こちら)(全5回)を受講していただきました。昨年の連続講座「世界史の中の憲法」(全6回)に引き続いてのご参加です。この講座を受講されたきっかけなどお話ください。
(秋田さん)
日頃から新聞などで見聞きする憲法「改正」論者の意見にはとても違和感がありました。中味の検証もなしに、一般受けする言葉で、攻められたらどうするんだって、それだけで押し通してしまうような改憲論者の議論に怖さを感じます。そういうのを聞いていると、こちらもちゃんと知識を自分のものにしないと、ただ憲法を守らなきゃ、だけでは彼らと同じになってしまう。憲法について突き詰めて知りたいと思ったときに、この講座に出会えて良かったと思います。
(桜井さん)
僕も、昨今の憲法を変えようとする動きには警戒感を持っています。受講の動機を改めてふり返ってみると、10数年前、家族でヨーロッパ旅行をしたときに感じたことが忘れられないからかもしれません。
向こうの人から、どこから来たのと問われて、日本、と答えると、どうもあまり尊敬されていないような感じ。日本も、せっかく9条があるんだから、もう少し世界から尊敬される国になる必要があるんじゃないのか、という気持ちになりました。多少こじつけめいていますが、今思うと、そんなことも憲法を学ぼうというきっかけになっていたのかもしれないですね。

―――講座に参加されて、とりわけ印象深かったこと、憲法についての見方がこれまでとは変わったというような、ハッとさせられることも多々あったかと思いますが、いかがでしたでしょうか。
(秋田さん)
私は、第2回の講義「人権というものの考え方」の、憲法の条文にあるから人権と認められるのではなくて、人間として正しいとされることの積み重ねが人権として社会的に認知され、それが憲法に保障されるのだ、あくまで人権が先、というお話。これまで、そういう角度から説明される書物や講義を読んだり聴いたりしたことがなかったので、とても新鮮でした。
権利、という言葉は日本ではとりわけ、自己主張を他に押し付けるといったイメージがあるようですが、本来の意味はそうではないと知って確信になりました。こういうニュアンスも、本を読んでいるだけでは分かり辛いですが、実際に講義を受けてみると、すとんと胸に落ちます。これから、周りの人と話すときにも、その意味を伝えられるように自分の言葉で表現していきたいですね。
(桜井さん)
僕も今の話にあった第2回の講義は印象に残っています。人権という言葉は、法律用語だという思い込みがあったのですが、もともとの語源はヒューマンライツであって、人間として正しいこと、という意味だという説明はすごく分かり易かったですね。
(秋田さん)
第5回「平和主義ということの考え方」では、憲法前文の位置づけを、9条を支える哲学なのだと説明されたことにとても説得力を感じました。日本の憲法に何故、全世界の国民の平和的生存権がうたわれなくてはならないのか、その理由を、9条を支える哲学であるというところに求めれば、とてもすっきりします。
(桜井さん)
9条と自衛隊の並存という矛盾が放置されている現状に関わって、日本にもドイツのような憲法裁判所があれば、これを解決できるのではないか、とこれまで素朴に、漠然と考えていましたが、浦部教授はそれは諸刃の剣だと仰ったことも印象深かった。第4回「権力分立ということの考え方」の講義の中で、憲法裁判所が時の政権と独立した判断を下せるかどうか、結局政権に有利になってしまうリスクも大きいとの指摘に、なるほど、そういう見方があるのかと思いました。
先のイラク派兵控訴審判決のように平和的生存権を認めた判決は、日本ではたった2件しかないわけですよね。今日本の裁判所が“憲法の番人”の役割を果たしているとは思えない。司法が独立していない、権力分立が十分に機能していない背景の一つとして、憲法上、内閣による裁判官任命権の規定があることを学びましたが、憲法制定時には、その辺りはどのように想定されていたのか、さらに知りたくなりました。

―――浦部教授の講義は、従来私たちが当然のように理解していたことについて突っ込んで考える必要性を説くものとなっています。一例をあげれば、私たちは国民主権について日本が戦後天皇主権から国民主権に変わって進歩したと手放しで評価することはあっても、そもそも国民主権とは何か、あまり考えることはありませんでした。国民主権が民主主義とつながり、多数決の重要性は語られても、少数者の権利を守る重要性には気づかないことも少なくありません。
(秋田さん)
今の世の中自体が、多数の力で決まれば全て正しく、少数意見が抹消されてしまうような風潮になっていることに怖さを感じていましたが、浦部教授のお話で、決定に至るまでの過程、つまり少数意見を汲み取る議論を十分経たか否か、が「結果」として多数決の正当性を担保することなのだなと納得しました。
そのことを私たちがもっと理解していけば、少数意見を持つ人たちの声が、この国に住む全員にとって貴重な価値であることがわかります。少数者が攻撃の対象になることを怖れて発言を控えたり、少数意見が数の論理で抹消されたりすることがなくなるといいなと思います。多くの真実が、少数者の発言がきっかけになって見出されていることは、歴史が証明しているのではないでしょうか。
(桜井さん)
多数決原理自体が、即民主主義だと考えるべきではないと浦部教授が仰ったのは、とても示唆に富んでいました。“予防注射のジレンマ”についてお話されたのも記憶に残っています。つまり、圧倒的多数の人にとっては病気の流行を防ぐのに予防注射が有効なのだけれど、ある一人の人にとっては、その予防注射で悪影響が出てしまう、というときに、それでも予防注射を打つ政策を採るのかどうか、という。仮に最終的には予防注射を打つ、という判断をするにしても、そのときに大多数のために少数の犠牲はやむをえないのだと考えるのか、少数の権利にも十分配慮した上でそれをするのかでは、為政者の姿勢として大きな違いがある、というお話だったと思います。
立憲主義ということについての考え方は、連続講座全体を通して浦部教授はいつも強調されていましたね。憲法に対する考え方の根源を示されているように思いました。

―――講座の中で新しい発見があったと伺い、企画者サイドとしても嬉しく思います。私たちも、さらに憲法を学ぶ意義を掘り下げ、広げる努力を続けたいと思います。本日はお忙しい中、興味深いお話をきかせていただきありがとうございました。

秋田直恵さん:横浜市在住。
桜井邦彦さん:柏市在住。

 
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