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子どもの人権をまもる

2008年7月28日

柳重雄さん(弁護士)
―――柳さんは、子どもの人権をまもる、獨協地域と子ども法律事務所を設立されました。設立にあたっての問題意識などお聞かせ下さい。
(柳さん)
この事務所は、獨協法科大学院のリーガルクリニックなどを担当していますが、とりわけ子どもの権利の問題に焦点をあてながら、法科大学院における新しい教育であるリーガルクリニックを担っている法律事務所です。そのために様々な専門家とも連携して問題解決を図る体制をとっています。
子どもに関わる問題は、弁護士を必要とする法的解決だけが全てではありません。いじめの問題、虐待の問題など、当事者の悩みをよく聞いて相談にのる、当事者や関係者が話し合う、場合によっては学校や教育委員会などとも協議する、といったきめ細かい対応が必要になります。事務所の隣には、地域と子どもリーガルサービスセンターがあり、そこではお医者さんや臨床心理士さんなどの協力・支援も受けながら問題の解決にあたることができるようになっています。
地域とつながってとりくむということ、子どもの問題というテーマ性を持っているということ、この二つがこの法律事務所の特徴といえるでしょう。子どもの人権の問題を重視している点で全国の法科大学院の中でもユニークな試みだと思います。

―――子どもの人権をまもるという意味では、例えばこちらの事務所で解決にあたった事例ではどんなものがありましたか?
(柳さん)
子どもの引渡事件、離婚に際してどちらの側が子どもを引き取るか、という問題などが比較的多く寄せられています。どちらかが一方的に子どもを連れて行ってしまったようなケースでは、人身保護請求という形で裁判に持ち込まれるわけです。以前は、離婚問題といえば、親同士の関係に終始して、子どもの問題を脇において解決を図ってきた側面は否めません。しかし、ここの事務所、そしてリーガルサービスセンターでは、子どもにとって何が望ましいのか、子どもの目線に立つというスタンスで引渡請求などにあたろうとしています。

―――いじめ問題の話もありましたが、少年非行が深刻化し、少年事件も「凶悪化」しているということばかり一般のマスコミでは誇張されているように感じます。そんな風潮の中で、最近では少年法が「改正」され、少年審判への被害者傍聴が制度化されました。どのようにお考えですか。
(柳さん)
難しい問題ですね。被害者の権利という観点からは、被害者の知る権利や、被害者の思いを裁判官に伝えるという意味で、あながち無視もできないでしょう。しかし一方、少年が審判を通じてこれから更生をはかっていくという点では、現実には時間的にも空間的にも限られた法廷の中に被害者が現れて、そこで本当に少年が本音を話しつつ、更生に向かうという審判を実現していけるのかどうか。
 非行・犯罪行為に走ってしまった少年が、被害者ときちんと向き合うことで自分たちの行為の意味を知り、それが少年の更生に役立つということはあり得ると思います。そのために付添い人となった弁護士は、被害者とも会って話をし、また被害者の気持ちを加害者たる少年に伝えて更生をはかります。しかし少年審判の場で、冷静にそれができるかというと大きな疑問が残ります。
少なくとも統計で見る限り、凶悪犯罪が増えているわけではありません。マスコミを含めて世の中の風潮が、犯罪被害者擁護を口実にして、加害者に対する重罰化がはかられているのが現状だと思います。社会全体が刑罰に頼って、加害者を重く罰することでしか世の中がうまく維持できないというような、社会全体が不安現象に駆られていて、健全に世の中を形成していこうという雰囲気がなくなってしまっていることに懸念を覚えます。
その意味で、観念的にではなく現実に起きている事件から出発して、犯罪にどう対処するか、刑罰や少年審判のあり方をどう考えるかということを検討する必要があるでしょうし、多くの弁護士たちはこのような状況の中で、少年と向き合い、奮闘しています。

―――子どもの権利をまもるというとりくみを含め、今後どう発展させていこうとお考えでしょうか。
(柳さん)
ひとつには、地域との連携をさらに深めたいと思っています。地域の住民運動、労働運動とも連携して幅広くとりくみたい。地域の憲法9条の運動などとも、もっと接点をもっていきたいと思います。併設の地域と子どもリーガルサービスセンターは、子どもの問題を扱うNPOや自立支援施設などさまざまな団体と結びついて活動していますので、こちらもそれに負けないように、地域の人たちと学習会などやっていきたいなと。
 子どもの人権という考え方も、歴史的には新しいものです。時間はかかるかもしれないが、とりくみを通じて地域の人たちに人権や平和の問題への理解を深めてもらえればと思います。

―――本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

◆柳重雄(やなぎしげお)さんのプロフィール

早稲田大学第1法学部卒。1976年 弁護士登録。
1982年 埼玉東部法律事務所開設。
2002年〜03年 埼玉弁護士会会長就任。
2004年 獨協大学法科大学院客員教授。
2007年 獨協地域と子ども法律事務所を開設 同事務所所長。
獨協大学法科大学院特任教授。
労働問題及び犯罪被害者問題、人権擁護、死刑制度問題に積極的にとりくみ、現在日弁連死刑執行停止実現委員会委員などを務める。



 
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