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『民主主義教育21 Vol.2 立憲主義と法教育』

2008年6月9日

吉田俊弘さん(全国民主主義教育研究会)

 はじめに、最近の憲法教育をめぐる論点を紹介します。
 一つは、教育基本法が改定されたことです。現在ではさらには進んで日本国憲法の改定に向けた取り組みが進められています。47年教育基本法は、憲法理念の教育による実現と憲法教育の重要性を認めたものと理解されてきましたので、同法の改定をふまえ、<憲法理念の教育による実現>と憲法教育の今日的な意義について再検討しておく必要がうまれています。国家による憲法的価値の強制は許されるか、憲法的価値と教育的価値は等価なのか、といった論点は、必ずしも十分に議論されずにきたテーマです。新教育基本法が登場した今こそ、十分に検討されなければならないでしょう。
もう一つは、新しい学習指導要領の中に、法教育の要素が加味されたことです。日本における法教育は、社会科教育学の研究者や教師によって1990年代前半に提唱され、弁護士など法曹関係者の協力を得ながら発展してきたもので、新しい学習指導要領に法教育が取り入れられることにより、ますます注目されるようになりました。法教育そのものは今日的な意義を持つものと思いますが、最近では、当初は想定していなかった動きもみられます。それは、法教育と憲法教育を二つに切り分け、法教育の優位性を称揚していくような研究があらわれてきたことです。<法教育=思考型・社会参加型>、<憲法教育=暗記型・知識先行型>といったステレオタイプの発想からは、これまで数十年にわたり蓄積されてきた憲法教育の財産を正当に分析することはできませんし、法教育と憲法教育との断絶を招きかねません。新学習指導要領が告示された今こそ、立憲主義をベースにした法教育を創造していく必要があるでしょう。

 全国民主主義教育研究会は、このような問題意識に立って、5月に『民主主義教育21 Vol.2 立憲主義と法教育』(同時代社)を刊行しました。本書には、比較的早くから法教育に関心をもち、その実践と普及に先導的な役割を果たしてきた渡邊弘さん(活水女子大学)の論稿のほか、現在の法教育の通説的見解に対し系統的に批判を加えた杉浦真理さんの論文も掲載しています。新学習指導要領の法教育をどのように評価し実践するか、間近に迫った裁判員制度を授業の中でどのように扱うか、また、格差社会や貧困といった問題を法教育の観点からどのようにアプローチするかなど、これらの問題に関心のある方は、ぜひ本書を手にとって読んでいただきたいと思います。
そして、もう一つの柱である憲法教育については、憲法教育の理論と実践の統一をめざして、多彩な論稿を掲載しています。まず、本書のタイトルにもなっている立憲主義については、田村理さん(専修大学)の「立憲主義は伝えられるか?」を収めることができました。「学校で憲法のことをたくさん学んでも、肝心なことは教わっていない」と指摘する田村さんは、「なぜ立憲主義は伝わらないのか」、「なぜ憲法は道徳規範であってはならないのか」、「立憲主義を伝えるためにはどうすればよいのか」と問題を立て、私たちを憲法実践の世界へ導いてくれます。関連して、田村理さんの著書『国家は僕らをまもらない』(朝日新書)を使って立憲主義の授業をつくった福田秀志さんの授業実践も掲載しています。
 憲法教育の理論としては、今野健一さん(山形大学)の「『憲法教育論』と憲法教育−最近の憲法学説の批判的検討」があります。これは、冒頭に示した論点に対する今野さんの回答となっています。憲法的価値の教え込みを当然視できるか、教育内容・教育実践に対する拘束は許されるか、学校教育は「国民統合」の道具か、といった論点について明快に論じるもので、最後に示された今野さんの「憲法教育の展開可能性」とともに熟読していただければありがたいです。これまで必ずしも明らかにされなかった憲法教育の輪郭が明確に浮かび上がってくるはずです。また、全国民主主義教育研究会の憲法教育の実際を知りたい方には、久保田貢さん(愛知県立大学)の「子どもたちと憲法を学びあうために」が手際よく論点を整理し、深めてくれています。
 そのほか、中西新太郎さん(横浜市立大学)の「価値形成の自由と公教育の役割」、毛里和子さん(早稲田大学)の「東アジアの新情勢と日中関係」など、憲法を取り巻く価値教育や平和への視点も満載です。私も「<点からプロセスへ>の憲法教育に向けて」という拙文を寄せていますので、ご一読頂ければ幸いです。

◆吉田俊弘さんのプロフィ−ル

新潟県生まれ。憲法教育の研究と実践をライフワークとする。主著として『新しい国をつくる−エリトリア、東ティモール、アメリカ、そして日本』(旬報社)。2001年より全国民主主義教育研究会事務局長。



 
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