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『初学者のための憲法学』

2008年5月12日

麻生多聞さん(鳴門教育大学准教授)
 本書は、大学で初めて憲法を学ぶ学生を対象に編まれた、憲法学の入門書である。憲法の講義に際しては、永遠のスタンダードともいうべき教科書が存在している。それはいうまでもなく、芦部信喜(高橋和之・補訂)『憲法・第4版』(岩波書店、2007)である。『芦部憲法』という略称で呼ばれるこの本は、きわめて優れた基本書として絶大な支持を集めている。
 かくいう私も、初めて憲法を学ぶときに『芦部憲法』を買い求めた。「憲法を勉強するなら、『芦部憲法』がよい」というアドバイスを受け、書店の法学書コーナでは迷わず『芦部憲法』を持ってレジに向かった記憶がある。巷で圧倒的評価を受ける『芦部憲法』を基本書として、憲法学に初めて向き合う初学者の数は、決して少なくないはずである。かつての私も、そのような初学者であった。しかし、私自身が初学者として『芦部憲法』に接した当時、この本については、難解でとっつきにくいという印象を持ったことを告白せざるをえない。『芦部憲法』のページをめくると、「憲法とは何か」をめぐる憲法原理論から叙述が開始されるが、形式的意味の憲法、実質的意味の憲法、固有の意味の憲法…など、初学者にとってやや難解な叙述が読者を待ち受けている。
 法学部でも『芦部憲法』はよく読まれているようだが、私が勤務する教員養成大学では、学部1年生向けの「日本国憲法」講義で参考書の推薦を求められる際、『芦部憲法』を推薦することは控えている。教員免許取得のために、法学部以外の多様な学部、学科において憲法の講義が設けられているが、文字通りの「初学者」、しかも法学関連の講義は憲法や法律学概論などを除いて設けられていない教員養成大学において、『芦部憲法』を推薦することは難しい。しかし、憲法研究者として、『芦部憲法』を学生に読ませたいという気持ちも、実は小さくないのである。
 私は、大学教員となり、大学のゼミで憲法学を講じるときに、『芦部憲法』の素晴らしさをあらためて痛感した。『芦部憲法』では、憲法学においておさえられるべきポイントが、きわめて整然と整理されており、また叙述内容についても無駄がない。したがって、『芦部憲法』を読破するためには、行間にこめられた芦部教授の考え方やメッセージを、読者としての私たちは読み取ることが求められる。しかし、基礎的なリーガルマインドを持たない初学者にとって、『芦部憲法』はやや難しすぎることが多い。
 このようなわけで、『芦部憲法』の体系に基本的に準じながら、その内容を平易で理解しやすいものへと再構成するという考えに基づいて、本書の企画は立ち上げられた。私たちが大学生であった時代、初学者として憲法学に接したときに、このような内容の教科書があればよかったのに、という視点を常に持つよう心がけながら、本書は執筆されている。
 また、大学における憲法の講義では、テーマごとに必ず印刷配布、あるいは板書により、学生に参照してもらわなければならない資料があるのだが、そのような資料についても、最新のアップデートな情報を添付することにより、講義必携となる基本書を目指した。ねじれ国会や最新の皇室財政データ、代理母問題、労働者派遣制度、市民オンブズマン制度などに関する資料を、各章の末尾に添付してあるので活用してもらいたい。憲法理論の学習においては、抽象的に理論の詰め込みを行えばよいというものではなく、実践的な観点から現実の具体的な事例を素材としつつ、理論の学習に及ぶことが望ましい。また、学部1年生向けの憲法講義では、私は毎年コンパクトサイズの六法(1000円台後半のものが多い)の購入を求めているが、日本国憲法と大日本帝国憲法の全条文を巻末に記載することにより、教室に重い六法を持参するという労力の軽減にも資するよう工夫した。
 本書を教科書として、憲法学にチャレンジしていただければ幸いである。

◆麻生多聞(あそうたもん)さんのプロフィール

早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。
現在、鳴門教育大学大学院学校教育研究科・准教授



 
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