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軍隊のばかばかしさを笑い飛ばす、「呉将軍の足の爪」

2008年3月24日

瓜生正美さん(青年劇場)

―――瓜生さんは戦争の真実を痛烈に暴き出す芝居「呉将軍(ごしょうぐん)の足の爪」の演出をされました。瓜生さんはアジア太平洋戦争に従軍されましたが、今回の演出もその時の体験をふまえたものなのでしょうね。
(瓜生さん)
 私は戦争末期である1944年秋に歩兵連隊に召集されました。アメリカ軍が本土に上陸する可能性のある場所として、海が深く艦船が集結できる長崎・島原半島の橘湾(千々石湾とも言われた)も挙げられ、私はそこの部隊に所属することになりました。終戦間際の1945年8月9日、広島に続いて長崎に原子爆弾が投下されましたが、私たちの部隊は救援隊を送り、私もその一員として長崎に駆けつけ、爆心地で死体処理の仕事などにあたりました。その結果、私は、残されていた放射能によって第二次被爆者となりました。
 戦前そして戦時中の私は、まさに軍国青年でした。アジア・太平洋での戦争をアジア民族解放の聖なるたたかいだと教え込まれ、それを信じていました。戦後、それが嘘っぱちだと知ったとき、私は騙されていた自分に対して憤りを感じるとともに、二度と戦争を起こしてならないと思いました。
 以来、私は戦後ずっと演劇を通して軍隊・戦争のばかばかしさと平和の大切さを伝えようとしてきたつもりです。

―――瓜生さんは戦後ずっと、進歩的な演劇運動とともに歩まれてきましたが、時代も大きく変わる中でご苦労も多かったのではないでしょうか。
(瓜生さん)
 私は劇団「青年劇場」を創設し、その代表として、3つの合言葉を唱えてきました。「演劇でメシを喰う」「演劇は大衆とともに」「創造と普及・組織・財政の統一」という3つです。かつては、そして今でも演劇で生活を成り立たせることは難しいのですが、演劇でメシを喰うためにも、私は多くのお客さんに観てもらえる芝居を創ろうと思いました。そして、そのためにも社会の中の様々な矛盾に苦しんでいる多くの人々の悩みに心を寄せ、その現実をリアルに提示し、打開の道を一緒に考えていくような芝居を創ろうと思いました。そして創った芝居を一人でも多くの人に観て貰うための普及の努力をする。そこではじめて、芝居を創ることも、それを多くの人たちに観て貰うことも、そして劇団の財政基盤を確立していくことも、すべて同じ哲学で追求することになるのです。
 芝居は映画のように同じものを繰り返し観てもらうことにはなりません。一回一回が勝負です。テレビが普及しましたが、やはり生の芝居には魅力があります。これからも頑張っていきたいと思います。

―――芝居「呉将軍の足の爪」で久しぶりに演出を担当されたそうですが、思い入れのある作品なのでしょうね。
(瓜生さん)

 私は1988年に韓国の演劇の代表団が来日して以降、韓国の演劇人と交流するようになりました。2002年以降、日韓の演劇交流として相互が隔年でリーディング公演(本格的な公演ではなく、朗読劇のようなもの)が行われているのですが、「呉将軍の足の爪」は昨年、日本で、日本の演劇人が演じました。私はこの作品をどうしても朗読ではなく、本格的上演としての舞台を演出したいと思い、9年ぶりにやらせてもらうことにしたのです。
 この作品は、農民としてのどかな生活を送っていたところ突如軍隊に召集された男の物語です。韓国が軍事政権だった時には公演できなかった作品ですが、いまでは韓国現代劇の中でも最も有名な作品の一つです。のどかな農村の一家の平和な人間らしい生活と軍隊・戦争の非人間的世界とが対比的に描かれていますが、軍隊というもののばかばかしさを笑い飛ばす笑劇(ファルス)にしました。堅苦しい芝居ではなく、笑って気軽に観て、少しだけ考えてもらいたいのです。

―――瓜生さんの演劇は日本国憲法の考え方に通じるところがあると思います。瓜生さんの日本国憲法に対する考え方をお聞かせいただけますか。
(瓜生さん)
 最近の日本は再び戦争への道を進んでいるのではないかと危惧しています。戦争をしないと世界に宣言した憲法9条は日本人が誇るべきものです。しかし、この9条を変えようという最近の動きを見ると、もはや黙っていては9条を守れない、たたかわなかったら守れない時代になっているように感じます。「呉将軍の足の爪」を多くの人々に観てもらうこともたたかいの一つだと思っています。

―――ありがとうございました。これからもお元気にご活躍ください。

◆瓜生正美(うりゅう まさみ)さんのプロフィール

1924年生まれ。戦後、新劇の草分けの一人、土方与志に師事。1964年、仲間とともに「青年劇場」を創設。以来1997年まで代表を務める。1987年舞台芸術家組合賞受賞。(社)日本劇団協議会会長、日本演出者協会理事長などを歴任。

「呉将軍の足の爪」のWebサイトはこちら



 
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