法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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今週の一言

 

日本人の自由獲得への努力を学ぶ −「日本の青空」を広げる

2008年2月25日

大澤豊さん(映画「日本の青空」監督)
伊藤真(法学館憲法研究所所長・伊藤塾塾長)

<「押しつけ憲法」論を打ち破る>


(伊藤)
 大澤監督がつくられた映画「日本の青空」は、日本国憲法が日本人の様々な研究や提言によってできたということを見事に描かれました。「日本の青空」のつくられた思いから聞かせていただけますか。
(大澤さん)
 前首相の安倍さんの時に憲法「改定」への動きが大変大きくなりました。当時安倍さんは、日本国憲法はアメリカに押し付けられたものだから日本人の手で憲法をつくろう、という「押しつけ憲法」論を唱えました。日本国憲法は決してアメリカから押しつけられたものではありません。それはすでに歴史的には決着のついていることでしたが、安倍さんが強調するので、私はこの問題に真正面から立ち向かうことにしました。
 映画ができあがり、実際に多くの人々に観てもらったところ、意外に「押しつけ憲法」論を信じている人が多かったということに気づきました。ですから、このテーマの映画にしてよかったと思っています。
(伊藤)
 私も全国各地で憲法について多くの人たちにお話しているんですが、まだまだ多くの人たちが、日本国憲法がアメリカから押しつけられたと思い込まされているということを感じます。それだけに、この問題に真正面から向き合い、そして劇映画としてわかりやすく真実を示してくださったことを大変嬉しく思います。

<「九条の会」の呼びかけにこたえて>

(大澤さん)
 2001年に「9・11」同時多発テロ事件が起こり、アメリカによるアフガニスタン攻撃が始まりました。私は、これは大変な事態だと思い、実際にアフガニスタンのカブールにも行きました。そうしたら、カブールは一面が焼け野原でした。私は日本の敗戦を10歳の時に迎えたんですが、その時に私が見た日本の惨状とカブールの惨状が重なって見えました。一方、日本国内では当時の小泉首相が憲法「改定」を語り出していました。
そうした状況の中で、2004年に9人の著名人がアピールを発表し、憲法9条の「改定」に反対する「九条の会」のとりくみがはじまりました。その呼びかけに応えて、「映画人九条の会」という組織もできました。そこで私たち映画関係者も何かできないかと考え、語り合いました。そして、やはり憲法の映画をつくろうということになったわけです。そうした経緯の中で、片桐直樹監督がドキュメンタリー映画「戦争をしない国 日本」をつくることになり、私は劇映画をつくることになったんです。
日本国憲法が制定直後からアメリカによって見直しを求められるようになったこと、その後日本国憲法を無視するように在日米軍基地が強化されてきていることなどを劇映画にして明らかにすることは難しいところがあり、それは「戦争をしない国 日本」の中に様々な記録映像で示されました。私は観る人の感性・共感に訴えることを重視する劇映画をつくることにしました。ドキュメンタリー映画と劇映画の両方ができることによって相乗効果も生まれるだろうと話し合ったんです。
(伊藤)
 私も実際に「日本の青空」を観て、史実をよく調べてつくられ、そして役者さんたちの演技力もあって、日本国憲法は決してアメリカから押しつけられてできたものではないということを自然に理解できる内容になっていると、大変嬉しく感じました。

<天皇中心の社会から国民が主人公の社会へ>

(大澤さん)
 明治憲法は天皇が国の中心であるとして、権力者がいかに国民を支配するかを規定していました。日本国憲法は国民が主人公であり、明治憲法とはまったく逆です。私は、そのような日本国憲法を否定する理由とされた「押しつけ憲法」論の誤りをどうしても明らかにする必要があると考えたわけです。
(伊藤)
 天皇中心の社会から国民が主人公の社会へと、日本国憲法は社会を180度の転換させたのですから、そのとりくみは当時大変なことだったのだろうと思います。しかし、それは当時の人々が突然思いついたアイデアだったのではなく、自由民権運動をはじめとする日本人の長年の研究と主張が連綿と語り継がれ、それが日本国憲法に結びつきました。日本国憲法は、国民の自由・権利を守るために権力を縛るという近代憲法の本流の考え方を日本人が日本人なりにつくりあげ、さらに戦争はしないという平和の声をふまえ、世界に先駆けた平和主義の規定を定めました。「日本の青空」はその歴史の流れを見事に描いてくれました。
(大澤さん)
 主人公の鈴木安蔵は、ポツダム宣言を、いわば人権宣言だととらえ、その趣旨を日本国憲法で具体化しなければならないと真剣に考えたんです。当時の日本政府は明治憲法の焼き直し程度に済まそうとし、それは受け入れられなかったということです。
(伊藤)
 日本国憲法は一人ひとりの人間を大切にする内容になっています。鈴木安蔵は戦前政府からの弾圧も受け、そのような経験からも「個人の尊重」ということを日本国憲法の根本にすえる案を提示したんだと思います。

<憲法の精神を心で感じる>

(伊藤)
 私も高校生の頃まではまったく憲法というものに関心はありませんでした。いまの若い人たちも多くは同じでしょう。しかし、憲法というのは私たちの生活に大きく影響するものなので、ぜひその内容と考え方を学んで欲しいと思っています。その時、憲法を言葉や文章によって頭で理解することとあわせて、それを映像や音楽などによって心で感じとることも重要だと思うんです。「日本の青空」はぜひ多くの若い人たちに観てもらいたい映画です。
(大澤さん)
 仰る通り、多くの若い人たちに観てもらいたいと思っています。
昨年、安倍政権の時に、憲法「改定」のための国民投票法が成立しました。もう2年半経ったら、いつでも国会が憲法「改定」を発議できることになりました。大変危険な状況になっていることにマスコミが警鐘を発することはほとんどありません。やはり、国民の中に憲法「改定」の危険性を広げていかなければなりません。
(伊藤)
 「憲法も60年経ったのだから、そろそろ変えればよい」という雰囲気がありますが、私はそのような抽象的な議論で国民が流されてしまうことを危惧します。憲法がなぜ、どのように変えられようとしているのか、それはどのような意味があるのか、といったことが国民に伝えられないままに議論が進められてはなりません。
(大澤さん)
 日本国憲法は、制定された2年後にはアメリカから「改定」を求められるようになりました。今日でもアーミテージ報告などが出され、実際にアメリカの要求を受け、憲法の「空洞化」が進められています。アメリカのシナリオにもとづいて憲法「改定」も唱えられているということを知らせていかなければなりません。

<いまを生きる私たちの責任を考える>

(伊藤)
憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と書かれています。97条には「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と書かれています。これまで多くの日本人が自由の獲得のための努力をしてきましたが、いまを生きる私たちには、これをどう継承していくのかが問われていると思います。
(大澤さん)
 世界の人々の中でも日本国憲法9条を支持する声が広がってきています。9条のような規定を持つ憲法を各国が持つようになれば、世界中から戦争がなくなっていく。9条を世界に広げようという、その時期に9条を変えさせてはなりません。
(伊藤)
 「九条の会」を立ち上げた皆さんは、すでに功をなしてきた方々なのに、あのお年で身体に鞭打ってアピールをされています。もっと若い私たちが何をできるのか、何をすべきなのかを真剣に考えなければなりません。私の場合、日常的には、これから法律家などになろうという人たちに、ぜひ憲法の価値を実現する仕事をしてもらうために頑張っていきたいと思います。
 大澤監督には、憲法の価値を示す映画の第二弾・第三弾もつくっていただくことを期待しています。本日はどうもありがとうございました。

◆大澤豊(おおさわ ゆたか)さんのプロフィール

山本薩夫、勅使河原宏、黒澤明監督らの助監督を務めた後、1981年、後藤俊夫、神山征二郎らとこぶしプロダクションを設立。以後、監督、プロデューサーとして活動する。
主な作品として、「遥かなる甲子園」(1990年、監督)、「戦争と青春」(1991年、プロデューサー)、「タイコンデロンガのいる海」(1991年、監修)、「ベトナムのダーちゃん」(1993年、プロデューサー)、「GAMA 月桃の花」(1996年、監督)、「金色のクジラ」(1996年、監督)「アイ・ラヴ・ユー」(1999年、監督)、「アイ・ラヴ・フレンズ」(2001年、監督)、「アイ・ラヴ・ピース」(2003年、監督)、「日本の青空」(2007年、監督)などがある。
1996年度日本映画ペンクラブ賞受賞。
第23回(2000年)日本アカデミー協会特別賞受賞。


◆伊藤真(いとう まこと)のプロフィール

1958年生まれ。
1995年、憲法を実現する法曹養成のため「伊藤真の司法試験塾」(現在の伊藤塾)を開塾。
・法学館憲法研究所所長。
・憲法の理念を広める講演活動も各地で行っている。

日々発信している情報はこちら
動画メッセージのほかに、「中高生のための憲法教室」(月刊「世界」に連載)、伊藤真のけんぽう手習い塾(マガジン9条に連載)、「日本国憲法の逐条解説」(「週刊金曜日」に連載)もぜひご覧ください。

【主な著書】
『憲法のことが面白いほどわかる本』(中経出版、2000年)
『憲法のしくみがよくわかる本』(中経出版、2001年) 
『自分を信じて ゆっくり進め!』(ダイヤモンド社、2002年)
『伊藤真の憲法入門』(第3版)(日本評論社、2004年)    
『伊藤真の明快!日本国憲法』(ナツメ社、2004年)
『高校生からわかる 日本国憲法の論点』(トランスビュー社、2005年)
『憲法の力』(集英社、2007年)



 
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