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「今こそ学校で憲法を語ろう」
〜野中広務氏・渡辺治氏と憲法を語ろう!〜

2008年1月7日

佐藤功さん(高校教員)

●2003年、イラク空爆前日のこと。
 つい先ほどまで 「イラク空爆には絶対反対や!」と力説していた教師が、まったく当然のようにこんなセリフを吐いた。
 「言(ゆ)うてわからん生徒(ヤツ)は殴ってやるのが本人のためなんや!」
 おいおい、それって違うやん。アメリカの言ってることと同じやで……。

 自戒をこめて思うことがあります。
 ぼくたち、現場の教師は、「1192(いい国)つくろう鎌倉幕府」や「√3=1,7320508(ヒトナミニオゴレヤ)」とまったく同じ感覚で、「日本国憲法9条=戦争放棄」を単なる「暗記知識」として教え、教室上部を通過(スルー)させてきたことはなかったか。「日本国民は国権の発動たる戦争と……」云々、前文や9条を何も考えさせることなく、まるで古文名調子(例えば「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり……」)の丸暗記同様に暗唱材料として使い、生徒たちに条件反射的覚えこみを強いてきたことはなかったか。

●学校現場は臆病です。たった2項の「国旗・国歌法」成立により、吹き荒れる自主規制。数々の「処分」が行われ、今も法廷闘争が続いています。先の「国民投票法」も、中身があいまいであればあるほど、「なんでそこまで!」の横行が容易に予想される。法律施行で「どこまではOKでどこからはダメ」なのかをはっきり知りたい。

 しかし一方で、確かに前例がなければなかなか動かない(動けない)けれど、ひとたびイメージさえ得られれば、現場教師たちには、過去の実践をアレンジして多様な形態をいろいろと生み出す力があります。新しい実践を組み立てなくとも、全国各地には、先輩教師たちが、子どもたち、保護者たち、同僚たち、地域の人たちと、「学校で憲法を語ってきた」豊かな先行事例が多々あります。

 一介の高校教師であるわたしは、こんな本があればなあ、と思いました。
 第1章「教師のための国民投票法講座」で、同法施行後のOK・NOをはっきり解説してくれる。そのうえで、第2章「日本全国、学校で憲法を語ろう実践講座」で、豊かな実践例を示してくれる。以上、2部構成。
 「そんな本ができたら、ボクなら一番に買います!」
 出版社(青木書店)の編集氏にそう言ったところ、わずか3日後、氏からきたメールには、憲法学者の渡辺治氏(一橋大)を「GETしました!」の文字が踊っている。
 「これから“学校”はぜったい大事になるよ」
 忙しい渡辺氏が、速攻で「自分が国民投票法講座の原稿を書こう」と言ってくださったとか。
 「……で。つきましては、第2部はサトウ先生たちのグループで書いてください」
 かの編集氏からそう言われたとき、正直、躊ちょしました。
 (そりゃあ身に余る……)

●最下段の「プロフィール」をご覧ください。わたしが属する、大阪発HR実践研究・執筆集団、「おまかせHR(ホームルーム)研究会」は、生徒の自主活動のアイディアなどを仲間とともにわいわい出しあい、著作としてきたグループです。今までやってきた「100連発」や「裏ワザ」の“芸風”は、一見、憲法論議とは縁遠い。
 「そんな乗りでいいの? フマジメなんじゃない?」
 最近、一気に閉塞感漂う学校現場で、道楽第一主義的に振る舞う確信犯連中が、なぜ今度は憲法本?


 この答えは本書『今こそ学校で憲法を語ろう』に述べさせていただいたので割愛。しかし、私たちが、今回、本書を編みすすめる中で痛切に思ったことがあります。それは、今後の憲法論議に不可欠なのは、われわれのような「ごくフツーの教師」がどれだけ憲法を語ることができるか、じゃないだろうか。

 「渡辺氏、竹内氏2人の共著だと「専門書」なんだけど、そこに佐藤サンや「おまかせ」が入ってるから、「なんや、不完全でも一歩踏み出したらエエやん」と安心できるよね」。誉めてるのか、けなしてるのかわからない感想を多々いただきながら、既知のジャーナリストや法律家の方など、教師以外の仲間ともコラボしました。共鳴してくれた若者教師たちも自らの憲法観を語ってくれ、「若者教師が憲法を語る」という1章を加えることもでき、11月20日、めでたく、本書発刊となりました(「憲法関連書籍・論文」)。

●私たちには、憲法を「もっとよくする」不断の努力が必要で、「守ろう」だけの結論ありきは、努力の放棄につながる。未来に向かって「よりよい憲法」を模索する作業は、現行憲法の改正派も護憲派も、生徒も教師も保護者も、若者も年輩も男性も女性も、社会科教師も数学教師も体育・芸術……みんな一緒になって追求できうる(もしくは追求しなければならない)ことだと考えます。その前提に「語ろう」は不可欠で、それゆえ、本書はタイトルを、憲法を「変える」でも「守る」でも「教える」でもなく、あえて「語ろう」としています。

 もちろん、「私は護憲派」「私は改憲派」と旗幟鮮明(きしせんめい)にしてはいけない、と言っているわけではありません。護憲を良しとする人が、議論のなかで「9条を守ろう」と大声をあげることは必要です。禁欲すべきは、狭い世界の内だけに身を置き、「世の中の標準は護憲派(あるいは改憲派)だ」「護憲派(あるいは改憲派)以外は人間じゃネエ」と違いを認めないこと。思想の違いをすぐさま人格の違いとしてしまうこと。そう。これこそ、私たち教師が日々の教室で、すぐ小集団に分かれ仲間うち以外を「風景化」しがちの子どもたちに、「それではいけないよ」と訴え続けていることじゃないか。

●本書の「発刊記念シンポ」として、もと自民党幹事長の野中広務氏と、編著者の1人・渡辺治氏との対談を中心に、「みんなで憲法を語ろう」のシンポジウムを2008年1月20日(日)に企画しています。戦争体験をもつ野中氏、「だめもと」でのお願いに、「参加しましょう」と即答いただき、さて、渡辺氏やわれわれと、いったいどんな「語ろう」が生まれるでしょうか。ぜひ、皆さま方も、ご一緒ください(「憲法Voice12月24日付け案内」より申し込みください)。

◆佐藤功(さとう いさお)さんプロフィール

「学校には遊び心が必要」をモットーに、酒と温泉と「生徒わいわい」をこよなく愛する大阪発HR実践研究&執筆集団、『おまかせHR(ホームルーム)研究会』を主宰する。『おまかせ〜』は、「近くに温泉と、1人分の旅費さえいただければ、全国どこへでも大勢で参じます」をモットーに、北は北海道・北見から南は沖縄・糸満まで、請われるままに講演・ワークショップ等を行うこと70余回。閉塞しがちな教育現場において、「ヨシモト」ばりの大阪弁を駆使し、各地の教研で“笑い”と“元気”を共有しあって帰ってくるメンバーたち。著書に、本書『今こそ学校で憲法を語ろう』(青木書店)のほか、『担任のアイディア100連発』『教室の裏ワザ100連発』『職員室の裏ワザ100連発』『教室のピンチをチャンスに変える実践のヒント100連発』(いずれも学事出版刊)。俗称・「100連発」派。露天風呂につかりながら硬軟取り混ぜたさまざまなアイディアを沸きだし(100個出すまで風呂からあがれない)、「ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たる」式に出てきたアイディアを形にする。執筆で獲得した印税は個人に入らず、すべて「酒」「焼肉」「温泉」に消えるという、超原始共産制を実践する高コレステロール値に悩む集団である。
 佐藤さん個人としては、「航薫平(わたり・くんぺい)」の筆名で、『気がついたらボランティア』(学事出版)、『あした・きらりん』(大阪市人権啓発アニメーション(テレビアニメ映画))などの創作やドキュメンタリー作品を世に問うている。
 大阪府立緑風冠高校社会科教諭。大阪大学、奈良教育大学非常勤講師(教職特別活動)。連絡・問いあわせ



 
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